東京都で継続的に減少していた出生数が、9年ぶりに増加へと転じた。厚生労働省が26日に発表した人口動態統計速報によると、東京都内の2025年の出生数は8万8518人で、前年比1.3%増加した。また、婚姻数は、4.8%の増加となり、2年連続増加している。
小池知事は、都議会で感想を問われ「知事に就任して10年、『チルドレンファースト』を政策の中心に据えまして、切れ目のない支援を果断に展開してまいりました。出生数の増加という結果として現れたことは、特筆すべきことであり、率直にうれしく思っています」と答弁した。
小池知事は、国の力を「人口・領土」「経済」「国防」の3点に、「戦略目標」「国家意思」を掛け合わせて算出する、米ジョージタウン大学のレイ・クライン元教授が示した「国力の方程式」に触れながら、人口減少への危機感を折に触れて強調しており、高市首相との“初顔合わせ”の際も、小池知事から「きょうはグッドニュースがあります。東京都の出生数が1〜6月で0.3ポイント上がりまして」と切り出し、高市首相は「すごいですね。ビッグニュースです」と笑顔で応えていた。
出産で15万円+3万円
出生数増加の背景には、小池知事が「切れ目なくシームレスに」と職員らに指示してきた少子化対策がある。
その対策には、結婚に向けた気運醸成のための婚活イベント、AIマッチングシステム、卵子凍結支援、不妊治療助成、無痛分娩の助成などが並び、妊娠時6万円、出産時15万円相当の経済的支援を受けることもできる。
さらに、2026年1月から2027年3月までに生まれた子どもには「赤ちゃんファーストプラス」として3万円分を追加し、1歳または2歳時には6万円分の支援がある。また、ベビーシッター利用支援事業も展開している。
このほか、保育料等無償化、学校給食費の負担軽減、高校等授業料の実質無償化、都立大学等の授業料実質無償化、18歳までの全ての子供に毎月5000円を支給する「018サポート」、医療費支援の拡大なども進めている。
また、住宅価格の高騰を受け、子育て家庭の負担軽減を目的に家賃を抑えて提供する「アフォーダブル住宅」の整備も進めており、現在、都議会で審議している2026年度予算案では、一般歳出約7.3兆円のうち約2.2兆円をチルドレンファースト施策に充てている。
無料で軽食・Wi-Fi 専門家に相談も
こうした支援策の一方で、海外の子ども政策実務責任者からトー横キッズとともに特に注目を集めたのが、新宿区歌舞伎町に設置された青少年・若者向け総合相談窓口『きみまも@歌舞伎町』だ。
東京都は2月4〜6日、オークランド、ベルリン、ブリュッセル、ロンドン、ニューヨーク、台北、シンガポールなど世界20都市の子ども政策実務責任者を集め、「東京こども政策国際会議」を開催した。
テーマは「思春期の子どもを支える取り組み」。議論は「職業体験」「居場所」「メンタルヘルス」の3セッションで構成され、国際機関も警鐘を鳴らす“思春期メンタルヘルスの深刻化”が共通課題として共有された。
視察が行われた『きみまも@歌舞伎町』は、火〜土曜の午後3時〜午後9時に開所し、訪れる子どもたちに公認心理士等が対面で相談に応じる。
軽食、Wi-Fi、携帯電話の充電器を無料で提供し、子どもの日やハロウィン、クリスマスなど季節ごとにイベントを行うなど、安心して過ごせる環境づくりを行っている。
闇バイト、売春 トー横のリアル
「不安定な子どもたちは、加害者にも被害者にもなり得る。私たちはその両方のリスクから子どもたちを守りたいのです」
『きみまも@歌舞伎町』の担当者が、自殺や自傷行為、オーバードーズ(OD)、闇バイト、売春など、歌舞伎町で子どもたちが直面している現実を説明すると、各都市の参加者からは「これだけの子どもに対応しきれるのか」「自傷行為をする子どもにどう向き合うのか」「専門的なケアは実施しているか」「家族とはどう関わるのか」など、予定時間を30分以上超過するほど質問が相次いだ。
担当者が、トー横で行っている声かけ、電光掲示板を使った周知、必要に応じた病院搬送、公認心理士等によるスタッフ教育、警察との連携、他県行政との連携など実際の対応を説明すると、各都市の参加者は熱心に聞き入っていた。
歌舞伎町ゆえの“居場所づくり”
視察後、各都市の参加者に自国との違いを尋ねた。
シンガポールからの参加者は、「コロナ禍を経て子どもたちは路上から姿を消し、危険はインターネットや薬物に移った。実際に路上で声をかけるのは過去の方法で、今はオンラインで子どもたちと接触している」と説明。
そのうえで、『きみまも』の認知度を高め、「助けてくれる大人がここにいる」と伝える意義、そして子どもたちが社会で役割を感じられる“居場所づくり”の重要性を指摘した。
ロンドンからの参加者は「(東京とロンドンで)直面する問題は似ているが、ロンドンでは子どもが真夜中まで外にいる状況はない」と違いを述べた。
こうした点から、『きみまも』は東京という巨大都市ならではのセーフティーネットであるといえる。
助けてもらえる安心感を
確かに、東京都の出生数は改善した。しかし、東京都の2024年の合計特殊出生率は0.96と、全国で最も低くなっている。
2025年の出生率はまだ公表されていないが、出生率が上向かなければ、実質的な意味での少子化からの“反転”とは言えず、現時点では、反転の「兆し」が出てきたところである。
この兆しをどう確実なものにしていくのか。
もちろん、金銭面での支援は重要だが、“いざ”というときに「自分一人で抱え込まなくてよい」「助けてもらえる場所がある」と感じることができる安心感が、子どもを産み育てようとする気持ちを、更に後押しするのではないか。
そこで、金銭的・物理的支援に加え、精神的な面で「安心して産み育てられる環境」をどう構築するのか。
小池知事は今回の出生数増加を受け、「都の先駆的な取組を、国を挙げた取組に発展させていくことが大切であり、今後、国との連携を一層強化してまいります」ともコメントしており、国と連携しながら迅速に出生率を上げていくことができるのか、行政には、更なる大きな課題が突きつけられている。
