新年度がスタートし、気持ち新たに「もっとスムーズに家事を進めるぞ」「子供に早寝早起きの習慣を身につけて欲しい」と意気込んだ人も多いのではないだろうか。
しかし早々に挫折、変わらず朝も夜もバタバタと慌ただしく過ぎていく…それ、家が片づいていないのが原因かも?
目に見えるモノが整理されると、不思議と「人生が好転する」と話すのは、片づけアドバイザーの石阪京子さん。家事は“暮らし”そのものに大きな影響を与えるという彼女に、家事に育児に追われる働く世代に向けて、おのずと片づく部屋にするにはどうすればいいのかを聞いた。
弊害は“常に探し物”だけじゃない
出かける直前に限って、仕事に必要な書類が見当たらない。着ようと思っていた服がない。幼稚園や学校に出かける前にいつも、探し物をしている…。
おなじみの、ある意味微笑ましい光景かもしれない。しかし貴重な朝の時間に探し物をするのは、大きなタイムロスだ。
「モノがあふれているせいだという人もいれば、たくさん捨ててモノは少ないのに、なぜか必要なものがすぐに見つからないという人もいます。まずは、片づけというのはミニマリストになるのが目的ではなく、『環境が整う=暮らしが回る』ということだという意識が大切です」と石阪さんは話す。
片づくことのメリットは、探し物に費やす無駄な時間がなくなるだけではないという。
「私が片づけレッスンで指導している生徒さんからも、『キッチンがぐちゃぐちゃでまずは片づけから入るので、すぐに料理に取りかかれない、調理に時間がかかる』という話をよく聞きます。その間に子供がお腹が減ったと言うので、ついついお菓子や総菜ばかり食べさせてしまったり、結局朝ご飯を食べないで学校に行ってしまったり。片づけは、健康面にもすごく影響しているんですよ」(以下、石阪さん)。
健康面ではほかにも、散らかっていて掃除がしにくいと、部屋にホコリがたまって体に良くないというデメリットが。また経済面でも、探し物が見つからず同じものを買い足してしまい、無駄な出費の恐れがある。
時間・健康・経済という“暮らし”そのものに影響する片づけを、石阪さんは「暮らしを回すための土台作り」だと表現する。
「リビングはカフェ」と心得よ
片づけで何より重要なのは「モノの住所を決め、使ったらすぐに元に戻す」ということ。石阪さんが提唱するメソッドの大まかな流れは、以下だ。
【1】リビングやキッチンなどの“公共スペース”と、それぞれの私室などの“プライベートスペース”をきっちり分ける
子供部屋などが足りない時は、リビングなどの一角にプライベートスペースを確保する。
【2】“公共スペース”に置くものと、“プライベートスペース”に置くものに分ける。あふれてしまう分は手放す
リバウンドしにくくし、備蓄品を入れることも考え、7割収納になるまで手放すことを目標にするといいそうだ。
【3】公共のスペースには私物を置かない
例えば子供がリビング学習する時も、勉強道具をリビングに持ってきて、終わったら自室に持ち帰ることを徹底。「リビングはカフェ」と考えて置きっぱなしにしない癖をつけるといいという。
どうする?「家族がすぐ散らかす」問題
さて、こうなると家族の協力が不可欠だ。「いくら私が片づけても、夫(妻)や子供が散らかしてしまう!」と嘆く声が聞こえてきそうだ。
石阪さんはまず、家族会議を開くことを勧めている。
「なぜ家を片づけたいのかを、丁寧に説明する必要があります。併せて、夫(妻)や子供に対して『ゆっくりできる場所がなくて休まらないでしょう』『お友達を呼べる家がいいよね』などと、自分事にして考えてもらうことが有効です。不便と向き合って家を快適な場所にしよう、と呼びかけてください」。
家族の同意が得られたら、前述したように公共のスペース(リビングやキッチン、脱衣所や洗面所など)と各自のプライベートスペースをしっかり分けることから、みんなで話し合って取り組もう。
(どうしても夫(妻)が協力してくれない、という時の対処法についてはこちら。4月24日公開:手伝わない家族が「片づけたくなる」ためのヒントを専門家が伝授 「使わないなら捨てるからね」は逆効果)
ここで特に注意したいのは、子供が小さいときの子供部屋の扱いについて。
「まだ使わないだろう、と物置部屋になっている家がとても多いです。しかし子供は、自分のものがリビングにあると親が片づけてくれると考えてしまう。大人のモノは大人の部屋、子供のモノは子供部屋に、ちゃんと“住所”を確保してください」
“今の時代”に合ったやり方を
SNSなどで片づけのオンライン講習を行っている石阪さんだが、相談をしてくる人の7~8割が、子供がいる30~50代の女性だという。そんなママたちに、石阪さんは完璧を求めないように伝えている。
「彼女たちの母親世代は、専業主婦も多く、まだ『家事は母親がして当たり前』と思われていた時代です。核家族化が進み、さらに家にいる時間も少ない今のママたちが、自分の母親世代の家事の仕方を手本にすると成り立たないのです。丁寧できっちりした家事ではなく、まあまあで、完璧を目指さないことも大切です」。
自分の母親を理想像と考え、自分と比べてそのギャップに苦しむ人たちも多いそうだ。
しかし石阪さんはどんどん時短家電や新しいサービスを取り入れたり、「何でも母親」ではなく、子供も含めた各自が“自分のことを自分でできる”仕組みを作ったりすることを提案している。
次回は、そんな母親たちが今すぐ取り入れられる「家事の時短術」について、具体的にお伝えする。
石阪京子
片づけアドバイザー、宅地建物取引士、JADP心理カウンセラー・上級心理カウンセラー。夫と不動産会社を起業後、引っ越し後のアフターフォローとして家の片づけの提案を始める。独自のメソッドで片づけに成功した家は1000軒以上に上る。
現在は収納監修、片づけレッスンのほか、全国各地でトークイベントやオンラインセミナーを開催し、多くの女性に暮らしの整え方のアドバイスを送っている。