“結果を出す市政”を目指し「代打オレ」で自ら打席に立ってきた静岡市のかじ取り役・難波喬司 市長。川勝県政を支えた副知事時代とは異なり、独自の視点や見解を展開している印象も受ける。そこで就任1年目の振り返りと2年目への意気込みを聞いた。
「代打オレ!」が“難波流”
この記事の画像(14枚)静岡県の副知事から転身し「市民との共創」、そして「現場主義」を掲げ、新人3人による三つどもえの選挙戦を制した難波喬司 市長。
難波喬司 市長(2023年4月):
(市長は)政治家で実務は「皆さんにお任せ」ということではなく、自分自身が実務をやっていく。場合によっては「代打オレ」みたいな感じで、みなさんとまさに一緒の仕事をするということもありえる
就任1年目を難波市長は「いろんなことを判断していかないといけないので、極めて忙しいけど充実した1年」と振り返った。
就任時の訓示で印象的だった「代打オレ」。職員との打ち合わせなど、日々の業務でも“打席に立つ”場面が多かったそうだ。
その上で「凡打はないですね。とにかくフォアボールでもなんでもいいから塁には出ている、つまり前には進んでいる。」と語った。
その上で、「資料は自分で作っているから。バットを振るというよりも鉛筆を持って自分で書く場面が極めて多い」と付け加える。
“難波流”のもう一つの特徴はスピード感だ。
就任後すぐ、部局を横断した幹部職員や有識者による「市政変革研究会」、いわゆるブレーン会議を立ち上げデジタル化などの課題解決に乗り出した。さらにはアリーナやスタジアムの建設構想にJR静岡駅の南北の再整備など、大型事業の検討もこの1年で一気に進んでいる。
難波喬司 市長:
市民、市政にとって投資した以上のお金が返ってくる経済的効果をもたらすもの、そういったものをもっと積極的に進めていかないと今の経済が活性化しない、市民所得も向上しない。止まっていたものを動かしている。判断して決定して動かしているので私がハコが好きでやっているわけではない
人口減少対策は定住人口の拡大へ
様々な政策が進められる中、大きな課題は人口の減少だ。静岡市の人口は1990年をピークに減少に転じ、2024年4月時点で約67万5000人、2040年には約56万人まで減少すると推計されている。
市議会2月定例会で、難波市長はこれまで市が取り組んできた交流人口の拡大策を否定し定住人口の拡大に力を入れると強調した。
難波喬司 市長:
(人口減少は)本当に危機的というか”危機”ですね。まずは生まれる子供の数を増やす。それから市外から静岡市に入ってきてもらう、転入してもらうことが大事。これを一緒にやっていかないといけない
リニア問題で川勝知事と一線画す
そして、難波市長が存在感を示しているのがリニア問題だ。
就任後、まだ間もない2023年5月の会見時には「ボーリングについては山梨県境まで掘ってもいいと思っています」と発言。2024年1月には「全体としての進捗程度が最後の詰めにある。8合目までは行っている」と川勝知事の見解を否定するような発言をして注目を浴びた。
また、川勝知事の辞任によるリニア問題への影響について問われた際には「JR東海の経営判断に対して(川勝知事)自らの意見を言うとか、適切でない発言が多かったのでどうされたのかなと思っていた」と述べた上で「(リニア問題は)着実に前に進んでいくことが大事。県政がどうあろうと、市としての判断が大事」とした。静岡市は県内で唯一リニア新幹線の工事が行われる。
川勝知事のもとにいた副知事時代とは変わり、独自の見解を主張している難波市長。
県とJR東海との対話が前進しない中、静岡市も工事の環境への影響を協議しており、協議の場では市長自ら先頭に立って市の考え方を説明する場面も見受けられる。
リニア問題について「できるだけ早く着工しないといけないと思う」と語る難波市長。そのためには「環境影響評価について結論を出すのが一番大事だ」と力を込めた。
「代打は今後もいっぱいやる」
難波市長は「市政運営は会社経営と同様で結果を出すことが重要だ」と話すが、“危機”という人口減少のほか、経済や教育環境整備など市民が感じている課題は山積みだ。
そこで「これだけは結果を出す」いう静岡市民への約束ができないかとたずねてみた。
難波喬司 市長:
これをやったら問題が解決するというほど静岡市の問題は単純じゃない。「これをやります」っていう話じゃない。全部やる。全部を押し上げていく。それが私がやる中身です。代打は今後もいっぱいやると思う
静岡市の抱える課題は多く、人口減少対策など一朝一夕に結果が出てくるものではないと思われる。川勝知事に「政令市の失敗事例」とまで言われた県都・静岡をどのようにかじ取りしていくのか、2年目を迎える難波市長の手腕に注目したい。
(テレビ静岡)