4月15日に今シーズンの全線開通予定の「立山黒部アルペンルート」は、まだ雪に閉ざされている。立山直下を貫く「立山トンネル」、そして白銀の世界が広がる室堂。全線開通を前に、今の時期にしか見られない景色を取材した。

夏山シーズンには大勢が散策

立山黒部アルペンルートの最高地点、標高2450メートルに位置する室堂。抜けるような青空のもと、どこまでも静かな白銀の世界が広がっている。

この記事の画像(11枚)

ここは夏山シーズンには大勢の人が散策を楽しむエリア。撮影した3月7日の室堂周辺の積雪は、2023年とほぼ同じ5~6メートルほど。「ホテル立山」は、まだ3階部分まで雪に埋もれていた。

人気のない雪原には、小さな足跡が…。みくりが池も雪に覆われていた。

トンネル掘削に費やした歳月は3年8カ月

1971年に全線開業したアルペンルート。今では、富山が世界に誇る山岳観光ルートだ。しかし、その開発の中で最も困難を極めた工事が、立山の主峰・雄山の直下を貫く「立山トンネル」の掘削だった。

1966年4月に始まった掘削工事。3.7kmのトンネルに、のべ37万2500人の労力と3年8カ月の歳月を費やし、ようやく貫通した。その間、突破に13カ月を要した最大の難所が「立山断層破砕帯」だ。(45メートル進むのに13カ月)

地下水を溜め込んだ軟弱な地層から毎分63トンもの水が噴き出し、作業員の行く手を阻んだ。
今でも破砕帯付近では、水が湧き出している。

立山トンネルは、設計上の大きなカーブのほかに、緩く迂回しているところが3カ所ある。これは、幾度も現れた破砕帯を避けながら、懸命に工事を進めた証だ。

特別に許可をいただき、トンネル内を矢野美沙アナウンサーが歩かせていただいた。

換気や土砂の排出などのために設けられた「横抗」
換気や土砂の排出などのために設けられた「横抗」

このトンネルの中には、約60年前の掘削工事のときに掘られた「横抗(おうこう)」と呼ばれる横穴がいくつもある。今も当時のまま残されていて、工事の苦労を垣間見ることができる。

「横抗」は、換気や土砂の排出などのために設けられ、全部で15カ所あるという。

立山黒部貫光営業推進部・川口知華さん:
外につながっているものもあるし、途中で資材置き場などになって、行き止まりになっているところもあります

むき出しになったままの岩盤には、工具で岩を砕こうとしたような跡もある。矢野アナウンサーが感じたのは「圧迫感」だ。当時の作業員の息遣いが聞こえてくるようだった。

トンネル内を走る「トロリーバス」

先人たちの労力によって貫通した日本最高所を通る山岳トンネル。

現在は、架線からの電気を受けて動くトロリーバスが走っている。室堂~大観峰を10分で結び、これまで1920万人の観光客を運んできた。

しかし、2024年11月末で運行が終了し、国内唯一のトロリーバスは姿を消すことになる。

トロリーバスを整備する技術者・田計勇さん:
トロリーバスは先輩なんですよ。最後はしっかり送ってあげたい

トロリーバスのラストランが迫っている。

(富山テレビ)

富山テレビ
富山テレビ

富山の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。