高市首相の下で自民党が歴史的大勝となった2月の衆議院議員選挙。

国会内を移動する高市首相
国会内を移動する高市首相
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総務省の速報集計(小選挙区)によると、当選者のうち子育て世代に重なる25~49歳(20代後半から40代)が全体の約3割を占める。

政治はこうした世代にも「続けられる仕事」なのか。
若い世代であるほど、次に突き当たるのは、結婚、出産、育児、介護といった生活の変化を抱えながら、それでも政治を続けられるのか、である。

政治の「当たり前」は家庭時間を削る

その現実に直面し続けてきたのが、東京都議会議員の尾島紘平氏(都民ファーストの会)である。尾島氏は現在37歳。

大学在学中から小池百合子氏(当時衆院議員、現東京都知事)の秘書として政治の現場に入り、2015年に26歳で練馬区議に初当選、2017年に28歳で都議に初当選した。

尾島都議、26歳で初の選挙
尾島都議、26歳で初の選挙

都議3期目となった現在までに、異例の若さで都議会の会派幹事長、議会運営委員長など要職を歴任してきた。 

異例の若さで都議会の要職を歴任した尾島都議
異例の若さで都議会の要職を歴任した尾島都議

その尾島氏はいま、子育てをしながら議員活動を続ける“パパ議員”でもある。
若くして政治の世界に入ったからこそ、政治の「当たり前」が家庭にどんな負荷をかけるのか聞いた。

「夜会合」で消える「お迎え」と「夕食」 

子育てとの両立との難しさについて、まず尾島氏が挙げたのは、「夜会合」という政治の“当たり前”である。

夜に予定を入れれば、そのぶん家庭のルーティン「保育園のお迎え、入浴、子供と一緒の夕食」がごっそり抜け落ちる。

家庭と政治の両立は、まずこの「失われる時間」を引き受けるところから始まるという。

尾島紘平氏:
夜の会合に行くとなれば、その日の保育園のお迎えや、家でお風呂に入れること、子供と一緒に晩ご飯を食べる時間は全部なくなります。トレードオフです。

尾島氏は、夜の会合を「ただお酒を飲む場」とは捉えていない。他党・他会派との関係づくりや調整といった、いわば“外交”の機能を担う場でもあるという。

そこで時間をかけた人が競争を勝ち抜き、評価され、結果として伸びていくという政治の世界の現実がある。

小池知事と同席する尾島都議
小池知事と同席する尾島都議

だからこそ、トレードオフを飲み込み、犠牲を払う覚悟を迫られる。

家庭に積み上がる「見えない負債」 

では、子育てと政治をどう両立させていくのか問うと、「家庭も仕事も、どちらも100パーセントはできません。両立とは、両方を100点満点にすることではなく、双方が少しずつ譲り合いながら続けていくことだと思います」と話す。

ただ、譲り合いは「気持ち」だけでは回らない。忙しさの “ツケ”は家庭で合わせることになるという。

尾島氏はその偏りを放置しない工夫として「精算」という言葉を使った。

尾島紘平氏:
(家族との)話し合いが一番です。今月はこれだけ負担をかけてしまった、ということを覚えておいて、少なくとも月1回は精算する。言葉だけではなく、行動で返すことが大事です。

食事に誘う、丸1日子供の面倒をみる、パートナーの息抜きの時間をつくる。尾島氏は、負債が溜まってきたと感じたときに、意識してそれを返すようにしているという。

家庭の見えない負債を、見える形にし直す作業でもある。

「キャリアのペース落としている」妻の言葉に

だが、家庭内の調整にも限界がある。政治の忙しさが一定ではないからだ。

尾島氏は「政治家が暇になるのは後退するとき」と言う。基本的に前進し続けなければならず、一度キャリアを途切れさせると、仕事だけでなく、人脈も、リズムも途切れてしまう。その怖さがある。

