28日から全国145の薬局で、緊急避妊薬の試験的な販売が始まった。避妊の失敗や、性暴力などによる望まない妊娠を防ぐために使われることが期待される一方、世界と比べると販売価格が高く、18歳未満の人は保護者の同意が必要で、本当に必要な人、急を要する人に届くのかといった課題も指摘されている。
緊急避妊薬が試験販売開始
望まない妊娠を防ぐための「緊急避妊薬」について、医師の処方箋なしで販売できるか調査するための試験的な販売が28日から始まった。
「緊急避妊薬」は、性行為から72時間以内に服用することで、妊娠を8割程度防ぐことができるとされていて、現在は医師の処方箋が必要だ。
試験販売は厚生労働省から業務委託を受けた調査研究として、日本薬剤師会が全国145の薬局で実施する。
価格は、7000～9000円程度だ。
OGP薬局荒川店・鈴木怜那薬剤師は「自分自身が考えて、行動が取れるような仕組みになればいいと思う」と話す。
対象は、調査研究への参加に同意した16歳以上で、18歳未満は保護者の同伴と同意が必要となる。緊急避妊薬は避妊の失敗や、性暴力などによる望まない妊娠を防ぐために使われることが期待されている。
緊急避妊薬には、どんな効果があるのだろうか。
性交渉後、24時間以内の内服で95%、25～48時間以内で85%、49～72時間以内で58%の確率で妊娠を阻止することができるとされている。
つまり、なるべく早く内服することで、より高い避妊効果が期待できる。
今回の販売方法だが、販売する薬局にもさまざまな条件がある。
「研修を受けた薬剤師がいる」「夜間や土日、祝日も対応が可能」「近隣の産婦人科と服薬後に連携できる」「個室があるなどプライバシーを確保できる」など、これらの条件全てを満たしたところを地域ごとに選定したという。
また、薬を購入後、服用したことを薬剤師が確認できるように、薬剤師の目の前で薬を服用しなければいけないことも条件に入っている。
有意義である一方、本当に必要な人、急を要する人に届くのかといった課題も残る。
例えば、どの薬局で購入できるのか日本薬剤師会のホームページから確認することができるのだが、見づらい。
また、今回の試験販売での販売価格は7000～9000円という値段を想定しているが、諸外国の価格を見てみると、アメリカでは約4200円～5300円、オーストラリアでは約1100円～4000円、ドイツでは約2200円、イギリスやフランスでは約900円と、日本より安価で手に入る。
産婦人科専門医で医学博士の稲葉加奈子さんによると、数が多く出回る薬ではないので、単価が高いのはやむを得ないとのことだが、問題は価格ではなく「全額自己負担」という点だという。
処方箋なしで薬局で緊急避妊薬を入手できる国は、世界で90カ国以上。
イギリスやフランスは、若年の望まない妊娠は「社会問題」だとして、医療機関に行けば若者は無料で緊急避妊薬を入手できる。また、学校などで配っている国もあり、親の同意が必要ないという国も増えているという。
一方、日本の今回の試験販売では、16歳以上18歳未満の人は保護者の同意が必要だ。
16歳から18歳という多感な時期に、親に相談するのはハードルが高い場合もありそうだ。さらに今回、16歳未満の人は必要でも緊急避妊薬を購入できない。稲葉さんは「16歳未満で必要な場合は、これまで通り産婦人科を受診してください」と話している。
さらに、稲葉さんは「本運用の際には年齢制限が撤廃されるのか」「金額のハードルもある中で、若者が緊急避妊薬が必要になる機会が減ることも大事」「並行して性教育がきちんと行われることも必要」という意見も述べた。
WHOの必須薬品リストに掲載
服用することで、頭痛や吐き気など、人によっては少し気持ち悪くなることがあるということだが、体に悪影響はないのだろうか。
緊急避妊薬はWHOの必須薬品リストという、安全で質も高く、効果の高い薬のリストに入っている。
必要最低限の安全な薬と言われていて、妊娠初期や妊娠していて間違って飲んでしまったとしても、胎児には影響ないとされている。
今後の見通しについて、稲葉さんは「試験運用は2024年の3月まで。試験運用において現実的に起こりうるトラブルが出てくるのであれば対策をとり、制限が多い形でなく現実に即した形でスムーズに本運用に移行してほしい」とした上で、「緊急避妊薬が、望まない妊娠を防ぐための第一歩であることは間違いない。あくまで、望まない妊娠してしまうかもしれないという不安に怯える女性から妊娠を防ぐ最後のとりでであり、男性側のモラルや責任も、しっかり問われるべき」と話す。
（「イット！」 11月28日放送より）
