自分がいる業界の歴史も、取引先の情報も、どう振る舞えばいいかというマナーも、ことわざの意味も、漢字の読み方も…スマホ一台でクリアになるから、「先輩、教えてください」は不要です。
つまり、みなさんの経験や知識は、自分で思っているほど価値を持たない時代になったということです。
リアルでも検索でもわかれば「勝ち」
「いや、自ら実際にやったのと、調べてわかったのでは違うだろう」という声が聞こえてきそうですが、どんな形だろうとわかってしまえば勝ちなのです。
このようにネット検索は、経験に代わる大きな武器になります。
今や、「google先生」という言葉が一般的になっていますが、これが世の中の人々の考えを表していますね。みなさんも意識を転換し、大いに活用しましょう。
そして、言うまでもなく、生成AIはさらに強力な武器となります。だから、それを使わないという判断はあり得ません。大切なのは、生成AIに使われて潰されないこと、生成AIを使いこなすこと、です。

生成AIをいつから活用していくかについて、年齢や入社年度などによる制度が設けられているわけではありません。すでにスタートは切られていて、今この瞬間も使いこなせる人と、使われて潰される人の峻別が進んでいます。
「できない」「難しい」「怪しいから嫌だ」などと言っていたら、生成AIに使われて潰される人になるのは火を見るより明らかです。
経験主義に陥っていると、どんどん追い抜かれます。
みなさんが一つのリアルな経験にこだわっている間に、若者たちは、AIを活用した「疑似体験」で、知識を数百倍にも増やすことができるのですから。
若者に迎合するくらいでいい
もし、みなさんが生成AIについて、「できない」「難しい」「怪しいから嫌だ」の罠に陥っているなら、そこから抜け出すには下の世代に教えて貰うのが一番です。それしか方法はないと言ってもいいでしょう。
経験の価値が下がるこれからの時代、上司と部下という概念もなくなってくるかもしれません。
自分の年齢や立場など度外視して、誰にでもどんなことでも聞ける人が生き残れる可能性が高くなります。
つまり、若者に迎合するくらいでいいのです。意識して取り入れましょう。価値観の古い人はダメです。
経験の価値が下がったとしても、ゼロになるわけではありません。だから、それを捨て去る必要もありません。そうした古い武器に加え、新しい武器を持てば有利だというだけの話です。
若者は、自分に新しい武器を与えてくれるありがたい存在なのだと考えましょう。
でも、成功している人ほどそれができず、気づいたときには相当に不利な立場に置かれかねないので注意してください。
“宇宙人”について行く
なかには、価値観が違う下の世代を「宇宙人」などと呼んでいる人もいますが、相当な自戒が必要です。若者が宇宙人なのだとしたら、これからの地球は宇宙人が支配するわけです。
ならば、そのやり方について行くしかないでしょう。若者に迎合して、宇宙人のルールを教えて貰いましょう。
これまで頑張ってきたみなさんからすると、若者はずいぶんわがままに見えるかもしれません。たとえば、仕事が忙しいときに平気で休みを取ったりするでしょう。しかし、今後はそれがデフォルトになります。
一方で、若者は他者のわがままや個性に対してとても寛容です。だから、みなさんは、「忙しいときに休むのはけしからん」と嘆くのではなく、忙しいときに自分も堂々と休んだらいいのです。

富永雄輔
進学塾VAMOS(バモス)代表。京都大学経済学部卒業後、東京・吉祥寺で「進学塾VAMOS」を設立。現在は東京都内で五教室を展開。また、自身のサッカー経験も活かして、サッカー選手を中心としたスポーツ選手のマネージメント事業も行っている。『ひとりっ子の学力の伸ばし方』『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』(すべて、ダイヤモンド社)など著書多数