東京ヤクルトスワローズ、村上宗隆(23)。
2022年、村上は史上最年少(当時22)での三冠王(打率.318、56本塁打、134打点)と日本選手最多のシーズン56本塁打を樹立し、チームはセ・リーグ連覇。新人王、本塁打王、日本一、さらに前年には東京オリンピック金メダルと、すべてを手に入れてきた。
![東京ヤクルトスワローズ 村上宗隆選手](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/0/6/700mw/img_0699281e1e6979d18f26200be7c31dde530821.jpg)
しかし、迎えた2023年。村上の成績は打率.256(リーグ20位)、31本塁打(リーグ2位)、打点84(リーグ4位)。前年の三冠王は無冠のままシーズンを終え、チームもセ・リーグ5位と低迷した。
そして今年。新シーズン始動にあたり、自主トレを開始した村上には特別な思いがあった。
![1月 自主トレで2024シーズンの決意を語った](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/e/d/700mw/img_ed4bf2f2e348dd6532663c5871d2688d636329.jpg)
「三冠王を、もう一度獲りたいなと思います」
スポーツニュース番組『S-PARK』内企画「土曜日のキャンバス」では、そんな村上の軌跡を、プロ入り前の貴重な資料や証言を交えながら追った。
恩師「自分との“約束”ができる子」
2024年1月、自主トレに臨む村上。バッティング練習では「ラスト」と言いながら、その後も何度も次を要求する姿があった。学生時代から、練習は納得するまでやってきた。
![練習は納得するまで](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/6/700mw/img_46bb5ff2270e11cc443607013528ab48722298.jpg)
彼が“向上心”に目覚めたのは中2の冬。九州選抜として「日本・台湾国際野球大会」のメンバーに選出された頃。
村上が所属していた熊本東リトルシニアの吉本幸夫監督は、当時を振り返る。
「彼がチームに入ってきた時は、周りと比べて“ちょっと上手い”ぐらいの子でした。当時はスイングもそこまで速くはなかった。でも(選抜メンバーに入って)日本や海外のすごいライバルたちに出会って、刺激を受けて戻ってきた。それがターニングポイントになったんだろうと思います。
![熊本東リトルシニア 吉本幸夫監督](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/7/700mw/img_1724ae1ad6624da398c93902426f9ca5344310.jpg)
彼はすごく負けず嫌いというか、自分が負けているなと思ったら、それ以上に努力して、上へ上へと上がっていける子だと思います。その努力で、打球も飛ぶようになった」
自分よりもすごい選手との出会いが、村上の「原点」となった。そして吉本監督は言葉を続ける。
![恩師が村上の原点を語る](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/3/700mw/img_43e4a6de83d56179283bb00d72b7bdff2471053.jpg)
「自分との“約束”ができる子ですね。高校に上がる前の半年間も、ほかの生徒が休んでいるなか、ムネ(宗隆)だけは毎週練習に来ていました。1人で走ったり、バッティングマシンにだんだん近づいて打ったり。普通は良い当たりを打ったら満足しますが、彼は自分なりにいろいろ工夫して練習していました」
![九州学院高校時代](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/7/700mw/img_a7ce3cfc4241a08993e1c547eb45bee92315661.jpg)
その芽生えた向上心は、九州学院高校1年の夏、村上に「公式戦初打席初ホームラン」という劇的なデビューをもたらす。
しかし、まだ荒削りだった彼が甲子園に行けたのは1年生の時の1度きり。高校最後の夏は県大会決勝で敗れた。敗戦後、村上は後輩たちに思いを伝えた。
![後輩へ思いを託した](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/3/700mw/img_13bce02aee6490a207ed9e773c0a256a2677658.jpg)
「俺は1回しか甲子園行ってないけど、お前らはまだチャンスがあるから、甲子園に2回行けよ」
プロ1年目の「初打席初ホームラン」
そんな向上心あふれる彼の姿を、プロ野球界はしっかりと見ていた。2017年、高校通算52本塁打を誇る村上は、ヤクルトからドラフト1位指名されたのだ。
ドラフト指名会見で村上はこう話した。
![ヤクルトからドラフト1位指名](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/c/7/700mw/img_c7053902e49097e6f51454a38bb5ba5f2762512.jpg)
「期待されているのはバッティングだと思うので、自分にできる最大の打撃を1試合1試合やっていって、チームに貢献できる打撃ができれば」
そう意気込んで迎えた2018年。
プロ1年目の初打席で、村上は高校デビューと同じく「初打席初ホームラン」を放った。
![2018年 初打席で初ホームラン](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/2/700mw/img_f24e87353b455a0189d79124a47525cb2716002.jpg)
向上心という名の才能。それが球史に残る記録を生む。
彼の才能がさらに花開いたのは、プロ5年目の2022年。
![2022年 史上最年少で三冠王 日本人最多本塁打](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/1/0/700mw/img_10d6e3051be39c7fa6679914728b86542855433.jpg)
