長崎の知られざる街の魅力を発掘し、おすすめスポットやその土地ならではの行事・グルメを県内21市町をめぐりながら、シリーズで紹介する。カステラ・ちゃんぽん・皿うどんだけではない、長崎には脈々と受け継がれた味がある。きっとあなたも食べたくなるはず。

外海でいただく手打ちパスタ

長崎市の「外海(そとめ)地区」。長崎市中心部から車で約50分、西に海を臨む海岸沿いでは美しい夕日を眺めながらのドライブが楽しめる。また、世界文学として読まれている名作・遠藤周作の「沈黙」の舞台としても知られている。

そんな外海地区には日本発祥のグルメがある。普段から私たちが食べているパスタだ。

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日本のパスタ発祥の地とされる外海の国道沿いに立つイタリアンレストラン「ソトメクラシ」は、ランチのみの営業で地元出身の林絵里花さんが一人で切り盛りしていている。この日は「長崎牛のラグーパスタ」を出してもらった。

テレビ長崎 楠原彩加アナウンサー:
おいしい。パスタの歯ごたえがしっかりとある。赤ワインがしっかりとしみ込んだ牛肉はコクがあり、それがパスタにしっかりと絡まっているので、よりパスタの味を深めている

林さんこだわりのパスタはすべて手打ちで、その日のソースはもちろん、季節に合わせて、材料や作り方も変えているという。

「ソトメクラシ」店主 林絵里花さん
「ソトメクラシ」店主 林絵里花さん

ソトメクラシ 林絵里花さん:
天気が乾燥しがちだと水分を多めにして作ったり、梅雨の時期とか湿度が高い時は少し水を抑え気味に作っている。それによって歯ごたえとか歯ざわりとかが変わってくる

カウンターが5席だけの小さな店だが、その分、思いを込めて一皿ずつ作り客との会話も大切にしている。林さんは「お客様と作り手の距離感が短いので、近くでおいしいという声を聞けるというのが一番うれしい」と話す。

貧困者を救うため…神父の想い

林さんがこだわりのパスタをつくる理由は、外海地区とパスタとの深い関係にある。

外海地区には世界遺産のひとつ「出津(しつ)教会堂」がある。

フランス人宣教師 マルコ・マリー・ド・ロ神父
フランス人宣教師 マルコ・マリー・ド・ロ神父

出津教会堂は、フランス人宣教師マルコ・マリー・ド・ロ神父が布教のために建てたもので、近くの「旧出津救助院」では貧しい人々を助けるため、綿織物やパンなどを作らせて女性たちの自立につなげた。

ド・ロ神父が村人と一緒にパスタを作ったマカロニ工場
ド・ロ神父が村人と一緒にパスタを作ったマカロニ工場
マカロニ工場の内部
マカロニ工場の内部

自然の恵みを生かし大切にする心を

林さんは、この外海からパスタが広まったことを多くの人に知ってもらうこと、外海で続く暮らしを守り続けたいという思いがある。

ソトメクラシ 林絵里花さん:
この地域で暮らしていく中で、昔の人の知恵、例えば大根を育ててそれを漬物にしたりとか、おみそ汁にして食べたり干し物にしたり保存したり、そういうことに魅力を感じている。食べ物を大事にする姿勢を少しでも受け継いでいきたい

外海ならではの食を㏚しようと林さんは商品づくりにも力を入れている。外海が発祥の地とされるかんころ餅や、幻の果実といわれる柑橘類「ゆうこう」を使ったコショウも作っていて、今後は「地元の食材だけでパスタをつくりたい」と話す。

「地域の歴史を大切にしながら食を通して魅力を伝えていきたい」という夢の実現に向けた林さんの挑戦は続く。(「ソトメクラシ」:ランチのみ営業・要予約)

こんなまちメモ

<長崎市外海町>

長崎市北西に位置し、キリスト教の文化を色濃く残す町。町内には棚田や石造家屋など明治当時の生活の様子がしのばれる資源もあり、九州最後の炭鉱として2001年に閉山した池島炭鉱跡の一部も残されている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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