能登半島地震の発生当初から女性に寄り添う活動を続けてきた女性医師が七尾市にいる。被災地の女性を取り巻く環境や今後懸念されることについて女性医師に聞いた。
女性が居心地の悪い思いをしないように…女性医師の思い
七尾市にある「ねがみみらいクニック」の根上昌子院長。能登半島地震が発生した2024年1月から、避難所を回り女性の支援を続けてきた。
この記事の画像(6枚)支援物資1つとっても、被災地の女性への配慮はまだ十分とはいえないと根上院長は話す。例えば生理用ナプキン。女性は夜用と昼用を使い分けるが、ある避難所では「昼用の1種類のみを1人3個ずつ配る」という対応だったという。根上院長はこうした女性の声を吸い上げて適切な支援物資を必要な人に届けられるよう、活動を続けている。
女性たちが語り合える場を
また、もう1つ発災当初から行っているのがクリニックの開放だ。週に2回ほど、待合スペースを女性たちが語り合える場として開いている。
オープンするのは午前9時。七尾市の内外から女性たちが訪れ、避難生活の苦労や将来への不安などを互いに打ち明ける。一人で抱え込みがちな悩みを語り合うことで、心が少し軽くなる。根上院長は「色々な悩みが表に出ないでいる中、それを出せる場所でありたい」と話す。
根上院長によると、過去には地震などの災害で性暴力やDV被害が増えたり、避難生活で心身を崩すケースが報告されている。「打ち明けづらい悩みは時間が経ってからやっと誰かに話せるようになる」根上院長は支援の継続が何よりも大切だと考えている。
発災から4カ月が経ち、被災者を取り巻く状況も変わってきた。根上院長が今危惧しているのは、仮設住宅に入居した人たちに支援が届きにくくなることだ。避難所では困ったことがあってもたくさんの人の目があった。一方、仮設住宅に入居すると悩みを抱えていても外からは見えづらくなってしまう。根上院長は「ここにきてお茶やお菓子を食べながらゆっくりした時間を過ごしてほしい」と呼びかける。
日焼け止めや化粧品を詰め込んだ特製ポーチ
クリニックでは、訪れた女性に配っているものがある。赤いポーチに入っているのは、防犯ブザーや日焼け止め、化粧水、ハンドクリーム、おりものシートなど。渡す人の年代に合わせて中身を変えてているという。
準備を手伝うのは近くにある和倉温泉で働いていた女性たちだ。和倉温泉は石川県屈指の温泉地。だが、地震で甚大な被害を受け、発生から4カ月が経った今もほとんどの旅館が営業を再開できないでいる。職を失った女性たちにとって、クリニックで過ごす時間は良い気分転換になっている。
根上院長は今後も定期的にクリニックを開放し、女性たちの支援を続けていく。