福井で今年6回目を迎えるLGBTQ+映画祭。主催者の山口はつみさんは、男性として生まれ現在は女性として生活するトランスジェンダーである。結婚20年目、42歳のとき、妻に「もう男やめていいか」と打ち明けた。妻は驚く様子もなく受け入れ、結婚生活はいまも続いている。一方で自身が主催する映画祭の来場者数は年々減っていて、認知度に課題も感じている。地方で自分らしく生きることの意味を探るため、当事者の声を聞いた。
映画祭の来場者は「少しずつ減っている」
福井市で11月3日に開かれる「福井LGBTQ+映画祭」に向け、運営メンバーが準備を進めていた。
この映画祭は今年で6回目を数えるが、来場者数が年々減ってきていると話すのは、主催者で「なろっさALLYふくい」の山口はつみ理事長だ。「最初の方は多かったけど、その後は少しずつ減っているかな」。認知度が高まっているのかどうか、判断しかねる様子だった。
山口さんは、トランスジェンダーであることをカミングアウトしている。男性として生まれたが、現在は女性として生活している。
「あ、これや」中学生で見つけた本来の自分
自分の性別に違和感を覚えたのは小学生のときだった。山口さんは「小学校4、5年生あたりからかな…自分で意識し始めたのは」と振り返る。
学校で女の子と話したり近くにいたりすると、ほっとする感覚があったという。
そして、大きな転機は中学生のときに訪れた。友人と遊びに行くのに、なぜか女装することになったという。それが「あ、これや」と自分の性のあり方に納得できた瞬間だった。
その後はカミングアウトすることなく、山口さんは就職先で、共に人生を歩む女性と出会う。「一緒にいても、いわゆる気をつかわなくていいタイプの女の子だった」といい、結婚はごく自然な選択だった。
ところが、自分の気持ちを押し殺した生活は、次第に限界に達した。
「自分が男や、っていうのに、だんだん耐性がなくなってきた」と山口さん。「もう男やってられないわ」という思いが強まっていった。
「もう男やめていいか」妻の反応は…
結婚20年目、42歳のとき、山口さんは突然、妻にカミングアウトした。
「もう男やめていいか」
それを聞いた妻は、特に驚く様子もなく受け入れた。結婚生活は、いまも変わらず続いている。
山口さんが嫌だったのは、男性の服装はこう、女性はこうと、ステレオタイプで分けられていたことだという。
妻とは体型が違うため服の貸し借りはないというが、妻からは「そのぐらいの年のおばちゃんは、そんな格好しないよ」と辛口の“だめ出し”もあるという。夫婦での生活は、昔からほとんど変わっていないと山口さんは話す。
「妻からは、男とか女とかっていうんじゃなくって、私だから一緒にいてくれてるという言葉をかけられたことがある」と話す。
「良くも悪くも距離が近い」地方でのカミングアウト
一方、福井のような地方だからこそ、カミングアウトの難しさがあると話すのは、ゲイを公表して活動しているかずえちゃんである。
かずえちゃんは福井のような地方を「良くも悪くも、距離が近いじゃないですか」と語る。自分自身はカミングアウトしているため、何を聞かれても隠すことはなく、突っ込んだことを聞かれるのも嫌ではないという。
「でも、もし自分がここでカミングアウトせずに生きてたら、うそつかなあかんし、しんどいなあ」と話す。
映画祭を立ち上げて6年、かずえちゃんが意識しているのは“当事者目線”だ。
「カミングアウトできなかったときの自分は、自分の中に常に忘れずに置いてる」という。

性別や立場にかかわらず、自分らしさと向き合えるように―誰もが安心して過ごせる場所を目指した活動は、いまも模索が続いている。

