東日本大震災の後、岩手・大槌町では避難生活をする女性たちに「刺し子」を通して希望を見つけてもらおうという取り組みが始まった。2024年3月11日には、刺し子を大槌の産業に育て、地域を活性化させようと新たなブランド「サシコギャルズ」が誕生した。
「物を大事に…」受け継がれてきた技法
岩手県を代表する景勝地の一つ、大槌町の浪板海岸の砂浜は、東日本大震災で消失してしまったが震災から13年たった今は再生されている。さらに大槌町では笑顔を再生させるためのプロジェクトが生まれている。
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江戸時代中期、当時貴重品とされていた綿製品を大事に使うため生まれた技法「刺し子」。その伝統技法で大槌に元気と笑顔を取り戻そうという取り組みが「大槌刺し子プロジェクト」だ。
大槌刺し子の佐々木加奈子さんは、「東日本大震災により避難生活を余儀なくされた人たちが、避難所で一日過ごす様子をボランティアの方たちが見ていて、狭い場所でも糸と針と布さえあればできる刺し子を提案してくれたことで始まった」と「大槌刺し子プロジェクト」結成の経緯について語った。
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2011年5月に始まったこのプロジェクトは、多い時には約200人の人が参加していた。今は40代から80代の女性15人が指折りの刺し子集団として活動している。「無心になって縫える。嫌なことも考えない」「何にもしてないと一日が長いが、仕事があれば一日を有意義に過ごせる」と大槌刺し子のメンバーは話す。
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「チクチクと縫って、図案の通り縫ってみるときれい。刺し子を買った人がそれを見て、こんなに細かく手がかかっているんだと思って大事に使ってもらえれば、私たちもうれしい」と望む。
ファッション業界もその魅力に着目
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発足当初は、ふきんやコースターなどの小物を主に作っていたが、その高い技術力が評価され、大手企業と共同で商品開発を手がけるようになった。
![大槌刺し子のメンバー・黒澤かおりさん(左)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/e/700mw/img_0ecd4286b70a9ae23d22d46feb8a5c5e646700.jpg)
大槌刺し子の黒澤かおりさんは、「元々は物を大事にするっていう考えから始まった刺し子だが、ずっと昔から受け継がれてきた技法が製品となって出ていくことを考えると、未来に残るものだと思うので責任感が湧いてくる」と、大槌刺し子への思いを語った。
高い技術と斬新なアイデアにより、活躍の場はファッション業界へも広がり、刺し子の生地を大胆に取り入れたアイテムも登場した。
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手掛けたのは、東京を拠点にオリジナルブランドを展開する藤原新さんだ。刺し子プロジェクト発足当時からその魅力に着目し、自身のブランドに取り入れてきた。
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KUON(クオン)・藤原新さん:
私どものKUONというブランドだが、世界に出る、世界と戦う、世界一を取ることを目標に立ち上げているブランドなので、世界に出るために刺し子が大きな武器になる。機械でも表現する技法としてあると思うが、人がやることによってほかには表現できない温もりがあると思う
大槌町で刺し子を“産業化”
東日本大震災から13年。復興が進む被災地だが、人口減少などの課題を抱えている。
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そんな中、刺し子を大槌の産業に育て、地域を活性化させようと新たなブランド「サシコギャルズ」が2024年3月11日に誕生した。
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KUON・藤原新さん:
刺し子を次に進化させる役割にサシコギャルズはなっていきたい。ここにちゃんと新しい産業を作って“刺し子といえば大槌“となるような取り組みをしたい
女性の手仕事をブランドへ。大槌刺し子に関わる人たちは、復興のその先に目指す姿を見据えている。
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大槌刺し子・佐々木加奈子さん:
まだまだ復興されていないところも多い。その中で「大槌刺し子」が大槌町を元気にしていきたい
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大槌刺し子・黒澤かおりさん:
働く場も増え、大槌町に住む若者や子どもたちに希望や目標になるブランドを目指して、世界に向けて丁寧に仕事をしていきたい
刺し子を通して地域や世界とつながる。
針で縫い合わせる布のように全てが一つになり、地域発展のモデルケースになることが期待されている。
(岩手めんこいテレビ)