大量の紫外線を浴びた日は、いつも以上に疲れを感じることはないだろうか。

日焼け止めを塗ったり、日傘をさしたりするといった対策を行っている人は多いが、「目」も紫外線からしっかり守っていきたい。

伊藤医院(さいたま市)副院長で眼科医の有田玲子さんによると「目は、日焼け止めを塗ったり、紫外線カットの洋服を着たりできません。丸裸で紫外線を浴びてしまう、影響を非常に受けやすい臓器なのです」という。詳しく話を聞いた。

目から生じる「ダブル疲労」

「目から紫外線を浴びる=脳の日焼け、です。日焼けをしたあとに疲労を感じたりするのは、脳が“疲れた”と信号を出すからなのです」

目は、いわば「脳の一部」と有田さんは強調する。というのも目は頭蓋骨の内部にあり、眼球の一番奥、網膜からつながる視神経を通してダイレクトに脳と繋がっている。

この記事の画像(5枚)

そのため網膜に到達した紫外線はそのまま脳にダメージを与え、活性酸素を発生させる。過剰な活性酸素は細胞をさびつかせ、細胞の機能を一時的に低下させる存在だ。

脳はあらゆる神経が集まっている中枢で、そのひとつに体の疲労と関係が深い「自律神経」がある。

自律神経は呼吸や血流、心拍などを調整する神経で、交感神経と副交感神経がバランスをとりながら生命を守っているが、脳で発生した活性酸素で自律神経にダメージが及ぶと、そのバランスが崩れてしまう。

紫外線を浴びると「ダブル疲労」が起こる(画像:イメージ)
紫外線を浴びると「ダブル疲労」が起こる(画像:イメージ)

それだけではない。脳は筋肉を動かす運動神経も支配するため、紫外線のダメージは筋肉にも及び、ここでも疲労を感じることになる。

このような自律神経と運動神経の「ダブル疲労」が目から紫外線を浴びることの怖さだ。

「実際にマラソン選手がサングラスをかけて走るのと、かけないのとでは体の疲労度が全く違うというスポーツ科学的なデータもあります」という。

この「ダブル疲労」に加えて皮膚の日焼けにより、体内の活性酸素が増えて自律神経にダメージを与えることも。すると、さらに疲労が蓄積することは言うまでもない。

目の病気のリスクも高まる

紫外線は目の病気ともつながりがある。

「紫外線を浴びるとドライアイや結膜炎にもなりやすいです。さらに目の表面の角膜にダメージが及ぶと角膜炎を起こしやすい」という。

紫外線による角膜炎は「雪目」とも呼ばれ、雪山などで雪の照り返しによる強い紫外線を浴びると角膜が傷だらけになり、痛くて目が開けられないほどの症状になる。

「これはプールや海の水面、砂浜の照り返しも同様」とのこと。

また、紫外線は重篤な病気にもつながりかねない。

伊藤医院副院長で眼科医の有田玲子さん
伊藤医院副院長で眼科医の有田玲子さん

例えば長期的に紫外線を浴び続けると白内障のリスクも高まるとされる。有田さんいわく、屋外で仕事をする人は白内障にかかるケースが多いという。

「さらに今、日本で失明の上位の原因になっている加齢黄斑変性症の危険性も上がります」

これは網膜の中心にある黄斑部に障害が生じるもので、紫外線によって傷ついたり出血したり腫れたりするのが原因の一つ。

目への紫外線の影響は、疲労どころの話ではないのだ。

紫外線を浴びたら「冷やす」

目が紫外線を浴びてしまった場合は、目を閉じ、まぶたの上を水で濡らしたタオルや保冷剤などで冷やすのがいい。

「時間は30秒〜1分で大丈夫です。押さえつけず、やさしく当ててください」と有田さん。

それ以上に大切なのが紫外線対策だ。

目を守るための紫外線対策も欠かせない(画像:イメージ)
目を守るための紫外線対策も欠かせない(画像:イメージ)

紫外線カット率の高いサングラスや帽子、日傘などを活用してほしい。ちなみにサングラスは目の黒目にある瞳孔が開かないよう色の薄いタイプを選ぶのが鉄則だ。

目をガードすることは疲労を防ぎ、健康を守ることにつながる大事なケアだと覚えておきたい。

後編は、紫外線対策の一つサングラスはなぜ色の薄いタイプが良いのか、その理由と、目を守るための涙を出す「まばたき運動」を紹介する。

■大人用の日焼け止め、子供に塗っても大丈夫?何が違うのかチェック
子供に使う日焼け止めはどれがいい?「大人用」と何が違うの?皮膚科医が教える日焼け予防とケア

■特集記事の一覧はこちら
暑さでたまる疲れ…実践!夏バテ・秋バテ対策

有田玲子
眼科医・医学博士。伊藤医院眼科副院長。脂不足のドライアイ論文数世界第1位。テレビや雑誌に多数出演し、脂不足のドライアイ周知活動を精力的におこなっている。著者に『眼精疲労がとれて、よく見える!目のすっきりストレッチ』(成美堂出版)がある。

(イラスト:さいとうひさし)

プライムオンライン特集班
プライムオンライン特集班

FNNプライムオンラインのオリジナル特集班が、30~40代の仕事や子育てに忙しい女性に向け、毎月身近なテーマについて役立つ情報を取材しています。