日本赤十字社に就職した天皇皇后両陛下の長女・愛子さまは2日、社会人としての抱負や結婚観などを、宮内庁を通じて文書で寄せられた。
仕事との両立を目指し、本格的に取り組む皇族としての公的な活動については、「それぞれのお務めに誠心誠意取り組んでいきたいと考えております」と記された。
また、成年にあたっての記者会見で「まだ先のことのように感じられ、今まで意識したことはございません」としていた結婚観についての質問には「成年の会見から2年が経過いたしましたが、結婚への意識はその頃と変わっておりません。一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております」との回答に留めた一方、「両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵だなと感じます。心を動かされる出会いというと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私にとっては、これまでの出会い全てが心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物であり、深く感謝しております。これからも様々な出会いに喜びを感じつつ、一つ一つの出会いを大切にしていきたいと思います」と明かされた。
文書の全文は以下の通り。
愛子内親王殿下 日本赤十字社御就職に際しての文書回答
――卒業後の進路として、進学などではなく就職を選ばれました。社会へ出ることを選択し、その上で日本赤十字社を選ばれた理由とともに、両陛下からそれぞれかけられたお言葉があればご紹介ください。日赤では、どのような活動に携わりたいとお考えでしょうか。
私は、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様が、国民に寄り添われながら御公務に取り組んでいらっしゃるお姿をこれまでおそばで拝見しながら、皇室の役目の基本は「国民と苦楽を共にしながら務めを果たす」ことであり、それはすなわち「困難な道を歩まれている方々に心を寄せる」ことでもあると認識するに至りました。
そのような中で、ボランティア活動を始め、福祉活動全般に徐々に興味を抱くようになりました。特にボランティア活動に関心を持つようになったのは、一昨年の成年を迎えての会見でも述べましたように、災害の被災地に赴き、厳しい環境の中でも懸命に活動を続けるボランティアの方々の姿をニュースなどで目にして胸を打たれたことや、中学・高校時代からの親しい友人が、東日本大震災の復興支援にボランティアとして携わってきており、その友人から活動の様子を聞いたことなどが大きなきっかけとなったように思います。
大学では福祉に関する授業を履修し、福祉活動への関心が増す中で、公務以外でも、様々な困難を抱えている方の力になれる仕事ができればと考えるようになり、大学卒業後は社会に出て、福祉関係の仕事に就きたいという思いを抱くようになりました。
そのような時期に、両陛下と御一緒に、日本赤十字社からの御進講を受ける機会を頂き、また、関東大震災から100 年の節目に日赤本社にて開催された企画展を見に伺うこともできました。展示や説明を通して、国内外の災害救護活動や人道危機に対する救援活動、社会福祉事業を始め、多種多様な日赤の活動について理解を深めると同時に、同社の社会における役割の大きさを実感いたしました。そのことから、社会に直接的に貢献できる日赤の活動に魅力を感じ、両親に相談いたしましたところ、社会のお役に立てるとても良いお仕事なのではないかと背中を押していただき、日赤でお勤めすることを希望いたしました。有り難いことに、日赤側にも御快諾いただき、本年4 月より勤務させていただく運びとなりました。
日赤では嘱託職員として勤務することになりますが、元々関心のあったボランティアに関する業務を始め、赤十字の活動に幅広く触れ、新たなことにも挑戦しつつ、様々な経験ができれば嬉しく思います。
初めて取り組むことも多いと思いますが、職場の方々に御指導を頂きながら、社会人としての責任感を持って、様々なことを身に付け、なるべく早くお役に立てるようになるよう精進したいと考えております。
――卒業後は皇族としての活動に臨まれる機会も増えるかと思います。成年皇族としてこれまでに、新年行事や外国賓客の接遇などに臨まれた感想や、お仕事と両立しながら取り組まれることになる今後の活動への抱負をお聞かせください。
これまでは学業の状況を見ながら、皇族として幾つかの行事に出席させていただきました。その際には、天皇皇后両陛下や上皇上皇后両陛下を始め、皇室の皆様のなさりようをお手本とさせていただき、所作などで分からない点があれば、事前に両陛下や他の皇族方に伺い、アドバイスを頂きながら取り組んでまいりました。
新年行事や宮中午餐など、以前は両親から話を伺ったり、ニュースで間接的に拝見したりするだけであった行事に自分が参加しているということに、成年皇族としての実感が湧くと同時に、誠意を持って臨まなければならないという気持ちを持つようになりました。
2月には、初めて宮中午餐に出席させていただきました。外国の賓客の方とお食事の席を御一緒することには、始まる前は緊張もありましたが、お客様が気さくに話し掛けてくださり、和やかな雰囲気の中で、お互いの国の気候や食文化などについてお話しできたことが心に残りました。そして、このような場は、相手の方の国の風土や文化について理解を深めることができる貴重な機会であるとともに、日本の魅力を外国に発信できる、両国にとって意義深い時間であると身をもって感じました。
また、先日は、大学卒業に伴って、神宮と神武天皇山陵を参拝いたしました。初めての一人での地方訪問でしたので、無事に参拝を終えることができたことに安堵いたしました。それと同時に、行った先々で多くの方々に温かく迎えていただいたことに感激し、非常に印象深い訪問となったことを心から有り難く思いました。
今後は、公的な活動に出席する機会が今までよりも増えることになるかと思います。
公務と仕事の両立には大変な面もあるかもしれませんが、これまで18 年間という長い年月を学習院の温かい環境で過ごさせていただいたことに感謝し、その中で得た学びも活かしつつ、多様な活動に携わることができれば有り難く思います。これからも周囲の方々の理解と助けを頂きながら、それぞれのお務めに誠心誠意取り組んでいきたいと考えております。
――ご成年の記者会見ではご自身の結婚について「まだ先のこと」と述べられていましたが、理想とする時期やパートナー像、結婚観について現在のお考えとともに、両陛下からのご助言があればお聞かせください。これまでに心を動かされる出会いはありましたか。
成年の会見から2年が経過いたしましたが、結婚への意識はその頃と変わっておりません。一緒にいてお互いが笑顔になれるような関係が理想的ではないかと考えております。
両親から具体的なアドバイスを頂いたことは特にございませんが、両親のようにお互いを思いやれる関係性は素敵だなと感じます。心を動かされる出会いというと大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私にとっては、これまでの出会い全てが心を豊かにしてくれたかけがえのない宝物であり、深く感謝しております。これからも様々な出会いに喜びを感じつつ、一つ一つの出会いを大切にしていきたいと思います。
――天皇陛下のご即位から間もなく5 年となりますが、安定的な皇位継承を巡る議論は進んでいません。皇族数が減り、公務の担い手が先細ることについて、内親王としてどのように受け止め、皇室の将来やご自身の役割をどのようにお考えでしょうか。
公務に携わることのできる皇族の数は、以前に比べて少なくなってきていると承知しておりますが、制度に関わる事柄につきましては、私から発言することは控えさせていただければと思います。私自身は、そのような中で、一つ一つのお務めに丁寧に向き合い、天皇皇后両陛下や他の皇族方をお助けしていくことができればと考えております。