トランプ前大統領の暗殺未遂事件直後に開かれた共和党大会は、トランプ氏の党内での求心力を一層高め、団結力を見せつけるものとなった。
この記事の画像(19枚)トランプ氏率いる共和党が勢いづく中、暗殺未遂事件で動きが止まっていたかにみえたバイデン降ろしの動きが民主党内で再燃し、一層、強まっている。17日には、党内で大きな影響力を持つアダム・シフ下院議員が新たにバイデン氏の撤退を求めた。これにより上下両院計21人がバイデン氏の選挙戦継続にNOを突きつけたことになった。
さらに複数の米メディアは、13日に上院トップのシューマー院内総務、11日には下院トップのジェフリーズ院内総務がそれぞれバイデン氏に対し、選挙戦継続への懸念を伝えたと報じた。
それだけではない、民主党の重鎮ペロシ元下院議長が、バイデン氏に世論調査を示した上で、「大統領選挙でトランプ氏に勝つのは難しいだろう」と伝え、ワシントンポストは18日、盟友のオバマ元大統領が、ここ数日、「バイデン氏は大統領選からの撤退を真剣に検討する必要がある」との考えを周囲に示していると報じた。
強気一転、心境の変化を伺わせた演説
自らも「悪い夜だった、失敗した」などと振り返る6月のテレビ討論会以降、バイデン氏への撤退圧力は「耐えがたいレベルに達している」と言う。
それを象徴するようにニュースサイト「アクシオス」は18日、複数の党幹部の話として、バイデン氏が「撤退圧力の高まりを受けて早ければ週末にも決断する」との見方を報じ、バイデン氏の側近からも「時間の問題だ」との声を聞くようになった伝えた。さらに複数の現地メディアは撤退を否定してきたバイデン氏が、「周囲の話しに耳を傾けるようになった」「ハリス副大統領がトランプ氏に勝てる可能性について尋ねてきた」と心境の変化を伝えた。
その心境の変化は、トランプ氏の銃撃事件後のバイデン氏の演説で垣間見えた。バイデン氏は、16日、トランプ氏の暗殺未遂事件以降、初めて、激戦州の一つ、ネバダ州で選挙演説に臨み、「民主主義の脅威」と厳しく非難してきた従来のトランプ批判を抑えるだけではなく、再三にわたって力強く訴えてきた「選挙戦を継続する」との考えに言及しなかった。
また、大統領候補の後任を求める声について、トルーマン元大統領が語ったとされる 「If you want a friend in Washington, get a dog」(ワシントンで友達が欲しければ犬を飼え)と言う言葉を引用し、「この数週間で、彼の言っている意味がわかった」と述べ、冗談ながらも逆風下での孤立を感じている様子をうかがわせた。
演説では、さらに「カマラ(=ハリス氏)は偉大な副大統領というだけじゃない、アメリカの大統領になれるんだ」と強調した。黒人団体でのイベントと言うこともあるが、後任候補として有力なハリス副大統領に触れたことで、憶測を呼んだ。
政治人生最大の決断の時
例年、共和党大会で指名を受けた大統領候補者の支持率は、大会後に数ポイント上昇する傾向があり、バイデン氏42%、トランプ氏46%(エマーソン大学:7月15、16日の世論調査)がどう動いてくるのかも注目だ。
こうした中で、民主党全国委員会は、17日、早ければ7月21日にもバイデン氏を大統領候補に正式指名する予定だった計画を8月上旬に延期した。バイデン氏にとっては、熟慮する時間が増えたとも言える。
バイデン氏は17日、新型コロナの感染が判明し、自宅で療養しながら公務を続けている。体調が回復したあとバイデン氏は、選挙戦継続か否か、政治生命をかけた決断が改めて迫られることになる。CNNは18日夜、民主党知事の話として、「今後72時間が勝負だ」とも伝えている。
【執筆:FNNワシントン支局 千田淳一】