子どもたちが夢中になるのが「泥んこ遊び」。これに似た室内でできる遊び方がある。広島市の保育園では、賞味期限切れの小麦粉を使って、子どもたちが自分の自由な発想で「ぬたくり遊び」をしたり、おもちゃをつくりだしたりしている。

捨てられるはずの小麦粉を水でとき、色を…

子どもたちが夢中で遊んでいるのは…絵の具かと思いきや…実は小麦粉。

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賞味期限が切れ、捨てられるはずだった小麦粉に様々な色の食用の色粉を混ぜ水でとく。
通称「感触あそび」は子どもたちの大好きな時間。

口田なかよし保育園 山下慶子園長:
きょうは大胆に「ぬたくり遊び」をしたいので、水の量をちょっと多くして、伸びやすいように、トロトロにしている。そのときの狙いによって水の量を加減している。

少し大きな子たちのクラスでは、また違った遊び方が…水の量を少なくし、こちらも色粉を入れ、さらに油を加えて、しんなりさせ、粘土のように。

子どもたちが作っているのは…パン。思い思いの個性のある作品となった。

「子どもたちの心の栄養に」

口田なかよし保育園 山下慶子園長:
食材を使うことに対しては、慎重に考えた方がいいのかなと思うところはあるんですが、捨てるのがもったいないから、子どもたちの心の栄養のために、ちょっとお借りしますねという気持ちを大事にしながら、こういう遊びをしています。

別の教室では、牛乳パックの中から出てきたゼリーのようなものに子どもたちも大興奮。これは賞味期限の切れた寒天を煮て溶かし、食用の色粉を混ぜ、一日かけて固めたもの。

「ぐにゅ」「ぐちゃ」子どもたちは、そんな感触を楽しんでいる。

園児:
食べてもいいよ。
Q:食べてもいいの?何これ?
園児:
ゼリー屋さんだよ。

園児:
ブドウとね、イチゴとどんぐり入れた。

それぞれのごちそうがあっという間に出来上がった。

この保育園では、汚れたり、触るのが苦手な子には無理強いせず、まずはスプーンですくってみようと工夫して、遊びやすいようにしている。

こうした「感触あそび」に、30年以上取り組んできた「口田なかよし保育園」の山下慶子園長。様々な本も出版してきた。
口田なかよし保育園 山下慶子園長:
自分がこの子たちの遊びの大将になって、もみくちゃになって一緒に遊んでやろうというのが出発点。

口田なかよし保育園 山下慶子園長
口田なかよし保育園 山下慶子園長

子どもたちが自分で遊びを、おもちゃをつくりだせる環境を

「感触あそび」は時代とともに変わる保育の事情を反映して生み出された。昔は、毎日外に出て、自然とたわむれて遊んでいたが、徐々に外に出る保育が難しくなった。

口田なかよし保育園 山下慶子園長:
外で遊びまくるということは、子どもにとって欠かすことのできないことだが、じゃあ、それに代わるものはないだろうかということで、廃材みたいなものを集めながら、泥んこ遊びに代わるような感触を味わえるものというのを考え始めた。

保育園の倉庫を見ると、子どもたちが散歩中拾い集めた自然のものや、近所の会社からもらったいらない箱など廃材がたくさん。捨てられるものが、子どもたちの手でおもちゃに代わる。

口田なかよし保育園 山下慶子園長:
一度捨てられたものを利用して、再び命を吹き込むということでしょうか。買い与えられたものはすぐ飽きちゃう傾向があるけれど、自分たちでおもちゃを作ると、べろべろになるまで、壊れるまで遊びまくる。おもちゃを自分たちで生み出して遊ぶことに勝るものはないと思いますね。

保育士は子どもにヒントを与える役目

口田なかよし保育園で子どもたちがよく作るものがある。古紙の新聞広告を細くして、どんどん巻いていく。できたのはコマ。これも、園児が遊びの中から編み出し誕生したものだという。

広告でつくったコマ
広告でつくったコマ

一方、保育士は、何かをやらせるのではなく、ヒントを与えることだという。これは親子で遊ぶときにも参考になる。
口田なかよし保育園 山下慶子園長:
何よりのお手本は、先生がさせるのではなく、子どもたちが自分たちで楽しみながら遊ぶこと。何々のためにさせるじゃなくて「これやってみたら楽しいわー」っていうだけで、子どもは夢中になれると思いますね。

小麦粉遊びから、次第に家で本物のパン作りをしたり、手先が器用になって、大人になって実際にパティシエになった人もいるそうだ。

子どもたちの自由な発想を遊びに結び付け、自分たちだけの遊び方、おもちゃをつくりだす。子どもたちが夢中になれる遊びの中から創造力が育まれる。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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