夏の疲れには、この季節ピークを迎える強力な紫外線の存在が大いに関わっている。肌の日焼けだけではない。「目」への紫外線の影響がそれ以上に大きいのだ。
その対策として「まばたき運動」は、修復作用のある涙の量を増やしてくれる。
伊藤医院(さいたま市)副院長で眼科医の有田玲子さんにその運動の方法と、もう一つの紫外線予防「サングラスの基準」を聞いた。
目から脳に紫外線ダメージが届く
「目はいわば『脳の一部』なのです」と有田さん。
目と脳は、眼球の奥にある網膜から視神経を通してつながっている。そのため目が紫外線ダメージを受けると、そのまま脳へ伝わってしまうという。
この記事の画像(5枚)脳が受けた紫外線ダメージは、呼吸や血流などの生命維持と関係の深い「自律神経」や、筋肉を動かす「運動神経」にも伝わり、ダブルの意味で全身の疲れが発生してしまうのだ。
涙が目を守ってくれる
サングラスなどから紫外線を浴びないようにすることも大切だが、眼球を覆う「涙」の量を増やしてガードすることも非常に大事だ。
栄養がたっぷり含まれている涙には修復効果もあり、紫外線を浴びる目やドライアイなど病気も防いでくれる。
「パソコンやスマートフォンの画面に集中するとまばたきの回数が通常の4分1以下になるともいわれます。これが続くと、まばたきする筋肉が衰えてさらに減ってしまう。悪循環です」
そこでぜひ取り入れてほしいのが、上下のまぶたを鍛える「まばたき運動」だ。1日1回行うだけでもすぐに目の乾燥に対して効果を期待できるという。
<まばたき運動1「パチパチ・ギュー」×5回>
上まぶたを2回パチパチ閉じて、3回目でギューっと閉じる。このとき、眉間にしわを寄せたりせず、上まぶただけを動かすのがポイント。
<まばたき運動2「まぶしい目」×5回>
まぶしいときのように下まぶたを上に持ち上げて目を細める。
<まばたき運動3「キツネの目」×5回>
上まぶたが動かないよう、目尻あたりを指で上方に固定する。そのまま、下まぶただけを動かして目を閉じる。
ドライアイに悩む人は目薬に頼る人もいるかもしれないが、規定の用法・用量を超えて使うと、涙を洗い流すことになり逆効果だという。
サングラス選びの正解はこれ
目を守る方法として多くの人が思いつくのがサングラスだが、選び方を間違えてはいけない。
「濃いレンズを選ぶとむしろ逆効果にさえなるかもしれません」と有田さんは強調する。
「色の濃いサングラスをかけると、暗さで目の黒目にある瞳孔(どうこう)が広がってしまいます。瞳孔が広がれば当然、網膜に達する紫外線の量が増えてしまいます。ですからサングラスは薄い色のレンズを選んでください」
色の薄さの目安としては「鏡を見たときに自分の瞳孔が見える程度の薄さ」までならOKだという。
もちろん色が薄いほどよいので、まぶしくなければ普通の眼鏡のような透明レンズの入った紫外線カット率100%のものがベストだ。
レンズのサイズは大きければ大きいほどガード力が強まる。その上で紫外線カット効果の高い、つば広の帽子と日傘を組み合わせるとなおよい。
コンタクトレンズを使用する場合は、紫外線をカットする商品を選びたい。
「そもそも、コンタクトの方はドライアイや目の病気のリスクが高い状態なので、紫外線をカットしない商品を使う場合は、ぜひサングラスなどで紫外線を防いでください」という。
また、紫外線を浴びてしまった場合は、冷やすのがベストだ。水で濡らしたタオルや、冷やした保冷剤などを使うとよい。
ポイントは「ぎゅうぎゅう押し付けず、やさしくのせること」。時間も「30秒〜1分程度の短時間で十分冷やすことができます」と有田さん。ぜひ覚えておきたい。
子どもの目を守るために
子ども用のサングラスも売られてはいるが、まだまだ一般的とは言い難い。そのため「やはり紫外線カット効果のある帽子をかぶることで紫外線から守ることを忘れないでください」という。
身長の低い子どもは空から降り注ぐ紫外線に加えて、地面からの照り返しの影響を受けやすい。特に海やプールなどでは水面や砂浜からの照り返しも強力だ。
これは帽子だけでは防ぎきれないため、真夏の快晴の日は、強い紫外線を浴びないよう屋外での遊びを控えめにするなどの選択も必要だろう。
夏の紫外線対策として、まばたき運動を取り入れながら、サングラスや帽子を活用してぜひ目を守ってほしい。
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有田玲子
眼科医・医学博士。伊藤医院眼科副院長。脂不足のドライアイ論文数世界第1位。テレビや雑誌に多数出演し、脂不足のドライアイ周知活動を精力的におこなっている。著者に『眼精疲労がとれて、よく見える!目のすっきりストレッチ』(成美堂出版)がある。
(イラスト:さいとうひさし)