秋田県唯一の男子新体操クラブが秋田市にある。男子新体操でありながら、その力強さに引かれて所属した女子選手・船木愛莉さんは、2023年に大きな病を患った。過酷なリハビリを乗り越え大会出場に向けて奮闘している。
後遺症抱えるも…半年で練習復帰
秋田市の男子新体操クラブ「ジャンクションスポーツクラブ」には、小学生から高校生まで21人が在籍している。
![秋田市の男子新体操クラブ「ジャンクションスポーツクラブ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/f/700mw/img_cf758a7428f90b30007491da9d06a3d2346975.jpg)
男子新体操は、女子競技とは違ってリボンなどの道具を使わず、音楽に合わせて跳躍・回転するなどアクロバティックな技で競う。
クラブには、男子競技の力強さに引かれた女子選手が6人いる。6人のうち最年長が船木愛莉さん。この春、高校生になる。
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2022年にチームを取材した当時、船木さんは中学2年生。初めての全国大会で男女混合の部に出場し、4チーム中3位という結果だった。
その後、経験を積み重ね、今はチームを引っ張る立場に。
チームを鼓舞しながら変わらず練習に励む船木さんを、2023年、大きな病が襲った。
「脳動静脈奇形」という、10万人に1人というまれな病で、脳の中で動脈と静脈が直接つながり、異常血管の塊ができる血管の病気だ。
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正常な時と比べて、血管の壁が薄いため破れやすく、破れると脳出血やくも膜下出血につながる。血管奇形があるだけでは自覚症状が出ないことがほとんどで、脳出血が起こって初めて病気に気がついたり、たまたま検査などで見つかったりする。
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船木さんは、2023年8月に自宅で突然倒れた。2日間に及ぶ手術は成功したものの、左半分の視野が欠損し、左半身にしびれなどが残った。
船木さんはそれでも前を向き、運動機能・言語訓練のリハビリを経て、2023年10月中旬に退院。学校に通い、日常生活を取り戻しつつある中、2024年2月下旬に競技に復帰した。
半年で練習復帰に至った背景には、新体操、そしてチームメートへの強い思いがあったからだ。
「悪い夢を見ているようだった」
練習後、自宅にお邪魔した。
船木さんは、新体操以外でも全国大会で良い成績を残していて、2本の鉄製の輪を平行につないだ器具を使って回転などの演技を披露するラート競技や、水泳の飛び込み競技の賞状が並べられている。
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病に倒れた当時の状況を話してくれた。
船木愛莉さん:
1回倒れたのがラートをしていた場所で、そこから車に乗って、痛み止めを飲んで家に帰り、シャワーを浴びている時に気を失って倒れた
母・ふみ子さん:
さっきまであんなに元気だった子が、そんな病気だったなんて信じられない気持ちでいっぱいで、悪い夢を見ているようだった
![愛莉さん(左)・母のふみ子さん(右)](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/3/700mw/img_f365b42dcbb34f267adcb6f0f05e24cc594013.jpg)
自宅の浴室で倒れ、意識がない状態で救急搬送され、そのままICU(集中治療室)に入院したという船木さん。
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母・ふみ子さんは「こういう元気な姿は見られないと思っていたし、手足も自由に動かなかったり、思うように言葉も話せないことを覚悟していた。なんとか無事に助かってくれればいい、それだけだった」と涙ながらに語った。
![写真:両親撮影](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/8/700mw/img_082eb04f2449f4258ee304440125682e327484.jpg)
手術は2日間に及んだ。きちんと目を開けて話せたのは、手術から1週間たってからのことだった。
船木さんは「左半身がしびれているのと、左半分の視界がないことが、日常生活が思い通りにいかない要因。運動技能的にはさほど問題はなくて、過酷だったのは脳のリハビリ。頭を使いすぎると痛くなるので、なかなかリハビリが進まないことがあった」と当時を振り返った。
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過酷な状況の中でもリハビリを乗り越えられたのは、家族はもちろん、チームメートの支えが大きかったようだ。
船木愛莉さん:
精神面からも、今では体調の面も気遣ってくれる本当にありがたい最高の後輩2人が支えてくれた。リハビリを頑張って、岐阜で開かれる全国大会に応援に行こうと、新しい生きる気力が生まれた
![後輩にアドバイスを送る船木さん](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/d/700mw/img_2d4766d90dbf546607a04e896d4f2d65380071.jpg)
2度目の入院を余儀なくされ、全国大会の応援には行けなかったものの、今では練習に参加し、後輩にアドバイスを送る場面も見せる。
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母・ふみ子さん:
大変な苦しい思いをした娘が、この先もこうして日常生活を送れると思っていなかったので、色々なことを楽しんで夢中になって過ごしていければ本当にいいなと思う。その一端に今でもジャンクションスポーツがあって、かなり前向きになる支えになっているので、ありがたいと思っている
患者さんの力になれる看護師に
高校入学を控え、新体操で再び全国大会を目指す傍ら、船木さんには大きな目標が生まれた。
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船木愛莉さん:
春から聖霊高校の看護医療コースに行き、私のように病気で苦しんでいる患者さんの力になれる看護師を目指していきたい
大きな病を乗り越え、生きる気力を取り戻した船木さんは、ただひたすらに新たな夢に向かって進んでいく。
(秋田テレビ)