西九州新幹線は2022年秋に開業したものの、「武雄温泉-新鳥栖」間の整備方法は何も決まっていない。長崎ルートをめぐる佐賀県と国の協議は膠着状態で、“日本一短い新幹線”のレールはいまだ途切れたままだ。

途切れたままの新幹線「高架」

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武雄温泉駅から1キロほど離れたところにあるJRの高架。見上げると線路が途切れたままになっている。整備方式が決まっていない九州新幹線長崎ルートの現状を示す場所だ。

2022年9月に開業した西九州新幹線。フル規格で整備されたのは武雄温泉駅から長崎駅までの約66㎞。“日本一短い新幹線”が誕生した。

「佐賀駅ルート」vs「南回りルート」

開業から1年以上が経つが、武雄温泉駅から新鳥栖駅までは、整備方法もルートも決まっていない。ルートをめぐり佐賀県と国やJR九州などの考えが大きく食い違っているからだ。

佐賀県の山口祥義知事が示すのは、佐賀空港の周辺を通る“南回りルート”。山口知事は「佐賀空港の活用や有明海沿岸道路などとの連携を含めて大きな視点による全く新たな発想での議論が必要。十分協議する価値があると思うし協議する準備は整えている」と主張する。

一方、国やJR九州などは“佐賀駅を通るルート”がベストと主張している。

JR九州 古宮洋二社長:新鳥栖から武雄温泉の未開通区間の議論が深まっていくのはいいと思っている。佐賀駅を通るルートが佐賀県民、佐賀市民にとって一番利用しやすいルートになるのではないか

九州新幹線長崎ルートの未整備区間について「佐賀駅ルート」を主張するJR九州や国。
これに対し、佐賀空港周辺を通る「南回りルート」の議論の必要性を主張する佐賀県の山口知事。
2023年12月の佐賀県議会でも論戦が展開された。

自民・木原奉文県議:
佐賀駅の利便性や財政負担は南回りルートの方こそ失うものが大きい。地域振興やまちづくりの観点からも佐賀駅ルートこそが県民の利益に最もつながり佐賀県、佐賀市が発展する

山口知事:
佐賀駅を通るルートのフル規格は失うものがあまりにも大きく、未来への展望が描けない。南回りルートは佐賀県や九州全体の将来展望を描けるのであれば、議論していく価値はあるのではないか

与党検討委「議論の加速を」

こうした中、12月6日、約10か月ぶりに整備方針を議論する与党検討委員会が開かれた。与党検討委員会の森山裕委員長は「佐賀県の理解を頂いてできるだけ早く実現をすることが大事だと考えている」と述べ、国と佐賀県の年内協議を要請、“議論の加速”を促した。

その森山委員長が12月15日、サガテレビの単独インタビューに応じ、九州新幹線長崎ルートの議論について語った。

Q、ルートをめぐる議論の現状について
与党検討委員会 森山裕委員長:

西九州ルートがどうなるか見極めをしないと、全体の新幹線の計画に迷惑をかける時期にきている

Q、“南回りルート”の議論について
空港直結のルートは地盤的に非常に厳しいということだ。安全性に不安があることはしてはいけない。(空港直結ではない)“ほかのルート”が考えられるのかどうかというのが(国と県の)協議の中心だと思う

Q.いまどのルートで議論するのが、一番進捗が期待できる?
そりゃ一番早いのは佐賀駅ルートだと思う。しかし「佐賀駅ルートではどうしてもだめだ」という話も聞こえてきますし、そこは調整をしてもらうということだと思う

国交大臣「ルート限定せず議論を」

一方、斉藤国土交通大臣は12月8日、閣議後の記者会見で、九州新幹線長崎ルートの新鳥栖-武雄温泉間についてルートを限定せず議論を進める考えを示した。

斉藤鉄夫 国土交通大臣:
このルートが非常に優先するとか、このルートを優先して検討したいとか、まだそういう段階ではない。今どのようなルートが可能なのか、両者の認識を一致させるべく協議が進んでいる。全ての選択肢を上げながら検討している

知事「フル規格」に難色

議論を膠着状態にしているのはルートの問題だけではない。
新鳥栖-武雄温泉間を「フル規格」で整備する場合、佐賀県の負担が1400億円程度になるとして、山口知事は9月20日 、県議会で難色を示した。

山口知事:
県が直接負担する真水で1400億円程度になると思う。そのようなことをして本当にそこまでやるのか、という問題提起をさせてもらう

佐賀駅を通るルートでのフル規格化について山口知事は10月6日の定例会見でも、「長崎県の2倍以上の金額を出して便益があるのはどちらなのか。事態の打開には国の工夫が必要」と改めて否定的な考えを示した。

着地点めざす協議の行方は…

新幹線長崎ルート「新鳥栖-武雄温泉」間の整備方式をめぐる佐賀県と国の話し合いは2023年2月を最後に途絶えたままだ。
そうした中、2023年12月28日に国と県の幹部による協議が開かれることになった。着地点を見出すことができるのか、話し合いの行方が注目される。

(サガテレビ)

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