長野県中野市で4人が殺害された事件。検察は11月16日、青木政憲被告(32)を殺人の罪で起訴した。被告は「ぼっちとばかにされていると思った」などと供述し、精神鑑定などを行う「鑑定留置」も実施したが、検察は「刑事責任は問える」と判断した。起訴を受けて遺族は「極刑をもって罪を償って欲しい」などとコメントしている。

「殺人の罪」で起訴

事件からおよそ半年。

青木政憲被告が11月16日、殺人の罪で起訴された。

起訴状などによると、中野市の農業・青木被告は2023年5月25日、自宅近くで散歩していた女性2人と駆け付けた警察官2人をナイフや猟銃で殺害した罪。

事件現場
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これまでの調べに対し、青木被告は女性2人を殺害した動機について「『ぼっち』とばかにされていると思った」などと供述している。

ただ、警察は一方的な思い込みの可能性があるとみていた。

移送される青木政憲被告(8月9日)
移送される青木政憲被告(8月9日)

刑事責任能力が問えると判断

このため、検察は2023年8月から3カ月間、医師などが精神鑑定を行い刑事責任能力があるかを判断する「鑑定留置」を実施。

11月8日に鑑定留置が終わり起訴するかどうか検察の判断が注目されていた。

そして、拘留満期の11月16日、検察は青木被告を殺人の罪で起訴。刑事責任が問えると判断した。

長野地検は「必要な捜査を行い証拠内容を検討した結果、殺人の罪で起訴した。具体的な主張や立証方法などは、裁判で明らかにする」とコメントしている。

これまでの経緯
これまでの経緯

鑑定留置中 自然の写真集を見て…

なお、接見していた担当弁護士によると青木被告は鑑定留置中、ツバキや山など自然の写真集を見て静かに過ごしていたという。

ただ、被害者やその遺族について質問しても何も答えなかったという。

今後は法廷の場に移る。法廷では改めて責任能力の有無なども争われる見通しだ。

青木政憲被告  長野中央警察署に移される(5月26日夜)
青木政憲被告  長野中央警察署に移される(5月26日夜)

遺族「極刑をもって罪を償って」

起訴を受けて殺害された女性2人の遺族がコメントを発表した。(全文掲載)

【村上さんの遺族のコメント】
5月25日の午後4時頃、大切な家族が突然、無惨な形で命を奪われました。 いつものように友人と楽しくウォーキングしていたところ、刃物を持った見知らぬ男にいきなり襲われました。 

何の罪もないのに、体を貫通するほどの強い力で、何度も何度も刺されました。 恐怖でたまらなかったことでしょう。怖くて苦しくて、どれだけ痛かったことか。 なぜ襲われなければならなかったのか?事情も分からないまま亡くなりました。 私たち遺族も、その状況を想像するだけで胸が張り裂けそうです。 

大切な家族を突然失い、私たちの生活は一変しました。こんな事になるなんて、考えたこともありませんでした。 

ムードメーカーの妻・母がいつも家族の中心にいる、そんな平凡で幸せな毎日が この先もずっと続くのだと当たり前に思っていたのに…

家族みんなで食卓を囲み笑い合うことも、生き生きと趣味を楽しむ姿を見ること も、あの笑顔に会うことも、もう叶いません。 

どんなに願っても、妻・母が私たちの元に帰って来ることは、もうありません。 

11月25日で事件から半年が経ちます。 

時間だけが無情に過ぎていく一方で、私たちの気持ちは一歩も前に進むことはなく、会いたくて、会いたくて、涙が溢れ止まらなくなることがあります。 

できることなら、事件前の平穏だったあの頃に戻りたい。 

せめて一度でもいいから会いたい。 

でも、もうそれも叶いません。 

私たち遺族の心の傷は癒えるどころか、大切な家族の命を奪った被告人への怒りや憎しみは増すばかりです。どんな言い訳を並べようと、絶対に許すことはできません。 

被告人には、極刑をもって罪を償って欲しい。大切な家族がもう戻ってこない以上、最大限の法律で裁いて欲しい。 

そして、二度とこの様な悲惨な事件が起こることのないよう、原因究明とともに裁判では被害者及び遺族の納得のいく判決を望みます。 

それが、せめてもの救いです。切に願います。 

令和5年11月16日 
村上幸枝 遺族一同

事件現場
事件現場

遺族「なぜ妻・母を殺害したのか」

【竹内さんの遺族のコメント全文】
事件から既に半年が経ち、やっと刑事裁判を開くことが決まりました。

妻・母は刃物で何か所も切られ、刺され、骨の一部が地面に落ちていたほど残忍な死を犯人から受けました。さらに立てこもり現場のすぐそばで倒れていた為、半日以上その場に晒されていたのは耐え難いことです。

裁判では何故妻・母を殺害したのか?何故妻・母の友人・村上幸枝さんを殺したのか?警察官の池内卓夫さん・玉井良樹さんが駆け付けた際、何故投降せずに殺害したのか?どんな考えだったのかそれを知りたい。そして事件の責任を取って欲しいです。

5月25日の事件発生時、いつもの散歩で出かける妻・母を見たのが最後でした。事件発生時、散歩から帰ってこず警察にその旨を伝えても一向に行方がわからず、眠れない夜を家族は過ごしました。

翌早朝、警察から妻・母に似た人物を引き上げたので確認してほしいとの連絡が入り、警察署に行きました。妻・母を確認するまでの間「まさか」と「人違いだろう」と頭の中が混沌とした中で遺体と対面しました。その後は妻・母の遺体を引き取ってからも突然すぎて葬儀や役所に死亡届を提出しても本当の事なのだろうか何か間違いであってほしいとも思いましたが、日々を送る中、妻・母の友人らが手を合わせにきてくれると段々受け入れてくる次第です。

朝起きれば朝食が用意されており一緒に食べ、畑に一緒に行って作物を作ったりしていました。何気ない日々でしたがこのような形で妻・母を失い何気ない日々がとても幸せだったと思います。

父はコロナ禍の前に病気をし、旅行など出かけることが出来ませんでした。病気の方も良くなり、コロナの自粛も緩和されたので今年は旅行行こうかと母が言っていました。父も楽しみにしていましたが二度とかなうことはありません。今でも妻・母は長期の入院で病院にいるので家にいないのだと錯覚を起こすこともあります。

最後に、私たち家族は今でも妻・母を失った喪失感と悲しみの中にあります。私たちの心情をお察しいただき、静かに見守っておいていただけますと幸いです。

令和5年11月16日
竹内 靖子 遺族一同

地図
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(長野放送)

長野放送
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