痴漢をやめたいという人は結構いるんです。もう痴漢はしたくない、家族も悲しませたくないし、そもそも刑務所にも行きたい人はいません。
もう痴漢をやめたいと心の底から思っている人は実はたくさんいます。ですから、ちゃんと治療を受けてやめ方を学んでもらい、そして認知の歪みを修正していく、これも大事なことですし、同時に満員電車をどうするかというのも大事な課題だと思いますね。
ーー満員電車はやはりなくさないといけないですよね。
都知事は公約で満員電車を無くすために車両を2段にすると言ってましたけど、そもそも働き方改革とも関連して変えていかないと難しいと思います。痴漢が一番多いのは、朝の7時8時9時という時間で、そこに出社する時間が集中しています。
帰りも大体同じような時間帯(18時~20時)に痴漢が多いですし、根本的に解決するにはほとんどがサラリーマンですから、やはり働き方を変えるしかないですよね。出勤時間と退勤時間の分散ですね。
痴漢をなくすために変えたい3つのこと
ーー痴漢を無くすためには、治療と満員電車と働き方の3つを変えないといけないんですね
あとは痴漢が性依存症という病気であるという認識がないですから、その認識をひろげていくことも必要です。もちろん病気だから許されるというわけではなくて、病気であればちゃんとした治療をしましょうと。
「痴漢はダメ」というポスターはありますが、ここでも痴漢をする人には「認知の歪み」が働いて、「俺はあそこで言われている痴漢ほどは触っていない」「だから俺がやっている行為は犯罪じゃない。俺は痴漢ではなく、ただ触れてるだけだ」という認識なんです。
本人が現実に見ている現実に対して、もっと入っていきやすいメッセージが必要です。だから「痴漢は病気です、なので治療しましょう」と書かれているほうが、彼らにとっては「ああそうか、治療できるんだ」と言うメッセージが現実的だと思います。
ーー一方で、来られる方は依存症や病気扱いしてはいけないと書いてありましたが、それはなぜですか?
このクリニックに来る方は冤罪かどうかを争っている人ではなく、常習化した方ばかりです。つまり裁判になり弁護士と来所したり、家族が今度こそはと思って連れてきた人たちです。
痴漢の場合最初は示談、あとは不起訴だったり、裁判になったとしても最初は執行猶予が付くことが多いです。執行猶予の再犯で来るとか、いわゆる自分が変わらざるを得ない状況で来る方が多いんです。
常習化していて、満員電車に乗るとセルフコントロールが出来ない。いわゆる善悪の区別はできるんですけど、特定の状況下で本人の衝動制御が出来ないというのが、この病気の本質なんですね。梅干しを見るとヨダレが出る条件反射と同じで、中には満員電車を見ると同じことが起きてしまう状態なわけです。
そういう場合は性依存症としての問題として治療するんですけど、彼らは根強い「認知の歪み」があるので、病気であるならばやっても仕方ないと、そういう世界観に繋がりかねないんです。
病気として診断するということは、本人の行為責任が全てではなくて、病気としての側面があると言うふうになってしまうので、そこが一つ本人としては楽になってしまう側面もあります。
病気として見る時は良い側面と悪い側面があります。良い側面は病気だったら治療すればいいんだと家族も本人も治療の方向で足並みを揃えていけますよね。
悪い側面はさっき言ったように過剰に病理化してしまうことは本人が行為責任を軽く見てしまうことに繋がるので、そこのバランスをちゃんと知っておかないと「病気だから〜」という風になりかねないです。このあたりの正しい認識をもとに治療を継続してもらいたいと考えています。

