企業や個人向けに商品パッケージ用の「箱」を製作する会社が秋田・北秋田市にある。最低1個から注文を受け、手作業で組み立てられる様々な箱。祖父から受け継いだ箱作りにかける女性社長を紹介する。

「なくなれば困る」2カ月で社長に

北秋田市綴子に作業場を構える「武石紙器」では、1963年の創業以来、様々な商品やプレゼントなどを入れるのに欠かせない包装用の箱を製造している。

元美容師という経歴を持つ武石紙器の武石美久社長
元美容師という経歴を持つ武石紙器の武石美久社長
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会社を切り盛りしている武石美久さんは、祖父が始めた会社を2016年に引き継いだ。武石さんは県内で美容師として働いていたが、祖父が体調を崩したのをきっかけに、美容師の仕事の傍ら家族とともに会社を手伝うようになった。社長就任はそれから間もなくのことだった。

武石さんは、「手伝いとして会社に入ったが、勤めて2カ月で突然社長になることになって、なんで私なんだろうというのが素直な気持ち。継ぐ人がいないっていう、『箱屋さんがなくなれば困る』という声があった。箱屋をなくしちゃいけないという気持ちが強かったので、美容師を辞めて箱屋に専念することにした」と当時を振り返る。

オーダーメードの箱をリーズナブルに

祖父の会社を継ぐことには葛藤もあった。武石さんは「やりたくてやっていた美容師だったので、まだやりたいというところまで達してなかったので、後ろ髪ひかれる思いで泣きながら美容師を辞めた感じ」と語った。

葛藤を抱えながらも新たな道に踏み出した武石さんは、創業から続く箱作りの手法を守り、今も箱を一つ一つ手作業で組み立てている。

手作りだからこその強みは他にもある。武石さんによると、「企業も多いが、うちの会社は個人客もすごく多いので、そんなに数はいらないと言われるときに、うちの“最低ロットが1個”というのが強みだと言われる。そして、なるべく客が想像している箱に近づける努力はしている」という。

“オーダーメードの箱をリーズナブルに実現する”。綿密に客とやりとりを重ねることで、相手方の要望を形にしているという。

「より良い商品を届けたい」

社長就任から8年。新型コロナの感染拡大で仕事が減り、経営が危機に直面したときもあったが、最近になって始めたSNSが武石さんのやりがいにつながっている。

SNS活用がコロナによる経営危機打開につながる
SNS活用がコロナによる経営危機打開につながる

武石さんは「本当に大変だった、新型コロナのときは。社員に週に何日も休んでもらったり、全然仕事がない状態で、そんな時にインスタで集客ができたので、少しずつ盛り返してきている」と話す。

SNSで店の情報の発信や注文の受け付けを始めると、口コミや客同士のネットワークによって全国から注文が入るようになった。「ふたを開けるときの『何が入っているんだろう』という客のドキドキとかが分からなかった。『物が届きました』という投稿が見られる。直接ラストユーザーの喜びが見られるのがすごくうれしくて、もっと頑張ろう、もっときれいな箱作ろうという励みになる」と武石さんは語る。

週末は各地で開かれるイベントに足を運び、営業活動にも精を出す武石さん。会社を継ぐときに抱いていた不安や葛藤はなくなり、今は「より良い商品を届けたい」という思いが大きくなっている。

武石さんは「何より客が喜んでくれていることが一番うれしい。箱を作ってみたいという気持ちがあるのなら、いつでも気軽に連絡してもらえれば、DMでも電話でもいつでも大丈夫です」と話した。

箱を開ける瞬間のワクワクする気持ちを多くの人に。オーダーメードの箱屋さんとして、武石さんの奮闘はこれからも続く。

(秋田テレビ)

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