『わたしの「いつも」が、いのちを救う』
可愛いイラストの書かれた 濃いピンクの表紙
『わたしの「いつも」が、いのちを救う』との サブタイトルがついた防災ハンドブック「東京くらし防災」をこの度、東京都が作成した。従来の防災本とは異なり、女性の視点がふんだんに盛り込まれているのが特徴だ。
各ページには、スマートフォンで読み取ると内容を読み上げてくれる音声コードが印刷されていたり、災害体験者の声がまるでLINEやTwitterの書き込みようにコンパクトに散りばめられているのも今の時代を反映した作りだ。
文字は大きくして文字数を減らし、イラストも多用。
ページを眺めているうちに内容が簡単に頭に入ってくる。
ちょっとしたコツの積み重ねを
ちょっとしたコツを重ねていくことで読みやすく作成されているが、内容的にもちょっとしたコツの積み重ねの必要性を訴えている。
「外出時のおしゃれに安心をさりげなく 」と書かれたところでは、 出かける時に大判ストールを使うようにアドバイス。「大判ストールは避難の時に粉じんによる汚れを防いだり、マスク、包帯、日よけ、ブランケット、避難所での間仕切り代わりとしても使えます」との説明が添えられている。
避難所の間仕切りという発想には、正直驚いた。
食器の重ね方にも驚きが!
「下から中大小の順番に重ねれば揺れに強い安定した置き方になります」と。
これは意外。普通は 下から大中小と重ねてしまいがちだが、そうすると確かに崩れやすく…。
「なくなる前にちょっと多めに買う」
防災グッズをきちんと全部揃えようと思うと精神的にも金銭的にも負担になるが、この本の中では食品や日用品は 「なくなる前にちょっと多めに買う」ことをすすめている。これも、気軽に防災に 取り組めるポイントだ。
当たり前だけど、言われてハッとするアドバイスはまだまだ続く。
「行ける時にトイレは済ませておく 」
地震直後はトイレに行きづらくなることも 。
「使い捨てアイテムで清潔さをキープ」
避難所では洗濯できなかったり、干す場所が見つからないこともあるのでパンティーライナーや紙の下着など使い捨てアイテムを備えておけば役に立つ 。
小池知事が国会議員時代から 必要性を訴えてきた乳児用液体ミルクについては、ミルクを作るためのお湯が不要なので 災害時も使いやすいというメリットを紹介。一方で、粉ミルクに比べて価格が高い、赤ちゃんの好みから飲みたがらない可能性もあるとデメリットもきちんと指摘していた。
避難所でも心に余裕と潤いを
「基本ができたら自分に合わせたアレンジ」ということで、化粧水、保湿クリーム、メイク用品、クレンジングシートなどを挙げている。
男性から見たらそんなもの必要あるのか、と疑問に思うかもしれないが、 避難生活の時にこういうものを使えれば心の余裕や潤いが持てるだろう。
そして避難所での防犯対策として複数行動を呼びかけている。
「こんなことぐらい一人でと思っても単独行動は控えるべき」
これも女性の視点ならではと思われるポイントだ。
ペットについても記載
今や、子どもの数より多いと言われるペットについても記述は続く。
ペットフードや水、トイレシートなどの他、ストレスケアにお気に入りのおもちゃなども用意するようアドバイス。
女性だからこそ心が届く数々のちょっとした工夫、 その積み重ねが自分の身を守ることはよくわかった。
ただ、ちょっとしたこととはいえ、積み重なると 大変多く…すぐに完璧な準備はできない。
実際に被災した場合に少しでもトラブルを減らし リラックスして過ごすためには、 一つ一つの工夫を普段の習慣として自分の体に覚えこませておくのが重要だと思う。
「東京くらし防災」は都立・市区町村の施設や協力店舗などおよそ9000箇所で配布中だ。