京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で、11月27日から「量刑=刑の重さ」に関する審理が始まった。青葉被告は事件について「浅はかだった。後悔が山ほど残る事件になった」と振り返った。

京都アニメーション放火殺人事件の裁判。青葉真司被告(45)は4年前、京都アニメーションの第1スタジオに放火し、36人を殺害した罪などに問われている。 27日に17回目を迎えた裁判では、遺族らによる被告人質問や、被害感情についての意見陳述が行われる、「量刑の審理」が始まった。

まず「事実関係」、続いて「責任能力」

今回の裁判は大きく3つのテーマに分けて審理されてきた。

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まず初公判からの12回は「事件の事実関係」を中心に、犯行に至る経緯などが審理。青葉被告は事件を起こした動機について7年前に京アニの小説コンクールに作品を応募するも落選したことをあげ、「京アニに小説のアイデアを盗まれた」と主張していた。

青葉真司被告 9月14日:
原稿落としたり、内容パクったり、一番根にもつ部分が大きかった

10月23日からは最大にして唯一の争点となる「責任能力」の審理が始まり、検察側と弁護側、双方の主張が激しく対立。検察側は「犯行は被告のパーソナリティーによるものだ」として完全責任能力があったと主張。一方で弁護側は被告が重度の妄想性障害だったとして、責任能力はなかったと主張した。

そして3つの目のテーマ「量刑」に関する審理始まる

そして27日に始まった「量刑」の審理。検察側は裁判の冒頭、「筋違いの恨みによる、類例なき凄惨な大量放火殺人事件だ」と主張した。 一方で弁護側は、「検察側は被告に死刑を求刑すると思う。その選択は重大な判断で、死刑がなぜ人を殺すことなのに認められているか考えながら審理してほしい」などと裁判員らに訴えた。 その後行われた被告人質問で青葉被告の口からは…

弁護側:
前半の裁判を経験して、思ったことがあれば教えてください

青葉真司被告:
被害者一人一人に顔があって生活があり、自分のように病院で苦しんでいる人、子どもがいるのに亡くなった人がいるのを痛感しました

そして、事件を起こしたことについて改めて問われると…

青葉真司被告:
浅はかだったと思っています。後悔が山ほど残る事件になったと思っています

被告が語った「後悔」という言葉。検察側がこの言葉の真意を尋ねると…

検察側:
何を後悔していますか?

青葉真司被告:
恨みがあり憎しみがあったとして、「やってやった」「ざまあみろ」というのが残る訳ではなく、他に方法がなかったのかと思うので、そういう部分では後悔しています

妻を亡くした男性は強い思いをもって質問するが…

事件で亡くなった京アニを代表するアニメーター・寺脇晶子さんの夫も強い思いをもって被告人質問に臨んでいた。

寺脇(池田)晶子さんの夫:
もう一度被害の大きさっていうものを考えてほしいかなって。(自分の)これから、量刑についてもどう思っているのか、どうしたいと思っているのかも聞かなあかんなと思っています

しかし晶子さんの夫が質問を始めると…

青葉真司被告:
のちのちに答えさせていただくので、答えるのを差し控えたいと思います

遺族らによる意見陳述が終わった後に答えるとして、遺族の問いかけには応じなかった。

取材を続ける記者が見た青葉被告

京都地方裁判所前から、裁判を継続して取材している記者の報告は…

犬伏凜太郎記者:
今日印象的だったのが、青葉被告が「反省」や「後悔」という言葉を口にしたことです。これまでの裁判で、「これほど被害が大きくなるとは思わなかった」などと発言する場面はありましたが、はっきり「後悔」「反省」という言葉を発することはありませんでした。今日は「事件で子供がいるのに亡くなった人がいるのを痛感した」などと話していて、裁判が進む中で青葉被告も心境の変化があるのではないかと感じました。しかし、事件発生の年月日を問われると、「令和元年の7月19日です」と一日違う日を答えて「月命日に遺族が思いをはせることを考えているのか」と検察側に問われる場面もありました。また、今日は遺族が青葉被告に直接質問する機会も予定されていました。遺族の一人、寺脇晶子さんの夫は今日を「一番重要な日」と話していました。晶子さんの夫はなぜ事件が起きてしまったのか、亡くなった晶子さんや一緒に暮らす息子さんに対して、自分の耳で聞いて報告する責任があると質問に臨みました。しかし、青葉被告は「後ほど答える」という返答を繰り返しました。その理由について裁判長から問われると「被害者感情の立証が終わってから答えるのが筋だと思います」と述べました

ーー遺族も強い気持ちを持って臨んだということですが、青葉被告の答えがなかった時、遺族はどのような様子だったのでしょうか?

犬伏凜太郎記者:
質問の中で晶子さんの夫は一度大きくふっと息をはき、顔を少し赤める場面も見られました。少し複雑な感情を抱えているのではないかというふうに感じました

12月7日には、最終の論告と弁論が行われる予定だ。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月27日放送)

関西テレビ
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