北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正氏が15日夜に発表した異例の談話。

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「日本が解決済みの拉致問題を障害物としなければ、岸田総理が平壌を訪問する日が来ることもあるだろう」

岸田首相の訪朝に触れたこの談話について16日、林官房長官は「留意している」と述べつつも、「拉致問題がすでに解決されたとの主張は、全く受け入れられないと考えております」と強調した。

「大胆に現状を変えて…」9日の岸田首相答弁に反応

15日夜、朝鮮中央通信が報じた金与正氏の談話。その冒頭で紹介されたのが、岸田首相の9日衆議院予算委員会での答弁だった。

「昨今の日朝関係の現状に照らし、大胆に現状を変えていかなければならない」
「私自身が主体的に動いて、トップ同士の関係を構築していくこと」

金与正氏(中央)
金与正氏(中央)

与正氏はこの答弁が、”日本メディアで「これまでとは違う立場を示したことになる」と受け止められた”として、次のような見通しを示したのだ。

「日本が時代錯誤の敵対意識と実現不可能な執念を、勇気を持って捨て、丁重な振る舞いと信義ある行動で、関係改善の新しい活路を切り開く政治的決断を下すなら、両国は新しい未来を切り開くことができる、というのが私の見解である」

専門家「政府内で練りに練った談話だと」

あくまでも個人的な見解であるとしながらも、”拉致や核・ミサイル問題を議題にしなければ、両国の関係改善は可能”だとして、日本側に譲歩を迫った与正氏。

今回の与正氏談話について、北朝鮮情勢に詳しい龍谷大学・李相哲教授は、「金与正が『個人的な見解』というふうに言いましたけれども、これはかなり政府内で練りに練った談話じゃないかと思っているんですね」と指摘。

談話の中で北朝鮮が「拉致問題」に触れたこと自体が異例だと話す李相哲教授は、「北朝鮮が拉致問題を口にした以上は、何らかのプラン・考えが背景にはあるんじゃないか、というふうに思います」と話した。

能登半島地震では見舞いの電報…岸田首相を「閣下」

1月の能登半島地震の際には、岸田首相に見舞いの電報を送るという異例の対応を見せた金総書記。2月2日拉致被害者の蓮池薫さんは、フジテレビの取材に対し、こう指摘していた。

蓮池薫さん:
北朝鮮が日本と対話をしようという時に、もう拉致問題言ってこないなんていう前提は考えてないんですよ。絶対言ってくると。その流れの一つが、金正恩総書記が(岸田首相に対し)「閣下」といいながら、お見舞いを言ってきたところに繋がると思う

 蓮池薫さん:
見返りと拉致の解決はどうするのかという問題で、日本がより具体的で説得力のある案を作って北朝鮮に示し、いかに説得するかというところにかかってきている。そういう意味で(今は)チャンス

北朝鮮から投げられた新たなボールを、日本はどう返すのだろうか。
(「イット!」 2月16日放送より)