社会問題化している、“悪質なホストクラブ”。東北一の繁華街、仙台市の国分町にあるホストクラブでも2月、3人の逮捕者が出た。飲食代などを支払えずにいた女性たちに、ホストが“デリヘル”の仕事を紹介したという。店には、女性たちを囲い込み、いかに金を巻き上げるかー。その悪質で巧妙な手口が示された“マニュアル”のようなものが存在していた。
客の女性をデリヘルに紹介した疑い 店長ら逮捕
職業安定法違反の疑いで逮捕されたのは、仙台市青葉区国分町にあるホストクラブ、「NOBLE」の店長、草苅亮二容疑者(36)と、従業員の日下野史弥容疑者(27)、田代翼容疑者(25)の3人だ。
この記事の画像(7枚)警察によると、3人は2023年、飲食代などを支払わせるために、客の20代と30代の女性に、デリバリーヘルス(無店舗型性風俗店)の仕事を紹介した疑いが持たれている。
宮城県内で、ホストクラブの関係者が職業安定法違反で逮捕されたのは、今回の事件が初めてだ。
店から2000万円の請求・・・巧妙な手口が
警察への取材で、悪質で巧妙な手口が見えてきた。
3人は、まず、客となる女性と知り合うため、いわゆる“キャッチ”ではなく、マッチングアプリを使っていたという。ホストと明かさずに知り合い、親密な関係を築いた後、店へと誘い出した3人は、女性に「売り上げが少なくて、このままでは転勤させられる」などとうそをついたという。
そもそも、この店に転勤というものはない。しかし、その話を信じた女性たちは、消費者金融で借金をするなどして、店で金を使ってしまっていたという。“恋愛感情”を利用し、女性たちの心をもてあそぶ、悪質な実態が…。
今回、被害者となった女性2人は、店から計2千万円の請求を受けていた。
警察の調べによると、女性たちは、実際にデリヘルで勤務していたことも確認されている。店から、営業マニュアルのようなものが見つかっており、“だませそうな女性”をターゲットにするような記載もあったという。警察は、店ぐるみで計画していたとみて調べを進めている。
「オンリーワン」「フォーエバー」で“はめる”
なぜ、ホストクラブにはまり、金をつぎ込むのか。
ホストクラブの手法や、女性客の心理に詳しい、臨床心理士の明星大学心理学部の藤井靖教授に聞いた。
藤井教授は、ホストクラブにはまってしまう女性の特徴として「心理的孤独」を指摘したうえで、コロナ禍によって、人との関係や温かさを求めて、ホストクラブにはまってしまう人が増えたと話す。
そして、ホストが女性に対し、SNSなどで頻繫に連絡したり、一緒に旅行したりすることで、関係性を錯覚させる。これが、ホストに“はまらせる”キーワードになっているという。
藤井教授は、こうした状況について、「心理的には【オンリーワン】と【フォーエバー】。唯一の存在であって、しかも、その関係が長く続きそうだという見通しがあると、女性はより心酔してしまう状態になりやすくなる」と指摘する。
マニュアル化される手口 地方都市にも
今回家宅捜索を受けた、仙台市の国分町にあるホストクラブでも、“営業マニュアル”のようなものが押収された。藤井教授は、悪質な手法が首都圏だけではなく、地方都市にも広がっていると指摘する。
藤井教授は、「情報商材として、マニュアルがインターネットで販売され、簡単に共有できる時代。東京の有名店などでホストを経験して、地方に持ち帰り独立して経営する場合もあり、人が動いている」と話す。
警察は捜査に支障が出るとして、逮捕された3人の認否を明らかにしていない。
(仙台放送)