長崎の知られざる街の魅力を発掘し、おすすめスポットやその土地ならではの行事・グルメを県内21市町をめぐりながら、シリーズで紹介する。今回はお酢を使わない「しめサバ」だ。

酒店がつくる「レモンしめサバ」

長崎・佐世保市の早岐瀬戸で毎年5月上旬から開かれる早岐茶市(はいきちゃいち)。人々が山の幸と海の幸を物々交換したことが始まりで、450年以上の歴史があるとされている。

早岐茶市が行われている通りの一角に出店している酒店「酒の一斗」。

早岐茶市で「レモンしめサバ」の試食をする買い物客
早岐茶市で「レモンしめサバ」の試食をする買い物客
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販売していたのは酒ではなくレモンをつかったしめサバ「レモンしめサバ」だ。試食した人からは「レモンを使っているからさっぱりしていてさわやかな味」と好評だ。

なぜ、酒店がしめサバ?

酒店がなぜ、しめサバを作っているのか、その秘密を探ろうと佐世保市内のお店を訪ねた。

池野酒店「酒の一斗」(佐世保市万津町)
池野酒店「酒の一斗」(佐世保市万津町)

こちらの酒店では、長崎県北部を中心に8つの店舗で焼酎やワインなどのお酒を販売している。レモンしめサバの製造は会社としては新しいチャレンジだった。きっかけは新型コロナウイルスだった。

「レモンしめサバ」を開発した酒の一斗・池野辰太郎 専務:新型コロナウイルスがはやって、お酒の売り上げ、特に飲食店に卸す業務用の卸の売り上げがほぼゼロに等しいような数字になった

経営危機に陥る中で池野さんが目を付けたのは、松浦市が長崎県内1位の水揚げ量を誇るサバだった。

酒の一斗・池野辰太郎 取締役専務:同じように水産関係者の方々も苦しんでいて互いに協力しあって何か一緒にできることはないかというところから始まった

「お酢」ではなく「レモン」のワケ

2021年に佐世保市吉井町に加工場を作った。開発を担当した池野さんはワインなど、どんなお酒にもあうように「お酢」ではなく「レモン」を使うことを決めた。お酢ではなくレモンを使うことで通常のしめサバと漬け込み時間が違ったり、しまり具合がどうなるのか、半年にわたる開発の中でレモンの果汁だけではなく繊維も混ぜることでサバがしっかりしまることがわかったという。

約3時間レモンに漬けたサバをバーナーであぶる。鮮度のよいサバを使用しサバ本来の食感を残すため、しめる時間を調整して"刺身としめサバの中間”を目指して開発したという。

取材した記者も「レモンしめサバ」を試食させてもらった。どんなお酒にも合うということで特別にワインも一緒にいただいた。

ワインとともにいただく「レモンしめサバ」のお味は?
ワインとともにいただく「レモンしめサバ」のお味は?

KTN記者:普通のしめサバよりもやわらかい、お刺身に近いような食感ですごくおいしい。(ワインに)合う。ワインの酸味が、レモンの香りとマッチしている

レモンしめサバは、酒屋がつくったしめサバとして品質の高さとおいしさが評価され、2022年に「農林水産大臣賞」を受賞、翌年の2023年には天皇賞や内閣総理大臣賞に次ぐ「日本農林漁業振興会会長賞」を受賞した。

池野さんは、レモンしめサバのように地域の素材を生かしながら、酒の需要を掘り起こしたいと考えている。

酒の一斗・池野辰太郎 専務:地元も、酒、水産業界がしっかり盛り上がるように働き手も増えるように貢献できるようになりたいと思っている

池野さんは他にも、地元の鉄道会社と共同で、電車内で地元の日本酒が楽しめるイベントを行っていて、今後も地域活性化に貢献したいとしている。レモンしめサバは池野酒店・酒の一斗・インターネットで購入できる。

こんなまちメモ

<佐世保市>
 長崎県北部の中心都市。西海国立公園の九十九島や日本最大級のテーマパークであるハウステンボスに代表される観光都市でもある。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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