最大震度7を観測した能登半島地震は15日で発生からちょうど2週間となった。現地には全国から多数の警察や消防、自治体職員、医療従事者などが派遣され、捜索や被災者の支援にあたっている。
現場に入れず活動は困難を極める
静岡県では発災以降、緊急消防援助隊や災害派遣医療チーム（DMAT）、災害マネジメント支援チームといった人的支援、水・ブルーシートなどの物的支援の展開のほか、県営住宅のうち47戸を被災者に一定期間無償で提供することを表明している。
こうした中、被災地での任務を終えた消防や自治体職員などが順次それぞれの所属先へと戻り、活動報告を行っている。
このうち、県の緊急消防援助隊の第1次隊として石川県珠洲市に入った時の様子を島田市・染谷絹代 市長に報告したのが島田消防署の藤原誠二郎 消防司令だ。
これまで東日本大震災（2011年）や熱海市の土石流災害（2021年）でも災害派遣を経験している藤原消防司令だが、「ここまで悪路や土砂崩れで現場に到着出来ないというのは初めてだった」という。
さらに、「多くの建物が倒壊している中で、どこに要救助者がいるのか情報がはっきりしない部分」があったそうで、現場への到着が困難を極めたり、情報が錯綜したりする中で「我々がもう少し早く現場に到着すれば助けられる命があったのではないかと後悔している」と視線を落とした。
ただ、そんな隊員にとっても被災者にとっても厳しい状況の中でも「手を振ってくれたり、頭を下げてくれたりする人がいたので、非常に力になった」と振り返る。
南海トラフ巨大地震が心配される静岡県。藤原消防司令が痛感したのは静岡が被災した際の体制構築の必要性だ。
それは珠洲消防署を訪れた時のことだった。
藤原消防司令によれば「本来であれば『この被災地に行ってもらいたい』という資料を渡されるが、なかなかそういうことも困難」な状況だったとのことで、「（南海トラフ巨大地震の際に）静岡県は全国から応援してもらう受援側に当たる。まず人と資機材を被災地にいち早く届けることが必要」と口にした。
各々の現場で感じた揺れや津波の威力
一方、第2次隊として津波の被害が大きかった石川県宝立町で活動したのが沼津北消防署の水口忍 消防司令だ。
現地で感じたのは津波の威力の凄まじさ。残された爪痕からは腰の高さほどまで津波が押し寄せていたことを確認できたといい、「町一面が壊滅的な状態で衝撃的だった」と驚きの表情を浮かべた。
また、静岡県庁から石川県穴水町に派遣され、町の職員と共に人的支援や物的支援のニーズを把握し石川県庁との調整を行う役割を担った板坂孝司さんは「大きな余震が起きると、仮復旧したところがさらに被害を受けることもあり、通行できる道路が日々変わるような状態」だったことを明らかに。
3日に現地へ支援に入って以降も停電や断水が続き、食糧は静岡から持ち込んだ非常食と水だけという過酷な状況だったが、ある時、息を切らしながら町役場の階段を上がってくる女性に声をかけると、女性は自らを鼓舞するようにこんな一言をつぶやいたという。
「頑張らなきゃね」
そして、女性が今回の能登半島地震で息子を亡くしていた事実を知った板坂さん。その時、それまで以上に「頑張らないといけない」と奮起したそうだ。
下水道施設の被害状況を調べるために沼津市から中能登町に派遣された下水道整備課の鈴木優貴さんはマンホールに異常はないかなどの調査や計測を実施したが、「最大30cmほどマンホールが浮き、管などすべて使えない状態になっていた。かなりズレてしまっていて、車が通れないレベルのところもあった」と揺れの威力の大きさを証言。
さらに、被災家屋の被害状況や危険度を判定するため七尾市に派遣された沼津市まちづくり指導課の鈴木秀典さんは「降雪にともない瓦が時々落ちてくる場面もあった。比較的、築年数が古い家の被害が大きいように思う」と述べた上で、来るべき時に備え「避難方法の周知だけでなく、耐震化の重要性を伝えることが大切だと感じた」と頼重秀一 市長に報告した。
被災地を目の当たりにした消防隊員や自治体職員などの報告を聞いて、県内の行政、そして私たちは何を考え、どう備えるべきなのか。災害派遣を終えた一人一人の声や報告を無駄にしてはならない。
（テレビ静岡）
