11月3日~5日に行われたフィギュアスケート・東日本選手権。

男子は佐藤駿、女子は青木祐奈が優勝した。

この大会を勝ち抜いた選手達は12月21日から長野・ビッグハットで開催される全日本選手権へ出場することができる。

今回はその切符を手にした選手たちを紹介していく。

【シニア男子】自己ベスト更新の佐藤駿が優勝

男子は上位8名が全日本へ進出した。

優勝は佐藤駿。

初めてSPとFSをノーミスで揃え、ISU非公認ながら自己ベスト284.87点を出し、圧巻の演技で優勝した。

SPをノーミスでそろえた佐藤駿
SPをノーミスでそろえた佐藤駿
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SPの予定演技構成には4回転ループの文字があった。

しかし、試合直前の練習で足をひねってしまったため、4回転ループを回避。

幸い大事には至らなかったという。

SPの演技後、ガッツポーズが飛び出した
SPの演技後、ガッツポーズが飛び出した

そのSPで佐藤は、全てのエレメンツで加点が付く圧巻の演技を披露した。

演技後にはガッツポーズ飛び出し、SP97.88点という得点発表の際には会場がどよめくほどだった。

FSでは大技を完璧に決めて圧巻の演技で優勝した佐藤
FSでは大技を完璧に決めて圧巻の演技で優勝した佐藤

続くFSは、朝の公式練習から4回転ルッツを難なく着氷してみせた。

本番でもその大技を完璧に決め、出来栄え点(GOE)3.22を獲得。さらに2本の4回転を含む全てのジャンプを成功させる。

佐藤駿のFSの演技にコーチらは抱き合って喜んだ
佐藤駿のFSの演技にコーチらは抱き合って喜んだ

フィニッシュした直後には日下匡力コーチと浅野敬子コーチは抱き合って喜んだ。

FS186.99点を出し、コーチらは喜んでいたが、佐藤に笑みはなかった。

キスクラの時点ですでに次を見据えていた佐藤
キスクラの時点ですでに次を見据えていた佐藤

キスクラで笑顔がなかった理由は、すでにこのときから佐藤は次を見据えていたからだという。

「まずは嬉しく思っています。でもこれで終わりではなく、ここからだと思っているので、自己ベストを超えられるように、全日本とまずはGPフィンランドを頑張りたいと思っています」

「今年の佐藤駿は違う」ということを見せつける大会となった。

シニア1年目で全日本をつかんだ吉岡希は2位
シニア1年目で全日本をつかんだ吉岡希は2位

2位は吉岡希。

シニア1年目で全日本選手権への切符を掴んだ。

吉岡は「(これまでは)楽しみの方が大きかった。今年からシニアに上がってしっかり集中しないといけない」とジュニアでの出場だったときと感情の変化があったと明かした。

毎年、東西選手権が行われるこの時期はうまくいかないことが多く、吉岡は初めて表彰台に乗れてよかったと振り返る。

SPをノーミス演技で決め、熾烈な全日本最終グループ入りを目指す。

SPの『スーパーマリオ』を披露した大島光翔
SPの『スーパーマリオ』を披露した大島光翔

3位は大島光翔。

去年の東日本で優勝した大島は、今大会のパンフレット1面を飾った。「あまりにもかっこいいので重版しなくていいのかな」と笑いながら話してくれた大島。

ここまで今までにないくらいの好調だったという。SPの『スーパーマリオ』を披露し、会場を湧かすがミスが2つも出てしまい、「悔しい」の一言。

大島と親交がある西山真瑚は、今シーズンから田中梓沙とカップルを結成し、“あずしん”と呼ばれ、親しまれている。

その“あずしん”もRDで同じ『スーパーマリオ』を演じており、「被ってしまったか…。でも僕とは違うマリオを演じていて、こっちもあっちも盛り上がればいいなと思ってます」と話した。

FSではSPのギャップで観客を楽しませた大島
FSではSPのギャップで観客を楽しませた大島

3つの曲が使われているFSでは、こちらもミスをしてしまい演技と点数がかけ離れてしまったものになってしまったと振り返る。それでもSPとのギャップで観客を楽しませた。

大島にとって4回目となる全日本。「まだ自分が目指した部分が発揮できていない。気合いは入っているのでベストな演技をしたい」と誓った。

FSでは表現で勝負に出た門脇慧丞
FSでは表現で勝負に出た門脇慧丞

4位は門脇慧丞。

SP3位スタートの門脇は、全日本圏内で迎えたFSで大技のジャンプを入れず、得意の表現面で勝負に出た。

“戦争の終戦”への願いが込められているというプログラムを大きなミスなく滑り切り、全日本行きの切符を手にした。

門脇にとって初めての全日本。「初めてなので、どうなるかわかりませんが楽しみたい」と答えてくれた。

トリプルアクセルにこだわりのある長谷川一輝は5位に
トリプルアクセルにこだわりのある長谷川一輝は5位に

5位は長谷川一輝。

大学4年の長谷川は来季大学院への進学が決まっている。

東京選手権では思うような演技ができなかったようで、「全体的にミスのない演技を目指してトリプルアクセルを成功させたい」と、今大会に向けてかなりの練習をしてきたという。

