ある番組は大谷の「年収」「月収」「日給」「時給」「分給」「秒給」を全て算出し、大谷がどれほど大金を稼ぐことになるかを伝えた(たとえば大谷の「時給」は約115万円)。
もし契約総額分の一万円札を積み重ねたら、その重量は「10トン」になり、それはアフリカゾウ2頭の体重に相当する、とも。

食料品などの物価が日々上昇する一方で数パーセントの賃上げもままならず、将来に不安を覚えながら生活費を切り詰めている僕ら大多数の日本人にとって、大谷の契約はもはや別世界の出来事であるかのように思える。
「1000億円プレイヤー」誕生と“経済格差”
そもそも「1015億円」という日本円に換算した場合の金額は、契約が報じられた当日の「1ドル=145円」という為替レートに基づいて算出されたものだ。
たとえば約12 年前、2012年1月にダルビッシュ有がテキサス・レンジャーズと契約したときのレートは「1ドル=86円」だったが、もし大谷の契約をこのレートで換算し直すと「602億円」になる。
それでもなお超高額であることに変わりはないが、実に400億円も目減りする。
「1015億円」という文字通り桁違いの数字は、2023年に発生した歴史的な円安、つまり「(ドルに対して)円の価値が低い」ことによって生まれたものだ。

大谷が史上初の「1000億円プレイヤー」になったことは日本人として誇らしいが、その数字は「自国の通貨の弱さ」がゆえに生まれたものであることを考えると少し複雑な気持ちになる。
円安は必ずしも悪ではないが、僕ら日本人の多くは資産の大半を日本円で持ち、賃金も日本円で受け取っている。
大谷の超大型契約はもちろん、大谷という稀代のスーパースターに付随する途方もない経済的価値を示しているが、同時にMLBが有する圧倒的な資金力、そして日本とアメリカの経済力格差をも示している。
1990年代前半のバブル崩壊から今日に至る「失われた30年」で日本経済が停滞している間に、アメリカではプロ野球チームが一人の選手に1000億円を投資できるほど経済が成長したということだ。
世界で最も稼ぐサッカー選手はあの人
今日、年収にして数十億円、時に数百億円という大金を稼ぐアスリートは、プロ野球選手だけではない。
MLB以外のアメリカ4大スポーツやそれ以外のスポーツでも、今日のトップアスリートはとてつもない大金を稼ぐようになっている。
選手年俸の「インフレ」が凄まじいのはサッカーだ。
『フォーブス』が2023年10月に発表した「世界で最も稼ぐサッカー選手ランキング」最新版によると、1位は同年からサウジアラビアのアル・ナスルでプレーするクリスティアーノ・ロナウドで、年間の総収入は驚愕の2億6000万ドル(約389億円)。

内訳を見ると、年俸やクラブの広告料などで2億ドル(約299億円)、ナイキなどとのエンドースメント契約で6000万ドル(約90億円)となっている。