春のセンバツに長崎からは2校が出場。21世紀枠で選出されたのは長崎西だ。県内屈指の公立進学校が、75年ぶりの甲子園で「校歌斉唱」の悲願に挑む。グラウンドでの練習は1時間半、マネージャーたちの見えない努力―その全てが、一つの夢へと収束しようとしている。
「1点を確実に取る」練習
3月上旬、長崎西野球部の選手たちが力を入れていたのは「バントの練習」だ。
「強豪ぞろいのセンバツで勝利するには、1点を確実に取る力が必要」と、小技を磨いていた。
主将の桑原直太郎選手(2年)は「甲子園まで時間がないので、ひとつひとつの練習に一球一球こだわってやっている」と話す。
チームの主砲、細波慶吾選手(2年)も「大きいのを狙うのではなくつなぐ意識を持っている。もし打てなくても、自分の一打席がチームの勝利につながる一打席になるよう頑張りたい」と力を込めた。
待ち時間もテスト対策…「文武両道」
長崎西は、2025年秋の長崎県大会でエース・熊投手を中心に堅い守りと隙がない野球で準優勝。その後の九州大会でもベスト8の好成績を収めた。
東京大学など難関大学への進学者を数多く輩出してきた県内屈指の公立進学校だ。文武両道の姿勢が評価され、21世紀枠に選出される理由の一つとなった。
センバツ出場校の発表当日も、細波選手は世界史のテスト対策をしながら発表の瞬間を待った。「“野球と勉強のどちらも”はなかなか難しいが、両立が西高のひとつの目標なので、みんなで勉強にも力を注ごうと励ましあっている」と話す。
大黒柱は“10人のマネージャー”
グラウンドでの練習は1日わずか1時間半ほどだ。学校の方針もあり、テスト期間中は2週間以上部活動を休止して勉学に集中することがある。
練習時間が限られるなか、チームの強化に大きく貢献しているのがマネージャーの存在だ。
チーフマネージャーの山口陽大さん(2年)は、ピッチャーの投球動作の解析に使えたらと動画撮影に力を入れている。
撮影や解析にとどまらず、練習用のアプリをAIを使って独自に開発した。アプリを使うことで、バッターが得意なコースや球種を可視化して、質の向上につなげている。
山口さんは「マネージャーの一番の目的は“選手がちゃんとプレーできる環境を作ること”。選手が迷いなくプレーできるように分析や環境づくりだと思っている」と話す。
マネージャーの数は他の学校と比べても多く10人だ。広報や選手の栄養管理など、それぞれに自分の得意分野や将来の目標にあわせた役割でチームを支えている。
エースの熊寛生投手(2年)は「マネージャーは自分にとってもチームにとっても大黒柱。色々な面で助けてもらっているし、サポートしてもらったりそこには感謝している」と話す。
「オリジナル応援歌」で選手に勇気を
甲子園のアルプススタンドでは、長崎西と長崎東の吹奏楽部がタッグを組んで演奏することになっている。
今回のセンバツの出場のために、「オリジナル応援歌」が完成した。作曲したのはマネージャーの松尾ねねさん(2年)だ。
応援歌は「西高さんば」。松尾さんは「明るい曲調で、歌詞に“もってこーい”など、長崎らしさや西高らしさを入れているのが特徴だ」と説明する。
合同練習で初めて音を合わせた瞬間、喜びがあふれたという。「思っていた以上に迫力や盛り上がり方がすごかった」と目を輝かせた。
「甲子園の空気が全部染まるようなすばらしい応援歌にして選手に勇気を与えられたら」と願いを込める。
「Hランプ」と校歌斉唱で「全国の高校に勇気を」
長崎西の初戦は20日、第1試合で近畿代表の滋賀学園と対戦する。歴代の優勝校がひしめく近畿大会で4強入りした強豪だ。
前回、甲子園に出場した45年前の夏、長崎西はノーヒットノーランで初戦で敗れた。甲子園での「Hランプ」と校歌斉唱は、OBを含めた野球部の悲願だ。
エースの熊投手は「長年紡いできたチーム目標の甲子園で校歌斉唱を自分たちができるように、自分のできるピッチングをしてチームの勝利に貢献して、みんなで校歌斉唱したい」と誓う。
主将の桑原選手は「自分たちのように文武両道をしながら甲子園を目指している学校があると思うので、自分たちが活躍して、勉強している学校でも強豪校と渡り合えると全国の高校に勇気を与えたい」と、力強く語った。
75年分の思いを胸に、長崎西がいよいよ聖地に立つ。
(テレビ長崎)
