1月30日から中国・上海で行われる四大陸フィギュアスケート選手権。

女子代表、三原舞依は右足首のケガを抱えながらも貫禄の演技を披露し、2023年12月の全日本選手権で5位に。

過去に2回優勝し、5度目の出場となる四大陸選手権への切符をつかんだ。

笑顔で滑り切ることで少しでも恩返しがしたい

12月21日。全日本選手権の会場に入ると、一番上の客席からリンクを見下ろすルーティンをいつも通り行った三原舞依。

観客席からリンクを眺める三原
観客席からリンクを眺める三原
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「またこの舞台に帰ってくることができて、うれしいなっていう思いが今はいっぱい」

昨季はGPファイナル初優勝、全日本では自己最高の2位で6年ぶりの世界選手権出場を果たすなどキャリアハイのシーズンとなった。

一方で今季は右足首のケガが悪化し、予定していた試合の欠場を余儀なくされた。昨季自己最多13試合出場から一転、11月末のGPシリーズNHK杯が初戦となった。

ショートで大きなガッツポーズを見せた三原(2023年全日本)
ショートで大きなガッツポーズを見せた三原(2023年全日本)

「なんとかします。大丈夫です」と力強く挑んだ9度目の全日本選手権。

ショートでは3つのジャンプを全て着氷。持前の豊かな表現力と集中力で滑り切り、4位と好発進。笑顔で演技を終えた。

ショートを終えた三原に話を聞くと、演技前、中野園子コーチから「“集中力の天才”だから、しめたらできる」と声をかけられて、リンクへと送り出してもらったという。

ショート前、リンクへ送り出してもらう三原(2023年全日本)
ショート前、リンクへ送り出してもらう三原(2023年全日本)

三原も「その言葉通り、ジャンプの前やスピン、ステップ、一つ一つ落ち着いてできて、2分50秒の中でゆっくり考えて滑ることができた」と振り返る。

そして演技を終えると「(中野コーチが)『よくやった』と言ってくださって。先生の笑顔がすごくうれしい」と三原もうれしそうにした。

演技前にコーチから「集中力の天才」

大会前、憧れの存在である先輩・浅田真央さんからのメッセージが励みになったと語っていた三原。

その浅田さんからエッジカバーなどプレゼントされたという。

憧れの浅田真央さんとのツーショット
憧れの浅田真央さんとのツーショット

「全日本に出発する前に真央ちゃんがたくさんのグッズと、おそろいの色のエッジカバーを送ってくださって、それも夢なのかなと思って」

浅田さんからプレゼントされたエッジカバー
浅田さんからプレゼントされたエッジカバー

「最初は飾っていたんですけど、『使ってね』と言ってくださって、試合ギリギリのリンクサイドまでエッジカバーをはめて。取るときには『ありがとうございます』という思いを込めて、今日もリンクに入ることができました」

すべてのジャンプを着氷させたフリー(2023年全日本)
すべてのジャンプを着氷させたフリー(2023年全日本)

続くフリーでは、NHK杯から構成を変更し勝負に挑んだ。

後半に組み込んだ3回転ループ+2回転トゥループ+2回転ループの3連続ジャンプを決め、すべてのジャンプを着氷。

フリーの演技後もガッツポーズが飛び出した(2023年全日本)
フリーの演技後もガッツポーズが飛び出した(2023年全日本)

演技後には大きなガッツポーズも飛び出した。

この日も中野コーチから「集中力の天才やから」という言葉を受けて、リンクへと向かった三原。

「集中力の天才」と声をかけリンクへ向かった三原(2023年全日本)
「集中力の天才」と声をかけリンクへ向かった三原(2023年全日本)

フリー前はショート以上に緊張していたようだが、「一番上のお客さままで届くように最後まで滑りきろうと思った」と話す。

演技後、観客に手を振る三原(2023年全日本)
演技後、観客に手を振る三原(2023年全日本)

「本当に夢なのかなと思う瞬間がここ数週間は多くて、こうしてスケートを続けられて毎日練習できて、当たり前のような日々が当たり前じゃないことを振り返って考えることもできた。みなさまがいてくださってこその三原舞依」

ショート・フリーともに笑顔で滑り切り、多くの声援の中で全日本を終えた。

今できることは全て出し切れた

結果は総合5位。自身5度目となる四大陸選手権への出場権を勝ち取った。

「これ以上のショートもフリーも今はできないかなと思うので、また次の試合に向けてしっかり練習してレベルアップできるようにしたい」

全日本から一夜明け、三原はこう振り返った。

一夜明けて異例のシーズンを振り返る三原
一夜明けて異例のシーズンを振り返る三原

11月が初戦となる異例のシーズンから戦った全日本については、「ベストを出しきれるところまで試合に持っていけるようになったのは、すごく成長した部分。ただ、まだまだ足りないところがたくさんある。

もっとトップアスリートを目指して上がっていこうと思ったら、どんな状況でも全力を出してパーフェクトに滑り切るっていうことが大切だと思う。今近くにいるかおちゃん(坂本花織)が日本一で、世界一。その姿を見ながら、少しでも近づけたら」とシーズン後半戦に向けて闘志を燃やす。

演技後、ハートマークを掲げる三原(2023年全日本)
演技後、ハートマークを掲げる三原(2023年全日本)

四大陸選手権は、三原がシニアに上がり初のチャンピオンシップスのタイトルを獲得した思い出のある大会だ。

「本当にたくさん出させていただいて、自分の中でもすごく思い出の強い大会だと思っています。もう一度行けることがすごくうれしくて、出るからにはしっかり今以上のものをできるように練習して、ベストを尽くして優勝を目指して頑張ります」

数々の試練を乗り越え、不屈の強さで“スケートができる喜び”を表現し続ける三原。

彼女にとって思い出深い四大陸選手権の舞台で、3度目の優勝を狙う。

この四大陸選手権には、男子は鍵山優真、初出場となる山本草太、佐藤駿、女子は去年に引き続き千葉百音、2022年の四大陸で優勝した三原舞依、2年連続の渡辺倫果。

ペアは久しぶりの実戦復帰となる、三浦璃来・木原龍一組、アイスダンスは2年連続4回目の出場の小松原美里・小松原尊組、初出場となる田中梓沙・西山真瑚組、吉田唄菜・森田真沙也組が出場する。

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班