そこで問われるのは、家庭の側で誰がどれだけ引き受けるのかである。尾島氏は、夫婦で衝突したとき、パートナーからこんな言葉をかけられたという。

尾島紘平氏:
「私もいまは、キャリアのペースを落としているんです」と言われました。「あなたの政治の仕事を優先したいと思っているから、影響は分かっているけれど時短勤務を選んでいるんです」と。

尾島氏は「いつかはフルタイムに戻れるようにしたい」と語る。

子供がいないときは共働きで、お互いのキャリアを伸ばす形が成立していた。しかし子供が生まれると、家族のリソース配分は一気に変わる。そこで生じるのは、家庭内の見えない格差である。

子供のケアだけは削れない

子供に必要なケアだけは削れない、と尾島氏は、強調する。

第一子と尾島都議
第一子と尾島都議

尾島紘平氏:
子供に必要なことは、特に赤ちゃんの時期は削れません。自分の満足度は妥協しても、子供にかける力を落とす選択肢は基本的にないと思います。

政治の仕事の時間が伸びれば伸びるほど、家庭の時間の配分は逼迫する。だが、子供の安全や発達に必要な手当ては減らせない。

結果として削られるのは親の睡眠時間、親の休息時間、そしてパートナーのキャリアである。政治の長時間労働文化は、家庭の中の誰かの「人生の取り分」を静かに削っていく。

「頑張った人が損をしない」設計とは

この問題は当事者の工夫だけでは解けない。尾島氏が懸念するのは、近くに頼れる家族がいない、支援が薄い、調整役がいないなど、「周りに振り分ける」こと自体が難しい状況である。

政治の仕事は民意を背負うことであり、少人数の会派や小規模自治体では、1人の議員が欠けるだけで運営に影響が出る場面もある。配慮を厚くすれば別の場所にしわ寄せが出る。政治の現場は単純ではない。

議員で管理職でパパ、線引きに悩むこともあったという尾島都議
議員で管理職でパパ、線引きに悩むこともあったという尾島都議

尾島氏はとりわけ、会派幹事長という“管理職”の立場から、欠席や代替をどこまで認めるか、の線引きは難しかったという。

尾島紘平氏:
制度としても、風潮としても、空気としても、整える必要があります。男か女かではなく、子供を育てる環境を性善説に頼り切らず、一定のルールとして整えるべきです。頑張った人が損をしない仕組みが必要だと思います。

「申し訳ない」の構造変化を

尾島氏が語ったトレードオフは、議員だけの話でも、女性だけに限った話でもない。子育てに関わろうとする男性の悩みとも重なる。

そこで重要となるのが、子育ての負担を家庭だけに押しやり、当事者が申し訳なさを抱え込む構造を変えることである。

親になった人も、また、親になりたいと思った人も続けられる働き方にできるのか。政治以外の仕事に関わる人々にとっても、「待ったなし」で解決が求められている。

小川美那
小川美那

「お役に立てれば幸いです」 見てくださる皆さんが“ワクワク&ドキドキ”しながら納得できる情報をお伝えしたい! そのなかから、より楽しく生き残っていくための“実用的なタネ”をシェアできたら嬉しいなあ、と思いつつ日々取材にあたっています。
フジテレビ報道局社会部記者兼解説委員。記者歴20年。
拉致被害者横田めぐみさんの娘・キムヘギョンさんを北朝鮮でテレビ単独取材、小池都知事誕生から現在まで都政取材継続中、AIJ巨額年金消失事件取材、TPP=環太平洋経済連携協定を国内外で取材、国政・都政などの選挙取材、のほか、永田町・霞が関で与野党問わず政治・経済分野を幅広く取材。
政治経済番組のプログラムディレクターとして番組制作も。
内閣府、財務省、金融庁、総務省、経産省、資源エネルギー庁、農水省、首相官邸、国会、財界(経団連・経済同友会・日商・東商)担当を経て、都庁担当、経済部長。