アメリカの政策決定を語るうえで欠かせない存在が「ロビイスト」だ。
日本ではあまりなじみがないが、ロビイストが行う「ロビイング(ロビー活動)」は、アメリカでは憲法で保障された合法的な政治活動だという。
ワシントンで30年以上、ロビイストとして活動する海野有里さんの著書『ワシントン・ゲーム』(扶桑社)から、政策形成の現場で果たすロビイストの役割とその仕組みについて一部抜粋・再編集して紹介する。
「ロビイング」の始まりはホテルから
そもそも「ロビイング」と聞いても、具体的に何をする仕事なのかピンとこない人は多いでしょう。実はアメリカ人でも、ロビイストという職業をよく知らない人は少なくありません。
私がロビイストだと話すと、「ホテルのロビーで働いているの?」と聞かれることもあります。もっとも、ロビイングという言葉はもともと「ロビーで政治家に働きかける人」に由来するので、この勘違いも完全に的外れとは言えません。
アメリカで「ロビイスト」という言葉が広く使われるようになったのは、ユリシーズ・グラント大統領(1869〜1877年)の時代とされています。ホワイトハウスのすぐ近くには、歴史あるウィラード・インターコンチネンタル・ワシントン・ホテルがあります。
このホテルは1860年に、日米修好通商条約の批准書の交換をするためにワシントンを訪れていた江戸幕府の使節団が宿泊したことでも有名です。館内には、今も当時の日本人使節団を描いた展示が残っています。
グラント大統領はこのホテルで葉巻とブランデーを楽しむ休憩をよく取っていたそうです。そこで、「ロビイスト」と呼ばれる人々は、ホテルのロビーで大統領を待ち構え、政策を陳情したといわれています。そこから、ロビイストという職業が定着していったのです。
「ロビイング」とは?
ロビイングとは、政府や議会などの政策決定機関に対し、団体や個人の立場や利益を政策に反映させるために働きかける活動です。

