進学塾VAMOS代表の富永雄輔氏は、子どもの学力の伸び方は10歳〜13歳の過ごし方で決まる、と断言する。

それは富永氏が「お風呂理論」と名付けた、“3つのステップ”が学力の伸びに必要だからだという。

親が覚えておくべき「お風呂理論」とは何なのだろうか。

親の影響を受けやすいひとりっ子・長子を伸ばすための具体的な指導法と家庭でできることを記した著書『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)から、一部抜粋・再編集して紹介する。

10歳から13歳の間の過ごし方で学力が決まる

子どもの学力の伸び方について、私は独自の考え方を持っており、それを「お風呂理論」と名づけています。

具体的には、3つのステップを踏むのですが、最初は「浴槽をつくる」段階です。

子どもの学力の伸び方は「お風呂理論」(イメージ)
子どもの学力の伸び方は「お風呂理論」(イメージ)
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快適なお風呂を楽しみたかったら、まずはいい浴槽が必要です。浴槽はできる限り大きくしたいけれど、かといって穴やひび割れがあっては困ります。

子どもを浴槽にたとえるなら、穴やひび割れが起きないように気を配りながら、大量の水を注ぎ込んでも、人間がどかどか入ってもびくともしない、学力の基礎を固めるのがこの段階です。「土台期」 と言ってもいいでしょう。

こうして、立派で頑丈な浴槽をつくったら、次は 「水を張る」 段階です。子どもが浴槽なら、そこに注ぐ水は知識を表しています。

この段階で、いかにたくさんの情報を注ぎ込んであげられるかが問われますが、いくら大きな浴槽をつくっても、半分くらいで水が止まってしまうこともあります。この段階は、子どもにとって「知識期」となります。

最後は、「小物を揃える」 段階です。大きな浴槽になみなみとお湯が張ってあっても、それだけで快適なバスタイムにはなりません。体や髪を洗うための石けん類や、入浴剤、タオルなどを揃えていく必要があります。それも、できるだけ高品質のものであることが望ましいですね。

子どもの学力で言えば、志望校対策にあたるのが、この「仕上げ期」の段階です。

重要な「土台期」を飛ばしがち

子どもの学力を伸ばすための3ステップは、どれも飛ばしてはなりません。順番をしっかり守り、すべての段階において手を抜かないことが求められます。

なかでも、基礎を固める土台期には、徹底したつくり込みと品質チェックが必要です。

浴槽にヒビが入っていると水が漏れて…(イメージ)
浴槽にヒビが入っていると水が漏れて…(イメージ)

そもそもの浴槽が壊れていたら、いくら水を注いでも漏れ出してしまうし、高価な入浴剤を買ってきても使いようがありません。

しかし、そこを軽視して、ひたすら大量の水を注ぎ込んだり、いきなり小物から揃えようとしたりしてしまう親が多いのです。とくに、ひとりっ子の親はそうなりがちです。

ひとりっ子の場合、たくさんお金はかけられますから、水や小物はいくらでも用意できます。その上に、親は理想を追いがちなので、地味な土台期など飛ばして早く仕上げ期に入りたがるわけです。
 
たとえば、子どもの偏差値が50なのに、目指している中学校に入るには70が必要だと知ったら、70ばかりを見てしまいます。いきなり20もジャンプできるはずはなく、51、52、53…と刻んでいかなければならない現実が見えなくなってしまうのです。

これも、2人目の子どもであれば、「段階的に上げなくても上がるだろう」というのは幻想であるということを経験的に知っています。しかし、はじめての子どもでは、親が理想に走ってしまうために、子どもにとって最も大事な土台期をないがしろにしてしまいがちです。

もし、我が子が伸び悩んでいたら、水や小物はさておき、一度、浴槽をチェックする必要があります。そして、不具合が見つかったらその立て直しから始めたほうが、結局はいい結果に結びつきます。

勉強の基礎と集中力は、焦らずじっくり

では、「浴槽をつくる」段階とは、具体的にどのようなものなのでしょうか。

漢字を覚えたり、人名や地名などを暗記したりするのも大事な土台期の学習です。算数なら、足し算、引き算、掛け算、割り算などの計算を数こなすような作業にあたります。こうした算数の基礎学習を積んだ子どもに、「6+9はいくつ?」と問えば、1秒もかからずに「15」という正解が出てきます。

