2024年3月28日、2人の女性が無料の弁護士相談会に参加するため福岡・嘉麻市役所を訪れていた。その理由は、8日にそれぞれの子どもが通っていた幼稚園から突然「23日以降、保育はできない」という話をされ、通っていた園は“もぬけの殻”になっているというのだ。
半世紀以上、地域の子どもたちを育ててきた歴史ある幼稚園で何が起きているのか取材した。
保護者会求めるも「できません」
2023年度末に突如、告げられた事実上の閉園の知らせ。保護者は子どもたちのケアと新しい預け場所探しに奔走していた。
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保護者・Aさん:
子どもは毎日幼稚園に行くのが当たり前だったのに、急に休みになって泣き出したりとか…。見てる方が悲しくなって。
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保護者・Bさん:
先生方からもお別れ会とか、きょうで幼稚園がお休みとか説明が何もない状態で…。
困惑を隠しきれない様子で当時の状況を語るのは、嘉麻市にある幼稚園に子どもを預けていた保護者2人。
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保護者・Aさん:
保護者会も一度もないですし、「してください」って何回も言ったんですよね。保護者集めて「してください」って言っても「できません」、全てに関して何を言っても「できません」しか言ってくれなくて。
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さらに驚きはこの直後だった。詳しい説明もなく、3月23日よりも1週間早い15日に幼稚園は事実上、閉園してしまったというのだ。
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保護者からの相談を受けた嘉麻市は、一時的な措置として近くの保育園を紹介したが、4月以降の預け先は各家庭で自ら探さなければならない。
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保護者・Aさん:
もうちょっと早めに言ってもらえれば…。園探しだったりとか、みんな仕事休んで対応して…。入園を締め切っているところも多いし、幼児教育を求めて幼稚園に通ってたのに希望の幼稚園に入れない。
困惑する保護者…弁護士相談会に参加
嘉麻市にある幼稚園はこの園を含めて3つで、渦中の幼稚園に通う園児は約40人。その中には別の市町村から通っていた子どももいる。突然の事態に2人の保護者は、嘉麻市が実施している無料の弁護士相談会を訪れた。
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保護者・Bさん:
仕事を(転園探しなどのために)休んだので、その保障をしていただけないかと思って相談に行きました。
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保護者・Aさん:
4月からのお金をもう払っていて、返ってきていないので。1年分年払いで払ってるんですよね。それも返ってきていない。
すでに園に支払っていた2024年度分の教材費などが、まだ返金されていない状態だという。
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保護者・Aさん:
分からないしか、何も言ってくれない。何回聞いても。また入園金がかかるのと制服だったり、雑費だったりとかもかかる。本当はラスト1年をお友だちと過ごさせてあげたかったのに。
「もめ事で…」裁判の末“休園”へ
園のホームページには、「入園募集」の文字が残されたままとなっている。わざわざ隣町から通う園児がいるほど評判の良かった幼稚園に一体何が起きたのか。
取材班が「保育はできない」ことを保護者に告げた当時の副園長を直撃すると、重い口を開いた。返ってきたのは予想外の答えだった。
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副園長:
これは家族間のもめ事の話で、恥ずかしいです。
元々この幼稚園は、地元の寺の住職が運営していた。その後、その住職の次男である副園長が理事となり、責任者として現場に立ってきた。
しかし、いまから5年前、住職の妻と現在の住職である長男が「次男の理事就任は無効である」などと異議を唱えたのだ。
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5年にも及ぶ裁判の末、2023年12月に次男の理事は無効だとして、運営主体は住職の妻と長男側に移ることになり、次男は園の運営から離れることになった。
しかし、家族間の確執は現在も続いていて、引き継ぎなどもうまくいかず、結果として園が開けられない状況に陥ってしまったのだ。
副園長:
子どもたちにはできる限りのことをさせていただこうと思っている。
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一方の長男は、3月29日に開かれた理事会で「一時的に休園せざるを得ない状況である」ことを確認し、保護者がすでに支払っている教材費などについては近く返金するとしている。
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また、番組の取材に対し、保護者や子どもたちに申し訳ないとした上で「体制を整え、園を再建したい」としている。
幼稚園で起きた親族間の争い。子どもたちを導くはずの教育者として、そのあり方が改めて問われそうだ。
(テレビ西日本)