史上最年少の三冠王、そして日本人シーズン最多の56号本塁打という2つの大記録を成し遂げたのだ。
村上が師と仰ぐヤクルト・青木宣親外野手(42)はこう語る。
![東京ヤクルトスワローズ 青木宣親選手](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/8/e/700mw/img_8e53749ae7413d108e51eb5cccd103662253380.jpg)
「村上選手は、いつでも打てる状況の形ができているし、そういうメンタルがあるんだと思います。(才能の開花は)本人が自分でたどり着いたものですね」
大谷翔平の「5階席ホームラン」に圧倒
強い上昇志向と努力が実を結び、「村神様」と呼ばれるようになった村上。
しかし、試練はプロ6年目、2023シーズンに訪れた。本塁打数(31本)ではリーグ2位につけたものの、打率は同20位の.256。シーズンが終わった後は、ほぼ全ての取材を断り、トレーニングに邁進した。
![2023年 無冠でシーズンを終え チームも低迷](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/e/700mw/img_fe1608bc072ffb90850d7fe370b7a4192715299.jpg)
その一方で、2023年は村上が「未来に進む力」を受け取った年でもあった。
それは、3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)での試合前の打撃練習。大谷翔平(29)が打席に入ると、日本代表・侍ジャパンの多くの選手がケージ裏に集まった。その中には、その前に特大アーチを放った村上の姿もあった。
大谷が放った打球は、バンテリンドーム ナゴヤの5階席へ。村上の飛距離を上回るすさまじい一発だった。村上は感嘆した。
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/2/f/700mw/img_2f5f30b5aec0015fc21f313079f47b162185212.jpg)
「初めて見ましたが、本当にすごかった。言葉が出ない。すべてにおいて見習うところばかり。少しでも追いつけるように頑張りたいです」
さらなる高みを目の当たりにし、村上の向上心に火がついた。
自分の感覚を信じてやっていく
しかし、WBC優勝後に迎えた2023シーズン前半、村上の打率は.242とブレーキがかかった。青木は後輩の状態について、こう分析する。
![師匠の青木は見ていた](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/4/b/700mw/img_4baddc01f964f4ef867bbe7e192e95982423327.jpg)
「打ち方は良くなかった。そうなった理由は、一つだけじゃなくて、いろんなものが複雑に混ざり合って…だと思うんです」
チームの打撃投手・七條祐樹氏も振り返る。
![東京ヤクルトスワローズ 七條祐樹打撃投手](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/f/0/700mw/img_f0d841857bb82af3acc488d96fb2be711977986.jpg)
「練習の中で、5階席を狙って、大谷選手より飛んだ・飛ばないとか本人も口にしていました。焦りみたいなのはあったんじゃないでしょうか」
村上自身はどう感じていたのだろう。
![「不安と焦りはあった」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/5/e/700mw/img_5e8fc76e9f0139407e85258ca2337794397989.jpg)
「不安とか焦りはあったと思います。(不振の原因は)難しいんですよね、これ。いろいろなところに手を出していくうちに、何が正解かわからなくなった」
上昇志向の強い彼は、もっと上を目指した。その挑戦に間違いはなかった。だからこそ村上は、2023年シーズン終了後にSNSでこんな一文を綴った。
『沈んだら沈んだ分だけ、高く飛べる気がします』
![「沈んだ分だけ高く飛ぶ」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/7/c/700mw/img_7c595bff14256277845fb85eaedeb5e11714993.jpg)
「挑戦するのは大切なことなので、新しいことに挑戦して、自分に合うやり方を見極めながら、自分の感覚を信じてやっていきたいです」
中学2年で芽生えた野球に対しての想いは、プロになった今でも、村上宗隆という選手の心にしっかりと宿っている。
2024シーズンを前に、村上は未来を向く。
![「自分の感覚を信じてやっていく」](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/a/8/700mw/img_a8653d565bdd40cbe8c775adc83a678c2807530.jpg)
「2023年の振り返りはもう終わった。今後自分がどうなっていきたいかを想像しながら練習しています。僕が三冠王を獲れば、チームが勝って優勝できると思うので、チームの先頭に立って頑張りたい」
![](https://fnn.ismcdn.jp/mwimgs/9/5/700mw/img_95d22b0ff3d131956bb8ae869ac45d323059787.jpg)
『三冠王を、もう一度獲りたい』
その言葉通り、村上宗隆はこれからも向上心に燃え続けることだろう。
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1月27日(土)24時35分から
1月28日(日)23時15分から
フジテレビ系列で放送
27日(土)の『S-PARK』では、女子マラソン・前田穂南(ほなみ)を特集。パリ五輪への切符は残り1枠。28日の「大阪国際女子マラソン」が、最後の五輪挑戦の舞台となる。なぜ彼女は走り続けるのか?長年の密着取材で見えてきた理由に迫る。