基礎ができていないと受験では勝負にならない…(イメージ)
基礎ができていないと受験では勝負にならない…(イメージ)

しかし、学習を始めたばかりでまだ基礎がしっかりしていない場合、5秒くらいかかることがあります。その差は4秒でも、これが4桁の足し算になれば、1桁ごとに4秒差がついて、最終的に16秒の違いとなります。たった1問を解くのに16秒も引き離されてしまうので、受験などの場ではまったく勝負にならないのです。

正答率についても同様のことが言えます。100%の正答率の子どもと80%の正答率の子どもでは、2〜3問ではたいした差ではなくとも、いくつもの問題を重ねるうちに大差がついていきます。

こうした基本的な計算や、漢字問題、暗記事項などを、いかに早く正答率高く解けるようになるかというのは非常に大事なテーマで、ここを軽んじていては子どもの学力は伸びようがないのです。

なお、集中力をつけることも、土台期の大事な作業です。

集中力は訓練で伸ばすことができます。 まずは子どもが集中できる空間を探すことから始めましょう。

ただし、ここでも親は理想を押しつけてはなりません。相手はまだ、幼い子どもなのです。最初から1時間集中するというのではなく、3分、5分、10分と少しずつ集中できる時間を延ばしていくようにしましょう。

大学受験の結果は中2までに決まってしまう

知識期には、土台期につくりあげた浴槽に、知識である水をガーッと入れていきます。

この時期に、公式を1つでも多く理解したり、1問でも多く国語の読解問題を解いたりするというような「詰め込み学習」を徹底的にやると、子どもの学力が一気に伸びます。

中学受験を考えると、この「伸び」のタイミングは非常に重要です。

私は「10歳の壁」 と表現していますが、10歳あたりから大きな伸びを迎えられるか、あるいは13歳になってしまうかは、中学受験に大きく影響します。なんとか、10歳から11歳の時点でブレークスルーさせたいところです。

知識期は13歳が限度(イメージ)
知識期は13歳が限度(イメージ)

中学受験をしない場合でも、知識期は13歳が限度と考えてください。

今は、学習塾はもちろん、ネットにも教材は溢れており、浴槽に入れる水は種類も量も豊富に見つけられます。とくに、ひとりっ子の場合、かけられるお金も多いので、知識期にいい形で詰め込み学習をさせてあげましょう。

ちなみに、「大学受験の結果は中2までに決まってしまう」と、有名進学校の教師が言っています。もし、中学受験して失敗したとしても、最終的にはいい大学に合格すればいいわけですが、それでも中2までが勝負だということです。

中学と高校の学習は連動しているので「高校で頑張ろう」では遅いのです。それに、高校生にもなれば現実に目を向けるようになり、夢を持ち続ける子どもも減ってきます。すなわち、大化けする可能性も低くなります。

こうしたことからも、浴槽にしっかり水を注ぎ込むのは、せいぜい13歳までとわかるでしょう。そこまでで、その子の学力がかなりの部分で決定されてしまいます。

お風呂をより快適にするために小物類を揃える仕上げ期の段階では、すでに「どんなお風呂か」は決まっています。仕上げ期になってから、いくら奮闘しても遅いのです。
 
繰り返し述べますが、ひとりっ子の場合、親が基礎の段階を飛ばしがちです。それによって瑕疵ができた浴槽をつくり直すのは、容易なことではありません。くれぐれも、土台期を大切にしてください。

『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)
『ひとりっ子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)

富永雄輔
進学塾 VAMOS 代表。
京都大学経を卒業後、東京・吉祥寺に幼稚園生から高校生まで通塾する進学塾「VAMOS」を設立。学習指導のみならず、さまざまな教育相談にも対応し、年間400を超える保護者の受験コンサルティングを行っている。
自身の海外経験を活かして帰国子女の教育アドバイスにも力を入れているほか、トップアスリートの語学指導、日本サッカー協会登録仲介人として若手選手の育成も手掛けている。
著書に『男の子の学力の伸ばし方』『女の子の学力の伸ばし方』(ダイヤモンド社)などがある。