北朝鮮の金正恩総書記と共に行動する姿が盛んに伝えられている愛娘、ジュエ氏に「朝鮮の新星女将軍」との新たな称号が与えられた。

これには一体どのような意味が隠されているのか。甲南女子大学の鴨下ひろみ准教授に聞いた。

“特別な地位”を内外に示唆

ーーなぜこのような称号を付けた?

北朝鮮で「星」とか「太陽」というのは、これまでも最高指導者の尊称として使われてきました。

今回娘のキム・ジュエ氏にそれが使われたということが事実だとすると、ジュエ氏が後継者に非常に近い、もしくは特別な地位にいるということを内外に示す狙いがあったのではないかというふうに見ることができます。

金正恩総書記の愛娘、ジュエ氏とみられる少女
金正恩総書記の愛娘、ジュエ氏とみられる少女
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ーー金総書記の後継者はジュエ氏ということ?

もちろんまだ断定はできませんが、これまで第1子は息子と言われてきたのが、ここにきてはっきりしなくなってきた部分があります。

韓国の情報機関にあたる国家情報院(国情院)は、第1子は息子で、ジュエ氏は2番目の子どもと見ていたのですが、これがそうではないのではないかという話になってきたため、ジュエ氏が第1子であれば、後継者になる可能性が非常に高いということになります。

娘の露出が増える中、長男は…

アメリカ政府系の「ラジオ自由アジア(RFA)」は、平壌の消息筋の話として、朝鮮労働党の幹部らを対象にした講演で、「宇宙強国時代の未来は“朝鮮の新星女将軍”によって今後さらに輝くだろう」と軍事偵察衛星打ち上げを祝ったと伝えた。

では、長男の存在はどうなっているのか。

ーー長男の存在は今どうなっている?

そもそも長男については、誰かが会ったり、見たという、確認できたという実態はありません。

妻である李雪主(リ・ソルジュ)さんが妊娠をしてしばらく姿を見せず、子どもが生まれたと見られていましたが、その子どもが男の子なのかどうかははっきりとしたファクトがあったわけではないと、ここにきて言われ始めました。

韓国の国情院も、「第1子は息子」とははっきりと言えないと方向転換をしたのです。

それでジュエ氏に注目が集まっている状況だと思います。

ーー金正恩氏も若いころ、同じような呼称を与えられていた?

金正恩総書記の場合は、全て確認できているわけではありませんが、「星」とか「太陽」といった呼称は、表立っては使われていなかったと思います。

ただ、北朝鮮内部で初めて後継者として内定した時には、 「パルコルム(歩み)」(「足取り」とも呼ばれる)という金正恩氏を称える歌が出てきて、その中で「金大将」などといった呼称で呼ばれていました。

よって、今回も「新星」や「女将軍」という言葉が使われているのであれば、これは後継者に近いと見ることができるのだと思います。