環境にやさしい木造建築が見直される中、広島の木工所のお母さん社長が、木の温もりを全国の子どもたちに伝えるための“木育トラック”の製作資金をクラウドファンディングで募っている。日本で初めての試みに挑戦にするお母さん社長を取材した。
温もりある木のおもちゃを3人のお母さんでつくる
広島県の山あいの三次市の一場木工所。社長の一場未帆さんも2人の従業員もみんな、お母さん。
社長の一場美帆さんは、木の良さを全国に説いて回る“木の先生”だ。
一場木工所社長・一場未帆さん：
木を皆さんにたくさん知っていただくことが、将来的に自分たちの生活を豊かにしたり、穏やかに暮らすために必要なものじゃないかなと思っています
この小さな木工所で作られているのが、地元産の木の温もりを感じられるファッショナブルなおもちゃの数々。
パンを象った木のドミノは木目が鮮やか。200個の木のボールが入った木のプール「森のこころんプール」は子どもたちに人気だ。
木でつくったおにぎりや卵焼きなどの「森のおべんとう」に野菜、果物、サンドイッチなどを色鮮やかに象ったお店屋さんセットなど、そのデザインも様々。
使うのは、中国山地などの地域の木材。塗料も国産で食品衛生法をクリアしたものしか使わないという徹底ぶりだ。
さらに日本のおもちゃで初めて、生産から使用、リサイクルにかかる二酸化炭素の排出量・環境への負荷を算出し、見える化した。
おもちゃ以外にも、飲み物の味がまろやかになると評判のマドラー「tastywood（テイスティーウッド）」などが、優秀な木工品に贈られる「ウッドデザイン賞」をとっている。
木の温もりを子どもに伝える「木育」
一場木工所のおもちゃ作りの根底にあるのは「木育」だという。「木育」とは木材や森林に触れ、価値を正しく知り、それを活かせる人材を育てる教育活動。
木育を通して、森に人の手が入らなくなると、災害を誘発することを知ってほしいという。
一場木工所・一場 未帆さん：
実は今すごくチャンスでもあり、危機でもあると思ってます。実はここが分かれ道かなと思ってるんです。山に人が入っていたから、今の状態でキープできているんだけど、人が入らなくなると土砂崩れが起きたり、里山はどんどん荒れていく。そういうことを知って頂くのに、今が本当にチャンスだと思う。
今、一場さんたちは、新たに挑戦していることがある。
木のおもちゃを載せた「木育トラック」 クラファンで製作費募集
一場木工所・一場未帆さん：
これは今、一場木工所で、プロジェクトで作ってる「木育トラック」というトラックです。日本で初めて作っているんですけど
現在、千葉県で製作中の木育トラック。2トントラックに木のおもちゃのある、ウッディな空間を作るという、これまでになかった取り組みだ。
移動しながら、全国の子どもたちに木の魅力を届ける計画だ。移動式にすることで、様々な場所で、低コストでイベントが実施できる。
3月末まで、クラウドファンディングで「木育トラック」製作費用の応援を募っている。完成予定は4月ごろとなっている。
授乳室だけでなくミルクを作る機能も備えるなど、子育て世代に役立つ設計で、まずは、首都圏での展開を予定。その後台数を増やし、全国で木育と、子育て支援の輪を広げたいという。
被災地にも「木育トラック」を 自身も西日本豪雨で被災
一場さんは、被災地にも「木育トラック」を展開させる考えだ。2016年に熊本の震災で被災者支援をし、2018年には、自身も西日本豪雨で工場が浸水する被害に遭ったからこそ、被災地支援の想いは強い。
一場木工所・一場未帆さん：
実は能登半島の方にも支援に行こうと思っているんですが、やっぱり子どもの遊びとか、親子の安全な関わりの時間が一番後回しにされてるんじゃないかと思っていて、短い時間でも、「なんかよかったね」って思ってもらえる場所をトラックなら機動力もあって運べる量も違うので、頑張っていけたらと思う
木に囲まれた環境で育ち、木の素晴らしさに魅せられ、その魅力を伝えることに使命感を持つ一場さんは、今の若い人にもっと木の良さを知ってほしいという。
一場木工所・一場未帆さん：
木っていうのは、その柔らかさであったりとか、五感にすごく訴えかけるものであるということと、本当は環境に良くて、地域で林業を回していくことで、世界にも出していける素材ではあるのに、なかなか今の特に若い人たちが知らない、触ったことがない。だから、木って面白いし、可能性がたくさんあるし、そういうワクワクをみんなに知ってほしいなあと思っています
日本の国土の3分の2は森林だ。林業の人手が入っているから森林は守られ、土砂災害を防ぎ、里山の風景が維持されている。木の良さを感じられる環境を子どもたちに提供することが、森林を育て守ることに繋がっていくことが期待されている。
（テレビ新広島）
