公共交通機関の利用で、面倒なのが運賃の支払い。小銭の用意がなくて手間取ったり、定期券を忘れてしまったというのはよくある話だが、そんな悩みから解放されるかもしれない。

顔認証で支払いできるシステムを、熊本市が路面電車に試験導入しているというのだ。

顔認証は運転席付近で行う(提供:熊本市交通局)
顔認証は運転席付近で行う(提供:熊本市交通局)
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大手商社「丸紅」が運営する顔認証システムを採用したもので、乗客が降車時、運転席付近に搭載したタブレット端末のカメラに顔を向けると(1)定期券の確認(2)都度払いでの支払いを自動で行うというもの。2秒以内に99.46%の精度で、本人かどうかを判別するという。

顔認証の成功画面(左)とエラー画面(提供:熊本市交通局)
顔認証の成功画面(左)とエラー画面(提供:熊本市交通局)

利用には顔写真の事前登録が必要で、(1)はモバイル定期券アプリ「QUICK RIDE」を通じて(2)はプリペイド型アプリ「BANKIT」を通じて、手続きや登録を進められるという。

実証実験を行っている路面電車(提供:熊本市交通局)
実証実験を行っている路面電車(提供:熊本市交通局)

熊本市は市内を走行する路面電車43編成のうち、10編成にこのシステムを試験導入。車両に目印となるステッカーを貼り、2023年12月20日~2024年3月31日にかけて、実証実験を行っている。日本初の試みというが、どんな効果を期待しているのだろう。熊本市交通局の担当者に聞いた。

「手ぶら」「顔パス」で乗車できる

――これまでの熊本市電の客層、主な決済手段は?

市民・県民の方々の通勤・通学・お出かけなどの移動手段としてご利用いただくことが多いですが、観光客の方々にもご利用いただいております。運賃の支払い方法は、現金、交通系ICカード、クレジットカードのタッチ決済、二次元コード決済などがあり、一番利用者が多いのは交通系ICカードです。


――顔認証での支払いを試験導入したのはなぜ?

これまでだと定期券や運賃での支払いには、現金やICカード、スマートフォンなどを取り出す必要がありました。顔認証では「手ぶら」「顔パス」で乗車が可能になるので、利便性向上やスムーズな乗降につながるものと期待し、その検証のために実証実験を実施しております。

実際の顔認証の様子(提供:熊本市交通局)
実際の顔認証の様子(提供:熊本市交通局)

――実際の支払いはどのように進む?

定期券と都度払いどちらをご利用される場合も、車内の運転席付近に設置しているタブレットに顔をかざして認証されると降車できます。都度払いでは「BANKIT」にチャージされた金額から、運賃として180円が支払われます。熊本市電は全線均一運賃ですので、計算は不要です。

顔認証はマスクをつけてもOK

――顔認証でエラーが出た場合はどうなる?

定期券を活用した顔認証の場合は、認証エラーが出ても定期券を提示いただければ降車いただけます。顔認証決済による運賃支払いの場合は、別の方法でお支払いいただくことになります。

帽子やサングラスは外す必要がある(画像はイメージ)
帽子やサングラスは外す必要がある(画像はイメージ)

――顔はどのくらい露出する必要はある?

マスクを着用していても問題なく認証されます。ただ、帽子やサングラスを着用していると認証されない可能性が高いので、(顔認証の際は)外していただくことを推奨しています。


――顔認証の写真を取り直すことはできる?

BANKIT(都度払い)でご登録いただいた方は撮り直しが可能です。QUICK RIDE(定期券)でご登録いただいた方は定期の通用期間中は撮り直しできません。次回購入時は新たにご登録いただけます。

乗客のスムーズな乗降につなげたい

――実証実験の狙いは?乗客の反応は?

問題なく運用が可能か確認したうえで、スムーズな乗降への効果、利用者のニーズがあるか否かを確認したいと考えております。現在のところ、特段の問題はございません。まだ利用者が少ないことから、実証実験で感触や乗客の反応を確認したいと考えております。


――試験導入から変化を感じたことはある?

現在のところ、変化はございません。

運賃の支払いには時間がかかりがち(画像はイメージ)
運賃の支払いには時間がかかりがち(画像はイメージ)

――顔認証のシステムに期待する影響は?

運賃の支払いについては、現金だと両替に時間がかかります。モバイル乗車券ではスマホを取り出し事前に画面を表示させておく必要がありますし、二次元コード決済では、カメラにコードのピントを合わせる必要があります。いずれも動作に時間がかかる場合があります。顔認証によって、利便性向上による利用者満足度の向上と、乗客のスムーズな乗降につながることを期待しております。



担当者は顔認証システムの今後について「実証実験の結果を検証したうえで判断したい」としていた。もしかすると近い将来、顔パスでの支払いが普及するかもしれない。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。