「政治とカネ」で揺れる国会…政権奪取を目指す立憲民主党・泉健太代表が「ミッション型内閣」なるものを打ち出した。
一体どんなものか。そこには民主党政権の「苦い記憶」があった。FNNの単独取材で迫る。
「ミッション」には他党の政策も
「5年で政権交代」立憲民主党・泉代表がそう語って党内の批判を浴びたのが2023年11月。その後、自民党派閥の裏金問題が明るみに出て、泉氏のギアは何段も上がった。次期衆院選での単独過半数獲得はさすがに非現実的と見たか、泉氏が12月に提唱し始めた新しい連立政権の形が「ミッション型内閣」である。
この記事の画像(8枚)一体何なのか。泉氏に聞いてみると「単に何をするか分からない政権を作るのではなく、成すべきこと・実行することを明確にする。これがミッション型内閣だ」と語った。
では何をミッションとするのかについて、泉氏は2月4日の党大会で、子ども若者支援、教育の無償化、防衛増税の撤回、ガソリン税のトリガー条項の凍結解除、大学授業料の無償化などを例として挙げたが、優先順位は示さなかった。
しかし今回のインタビューで泉氏は、2つの最優先ミッションを明言した。
第一のミッションは「腐敗した自民党政権を退場させる政治改革」、第二のミッションは「国民生活を豊かにする」だという。このミッション(使命)のために、改革勢力を集めるという主張だ。
それ以外の「ミッション」に関して泉氏は「共通する政策を掲げようと考えている。立憲民主党の政策だけを実現しようと思ってはいない」と、他党の政策も組み入れていく姿勢を示した。
一方で泉氏は、ミッションを次々と増やすことには否定的だ。
「実はむしろ、新しい政権だからといって、全部の政策やスタンスを合意して、全部やろうとするのは間違いだと思っている」とも語っている。その背景にあるのは、民主党政権時代の反省だった。
失敗?民主党政権を“総括”
当時まだ30代の若手議員だった泉氏は民主党政権をどう捉えているのか。今回泉氏は「既得権を一度壊せた」「新しい社会の姿を示せた」という2点を挙げた。
「自民党はようやく今、児童手当の所得制限を撤廃するところに戻ってきた。本来それは10年前に当時の民主党が示した姿だ。政権交代によって予算の使い方や優先順位が変わり、その後の自民党政権でも大きな影響を与えている」と成果を強調した。
一方で民主党政権は「決められない政権」「マニフェストが有言不実行」との厳しい批判を受けた。
このことについて泉氏は「掲げる政策を増やしすぎた。旧来の既得権を打破するには労力も時間もかかる。当時はみんな肩に力が入って、全力で自分たちの考えた政策を純粋に、同時進行で一斉に進めようとしたので、政治的体力は失われていった。大きな反省・教訓だ」と振り返った。
だから、新政権では「ミッション」を絞り込む考えだ。
泉氏は「20~30の政策を約束してやらないよりも、5つの政策を約束して必ずやる政権の方が、信頼されるし、安定もするし、役に立つ」と述べた。
「自公過半数割れ」その後の戦略は?
次期衆院選で、もしも自民・公明を過半数割れに追い込めたら、どうするのか。少し気が早いが戦略を聞いてみた。
泉氏は「自公過半数割れになれば、それが国民の意思、選択であったということ。過半数割れした自公政権をアシストするような行動になってはいけない」として、他党に協力を求めた。
立憲に代わって野党第一党を目指す日本維新の会に対しては「維新さんは、次の選挙で政権を担うことを怖がってはいけない。覚悟を持たなきゃいけない」と諭した。
その視線は、与党の一角にも向けられた。
「公明党が次にどう動くのか。自民党と同じ穴のムジナになってしまうのか。それとも改革勢力側として決起するのか。公明党さんにも問われている」と泉代表は誘い水を向ける。公明党とのパイプはあまりなさそうな印象があるが、泉氏は「あらゆる政党とはパイプがある」と自信を込めた。
では、党内で「ミッション型内閣」への支持は得られているのだろうか。
泉氏は「所属議員みんなが政権を担うとは、まだなかなか想像していないところはあるかもしれない。トップが示すことで広がっていく。より強く訴え続けたい」と力を込めた。
ミッション型内閣の提唱からまだ2カ月あまり。支持率も決して伸びているとは言えない中、国民はもちろん党内への浸透も大きな課題である。
執筆:フジテレビ政治部 鈴木祐輔(関西テレビ)