トランプ前大統領の暗殺未遂事件直後に開かれた共和党大会は、トランプ氏の党内での求心力を一層高め、団結力を見せつけるものとなった。

連日共和党大会に姿を見せるという、異例の対応をとるトランプ氏
連日共和党大会に姿を見せるという、異例の対応をとるトランプ氏
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トランプ氏率いる共和党が勢いづく中、暗殺未遂事件で動きが止まっていたかにみえたバイデン降ろしの動きが民主党内で再燃し、一層、強まっている。17日には、党内で大きな影響力を持つアダム・シフ下院議員が新たにバイデン氏の撤退を求めた。これにより上下両院計21人がバイデン氏の選挙戦継続にNOを突きつけたことになった。

ゼレンスキー大統領をプーチン大統領と言い間違えることも…
ゼレンスキー大統領をプーチン大統領と言い間違えることも…

さらに複数の米メディアは、13日に上院トップのシューマー院内総務、11日には下院トップのジェフリーズ院内総務がそれぞれバイデン氏に対し、選挙戦継続への懸念を伝えたと報じた。

民主党の重鎮・ペロシ氏からも後ろ向きな意見が…
民主党の重鎮・ペロシ氏からも後ろ向きな意見が…

それだけではない、民主党の重鎮ペロシ元下院議長が、バイデン氏に世論調査を示した上で、「大統領選挙でトランプ氏に勝つのは難しいだろう」と伝え、ワシントンポストは18日、盟友のオバマ元大統領が、ここ数日、「バイデン氏は大統領選からの撤退を真剣に検討する必要がある」との考えを周囲に示していると報じた。

強気一転、心境の変化を伺わせた演説

自らも「悪い夜だった、失敗した」などと振り返る6月のテレビ討論会以降、バイデン氏への撤退圧力は「耐えがたいレベルに達している」と言う。

6月27日のテレビ討論会では“衰えを露呈した”との見方が(写真:ゲッティ)
6月27日のテレビ討論会では“衰えを露呈した”との見方が(写真:ゲッティ)

それを象徴するようにニュースサイト「アクシオス」は18日、複数の党幹部の話として、バイデン氏が「撤退圧力の高まりを受けて早ければ週末にも決断する」との見方を報じ、バイデン氏の側近からも「時間の問題だ」との声を聞くようになった伝えた。さらに複数の現地メディアは撤退を否定してきたバイデン氏が、「周囲の話しに耳を傾けるようになった」「ハリス副大統領がトランプ氏に勝てる可能性について尋ねてきた」と心境の変化を伝えた。

トランプ批判は抑え気味で「選挙戦継続」に言及せず 7月16日
トランプ批判は抑え気味で「選挙戦継続」に言及せず 7月16日

その心境の変化は、トランプ氏の銃撃事件後のバイデン氏の演説で垣間見えた。バイデン氏は、16日、トランプ氏の暗殺未遂事件以降、初めて、激戦州の一つ、ネバダ州で選挙演説に臨み、「民主主義の脅威」と厳しく非難してきた従来のトランプ批判を抑えるだけではなく、再三にわたって力強く訴えてきた「選挙戦を継続する」との考えに言及しなかった。

トルーマン元大統領(中央)その右はソ連のスターリン元首相
トルーマン元大統領(中央)その右はソ連のスターリン元首相

また、大統領候補の後任を求める声について、トルーマン元大統領が語ったとされる 「If you want a friend in Washington, get a dog」(ワシントンで友達が欲しければ犬を飼え)と言う言葉を引用し、「この数週間で、彼の言っている意味がわかった」と述べ、冗談ながらも逆風下での孤立を感じている様子をうかがわせた。

カマラ・ハリス副大統領
カマラ・ハリス副大統領

演説では、さらに「カマラ(=ハリス氏)は偉大な副大統領というだけじゃない、アメリカの大統領になれるんだ」と強調した。黒人団体でのイベントと言うこともあるが、後任候補として有力なハリス副大統領に触れたことで、憶測を呼んだ。

政治人生最大の決断の時

例年、共和党大会で指名を受けた大統領候補者の支持率は、大会後に数ポイント上昇する傾向があり、バイデン氏42%、トランプ氏46%(エマーソン大学:7月15、16日の世論調査)がどう動いてくるのかも注目だ。

逆風の中で新型コロナに感染と踏んだり蹴ったりのバイデン氏
逆風の中で新型コロナに感染と踏んだり蹴ったりのバイデン氏

こうした中で、民主党全国委員会は、17日、早ければ7月21日にもバイデン氏を大統領候補に正式指名する予定だった計画を8月上旬に延期した。バイデン氏にとっては、熟慮する時間が増えたとも言える。

バイデン氏は17日、新型コロナの感染が判明し、自宅で療養しながら公務を続けている。体調が回復したあとバイデン氏は、選挙戦継続か否か、政治生命をかけた決断が改めて迫られることになる。CNNは18日夜、民主党知事の話として、「今後72時間が勝負だ」とも伝えている。

【執筆:FNNワシントン支局 千田淳一】

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千田淳一
千田淳一

FNNワシントン支局長。
1974年岩手県生まれ。福島テレビ・報道番組キャスター、県政キャップ、編集長を務めた。東日本大震災の発災後には、福島第一原発事故の現地取材・報道を指揮する。
フジテレビ入社後には熊本地震を現地取材したほか、報道局政治部への配属以降は、菅官房長官担当を始め、首相官邸、自民党担当、野党キャップなどを担当する。
記者歴は25年。2022年からワシントン支局長。現在は2024年米国大統領選挙に向けた取材や、中国の影響力が強まる国際社会情勢の分析や、安全保障政策などをフィールドワークにしている。