パリ五輪の卓球女子団体戦は、日本時間9日午前3時(8日深夜3時)から準決勝が行われ、日本はドイツと戦う。

日本は準々決勝から中1日、ドイツは準々決勝からの連戦となる。

メダル獲得を狙う女子団体チームの中心となるのがシングルスで銅メダルを獲得した新エース・早田ひなだ。

シングルスで銅メダルを獲得
シングルスで銅メダルを獲得
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パリ五輪でフジテレビのスペシャルキャスターを務める石川佳純さんがシングルス3位決定戦の現場を取材した。

テーピング姿に痛み止めで戦う早田

この日、日本勢としてこの種目2大会連続のメダル獲得に挑んだのが、五輪初出場の早田ひな。石川さんから左のエースを受け継いだ24歳。

早田は準々決勝でその左手首を負傷、3位決定戦はテーピングに加え痛み止めを打っての強行出場となった。

左手にはテーピングが

ギリギリの状態で臨む大一番。相手は世界ランク8位、20歳のシン ユビン。準々決勝で平野美宇を破った韓国のエースだ。

後輩の戦いをスタンドから見守る石川さんもどこか落ち着かない様子。

第1ゲーム、接戦を物にしたのは韓国のシン。早田が競り負けた理由とは。

石川:シン選手は早田選手のバック(利き手の逆)側に集めている。フォアハンドの方が強いボールが来る確率が高いので、今日はバック側とミドル側、体の真ん中に打つことで早田選手の強打を防いでいると思います。

第1ゲームは得意のフォアハンドを封じられた早田。

フォアを徹底し呼び戻した試合の流れ

しかし第2ゲームは、警戒されながらもボールに対して距離を取ることで、フォアハンドが決まるようになる。

さらにデュースにもつれた中、シンのサーブに対しては、

石川:待ってました、長いサーブ!今のは体の真ん中に来たサーブをしっかり回り込んで打ったんですね。これは待っていないとできないです、相手のサーブをしっかり読んで判断して、ナイスボールでした!

早田の鋭い読みでゲームポイントを奪うと、早田が第2ゲームを取り、これでゲームポイント1対1。これには石川さんも思わず声がこぼれる。

石川:粘りました!

徹底したフォアでこのゲームは早田が取ると、第3ゲームもフォアハンドでペースをつかむ早田。痛みでドライヤーも使えなかったという左手を何度も振り抜き得点を奪う。

シン ユビンとの3位決定戦
シン ユビンとの3位決定戦

ところが自らのミスからの失点も。

石川:ちょっともったいなかったですね…。でも緊張しているときって意外と高いボールが難しくって。私自身が(五輪で)試合をしたときも、お互いに緊張しているのでいつもの試合よりも少し浮いたボールが来るんですよ。でボールが浮いて止まるんですよ。なので調整が難しい。少しタイミングが取りづらくて、凡ミスに見えるかもしれないですけどすごく難しいボールです。

これが五輪の重圧。

このゲームはシンにゲームポイントを握られ、ピンチの早田。それでもシンに傾いた流れを呼び戻し、4連続ポイントを奪い、今度は早田がゲームポイントを取り返す。

石川:このゲーム勝負ですよ。

すると早田は相手にゲームポイントを握られた7対10のピンチから5連続ポイント。逆転でこのゲームを制した戦いに、石川さんも笑顔で拍手を送る。

第4ゲームも、主導権を握ったのは早田。

勢いをそのままに強力なフォアハンドを相手に打ち込む。7対5でリードした早田。

バックハンドでつなぎ、フォアハンドで攻め続けた早田が長いラリーを制すビッグプレー。

これには石川さんも。

石川:おーナイス!!今のラリー素晴らしかったです!こういう大きいラリーをとると勢いに乗れるんですね。ここから流れに乗って行けるんじゃないかな。

石川さんの言葉通り、そのままこのゲームも奪い、勝利まであと1ゲーム。

続く第5ゲームは落としてしまうものの、第6ゲームは4連続ポイントなどで一気に点数を引き離す。

リザーブだった東京五輪からはい上がった3年間

3年前の東京五輪では、リザーブ選手としてコートの外から声援を送り続けた早田。

そこからはい上がりつかんだ、初めての夢舞台。痛みを乗り越え迎えたマッチポイント、銅メダルまであと1点となる。このとき早田は。

実況:笑顔が見えます、何かつぶやいています。

中継の映像を通じて、その笑顔とつぶやく姿が伝えられる。

早田:「お前はできる、絶対にできる」ということだけを言い続けて。最後までこの空気を楽しんでいこうと思ってました。

次の瞬間、3年間分の思いを乗せた強い回転のサービスエースが決まった。

実況:勝ちました、早田ひな!銅メダル!

石川:おー!勝ちました、よかったー!

勝利の瞬間
勝利の瞬間

左手を負傷しながら臨んだ3位決定戦。万全のコンディションではない中で、五輪で最高のプレーを見せた早田。

苦楽をともにした石田コーチと涙の抱擁

最後に流したのはうれし涙だった。

ともに戦ってきた仲間への思い

試合後、石川さんが早田ひなを直撃した。

石川:おめでとうございます。初めての五輪で銅メダルを獲得、今の気持ちを教えてください。

早田:結果はどうであれ、最後まで自分は後悔しないようにやることができて、結果銅メダルを獲得することができたので、今は金メダルを取るよりも銅メダルを取れてうれしいです。

石川:東京から3年間、コツコツと努力を積み重ねてきました、こうして結果がでました、今の気持ちはどうですか?

早田:このタイミングで神様に意地悪をされてしまって、でもそれを皆さんに助けていただいてプレーすることができて、結果銅メダルを獲得できたのでこの3年間やってきたことには悔いはないです。

石川:お疲れさまです。本当におめでとうございます。

試合後インタビューを終えた石川さんは「よく頑張ったね」と声をかけ握手をすると、そっと早田を抱きしめ、ともに戦ってきた仲間の快挙をねぎらった。

表彰式で銅メダルを掲げる早田

今夜、早田ひなは女子団体で準決勝にのぞむ。勝てば日本初の金メダルに王手となる戦い。試合後の喜びの声を日本中が待っている。

勝てば日本初の金メダルに王手!卓球女子団体準決勝 日本×ドイツ8月8日(水)深夜3時