38年ぶりの「アレ」を成し遂げた、阪神タイガースからドラフト3位指名を受けた仙台育英硬式野球部前キャプテン・山田脩也。2年連続で甲子園決勝の舞台を経験した「甲子園の申し子」が、憧れのプロの世界に飛び込む。そんな山田が春季キャンプ直前、見据える大きな野望を語った。

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「職業」としての野球

2024年1月3日。山田の姿は故郷宮城でなく、去年から両親が暮らすさいたま市にあった。近所の小さな神社を訪れ、ケガすることなくプロ生活1年目を過ごせるよう祈った。

「これまでの部活動と違って職業として野球をやるので、その難しさもあると思うし、結果が全ての世界。その部分としっかり向き合ってやっていくことがいかに難しいか、いろいろ見ているとわかる。まずはしっかりプロの環境に慣れて、早く一軍で活躍できるよう頑張っていきたい」

仙台育英での現役時代は常に丸刈り。甲子園決勝後から伸ばし始めたという髪の毛はすっかり伸び、年末に縮毛矯正をかけたと笑顔で話す。18歳の青年の素顔は、日本の夏を2年連続で沸かせた雄姿からは想像できない、あどけない若者そのものだった。

2年連続決勝へ「甲子園の申し子」

この日、中学生以来だという父・浩二さんからのノックを受けた山田。自身の原点に立ち返っていた。

山田選手の父・浩二さん
山田選手の父・浩二さん

6歳年上の兄の背中を追い、5歳の時に野球を始めた山田。
すぐさま頭角を現し、小学生の時には世代別日本代表に選出。

小学生時代の山田 侍ジャパンU12代表にも名を連ねた
小学生時代の山田 侍ジャパンU12代表にも名を連ねた

甲子園に春夏3度、計14試合出場した山田。2年の夏に東北勢初の甲子園優勝に貢献。みちのくの悲願「深紅の大優勝旗の白河の関越え」を果たし、3年の夏には、キャプテンとしてチームを2年連続甲子園決勝の舞台に導いた。

「甲子園の申し子」確かな成長

そんな山田の甲子園でのベストゲームは、3年夏3回戦の履正社戦。「負けたら一生後悔すると思った」と当時を振り返る。

2回、2年生・鈴木の2ランで先制も、直後に同点とされ、続く3回に逆転を許した仙台育英。それでも、4回に1番・橋本のタイムリーで再び同点に。しびれる展開が続く中、6回にはエース・髙橋も登場し好投。同点のまま試合は終盤に差し掛かっていた。

そんな中、山田はチームを鼓舞した。

この試合負けたら絶対後悔すると思うから、もう1回気を引き締めてやっていこう

すると8回、仙台育英は5番・尾形のスクイズで勝ち越しに成功。チームはそのまま逃げ切り、最後は山田が冷静に併殺を完成させて4対3で競り勝った。

甲子園での数々の激戦を経て身に着けた、「第六感」ともいえる試合の流れを読む力。仙台育英で過ごした3年間で、山田は確かに大きな成長を遂げていた。

2年連続甲子園決勝の舞台に進んだ
2年連続甲子園決勝の舞台に進んだ

そんな山田をドラフトで指名したのは、甲子園球場をホームグラウンドとする阪神タイガース。縦じまのユニフォームに袖を通すのは、小中学生時代以来だ。

「甲子園の申し子」は、運命に引き寄せられるかのように、子供のころからの夢だったプロ野球選手としての生活を、縁の地でスタートさせることになった。

武器は「守備力」アピールできるか

山田の一番の武器は「守備力」。山田を3年間指導し、成長を見守ってきた須江航監督も「フットワークの良さは、大学生、社会人まで含めても山田がナンバーワン」「野球で求められるスピード感を持った選手」だとポテンシャルを評価。

仙台育英・硬式野球部 須江航監督
仙台育英・硬式野球部 須江航監督

山田も「守備力をどれだけアピールするかが自分の目標。プロに入ってからも技術的には伸びると思うので、色々な人から話を聞いてレベルアップできるように頑張っていきたい」と絶対の自信を見せる。

ドラフト指名後、プロでの生活に向けて調整を続けてきた山田。重点的に筋力トレーニングに励んできた。厳しい世界で戦い抜く体を作るため、最も意識したのが「下半身強化」だ。

「ハムストリングス(もも裏)を鍛えておけば、パフォーマンスは上がってくる。上半身のトレーニングをし過ぎると、投げられなくなるのでほどほどに…。今はしっかり体を作って、スピードを落とさないようにやっています。技術面はチームに入ってからでも学べる。しっかり筋肉をつけながら自分のベストな体にもっていきたい」

謙虚な姿勢の裏にある野望

地道なトレーニングを続けた結果、体重は4キロ増え、その姿はよりたくましくなった。一方で、今シーズンの目標を聞くと、山田は「プロ選手としての土台作り」「いろいろなことに慣れていきたい」などと話すに留まる。そんな謙虚な姿勢な山田だが、じつは大きな野望がある。

「2年の甲子園で優勝した夏が終わってから、同世代でナンバーワンのプレーヤーになることが目標になりました。世代を代表するような選手、球界を代表する選手になりたい。そのためにまずは、いろいろなことに慣れて体をしっかり作る。焦らずにしっかり一つ一つ積み重ねて、1日1日を大切に過ごしていきたい。成長した部分が1つでも2つでも自分で言えるような、やり切った1年にしたいです」

幼いころからの夢のスタート地点に立った「甲子園の申し子」。厳しいポジション争いを勝ち抜き、再びその地で輝く姿を見せてくれることを期待したい。

(仙台放送)