特にトリプルアクセルは、長谷川の生き様といっても過言ではないほどのこだわりがあるようだ。

長谷川にとって4年連続4回目の全日本。選ばれし30人が滑ることが許される全日本の舞台で、FSの後半で滑ることができる12人を目指す。

そして、SPとFS両方で3本のトリプルアクセル成功を誓う。

シニア1年目の北村凌大は6位に
シニア1年目の北村凌大は6位に

6位は北村凌大。

シニア1年目で全日本初出場を決めた北村。去年は初めて全日本ジュニアにも出場した。

SP6位スタートのFSでは『ラ・マンチャの男』の世界観を表現し、密度の濃い演技を披露した。

全日本に向けては「緊張すると思うが自分に集中してできることを全て出し切りたい」とした上で、課題のジャンプを重点的に練習するようだ。

「全日本ではもう一段レベルアップした姿を先生方、両親に見せたい」と意気込んだ。

全日本初出場を決めた7位の志賀海門
全日本初出場を決めた7位の志賀海門

7位は全日本初出場を決めた志賀海門。

全日本圏外から迎えたFSは、自分の実力通りの演技が出来たと振り返り、演技後には「全日本へ届いてくれ」という思いから祈るようにリンクの上に倒れた。

演技直後、全日本出場を祈るように倒れ込んだ
演技直後、全日本出場を祈るように倒れ込んだ

自身の演技を終えた時点で暫定1位になり、次の滑走者の結果次第で夢舞台への扉が分かれる瞬間にインタビューに応じてくれた。

取材スタッフの元に結果が届き、全日本行きが決まったと志賀に報告。

インタビュー中に全日本行きが決まり喜ぶ志賀
インタビュー中に全日本行きが決まり喜ぶ志賀

すると「まじっすか!夢みたい」と顔が和らいだ。

共に歩み、全日本行きを志賀自身よりも最後まで信じてくれた佐藤信夫先生に感謝を込めて滑りたいと夢の舞台で誓う。

SP13位から全日本出場を決めた小田垣櫻
SP13位から全日本出場を決めた小田垣櫻

8位は小田垣櫻。

SP13位からの逆転で、全日本初出場を決めた。

「やることはやった」と振り返り、キスクラの得点発表で喜びを爆発させた。

キスクラで喜びを爆発させた小田垣
キスクラで喜びを爆発させた小田垣

「ようやく努力が報われた、嬉しくて嬉しくて止まらない」と夢舞台出場を喜んだ。

憧れの選手は宇野昌磨という小田垣。同じ舞台で滑ることができる現実に「むちゃくちゃ嬉しいです」と興奮しながら答えたくれた。

【シニア女子】SPは自身で振付!青木祐奈が優勝

女子は上位5名が全日本へ進出。誰が通過してもおかしくない全日本争いとなった。

優勝は大学ラストイヤーの青木祐奈。

SPの振付には“青木祐奈”の文字があった。

青木祐奈自身が振り付けたSPはステップが見どころとのこと
青木祐奈自身が振り付けたSPはステップが見どころとのこと

夢は振付師という青木は、今回のプログラムを自身で初めて振付したという。

特にステップは注目ポイントだそうだ。

そのこだわりのSPは、ここまで調子が良かっただけにミスがあり、悔しさが残るも首位で折り返す。

自分のスケート人生を体現しているというミーシャ・ジーの振付のFSでは、大きなミスなくまとめ上げ、2位に15点差をつけ優勝を飾った。

“私のスケート”を全日本で披露し、笑顔で終えたいと話した。

不安のあったジャンプにミスがあり2位発進となった江川マリア
不安のあったジャンプにミスがあり2位発進となった江川マリア

2位は江川マリア。

SP最終滑走の江川は、普段の練習から不安があると話していた後半のコンビネーションにミスがあり、SP2位スタートに。

FSでも実力を発揮できず演技後、悔しそうにする江川
FSでも実力を発揮できず演技後、悔しそうにする江川

その不安はFSでも出てしまい、本来持っている実力を発揮できなかったと振り返り、インタビューではたまらず、悔し涙をこぼした。

この大会には一緒に暮らす祖母が青森まで見に来てくれていたようで、申し訳ない気持ちがあったともいう。

掴んだ全日本へは「悔し涙を嬉し涙にしたい」と気を引き締めていた。

石田真綾はスケート人生で初めて3位表彰台に
石田真綾はスケート人生で初めて3位表彰台に

3位には石田真綾が入った。

「まさか入るとは思わなかった…」と自分でもびっくり、スケート人生初めての3位表彰台に笑みがこぼれた。

全日本進出への自信は「全くなかった」ようで、普段の石田はSPの調子がいいのだが、今回はミスも響いてしまい6位スタートに。

それでもFSでは大きなミスなく、まとめ上げた。

演技直後にはスタンディングオベーションが送られ、得点発表でも初めての100点超えに笑顔を見せた。

初めての全日本を決め笑顔を見せる石田
初めての全日本を決め笑顔を見せる石田

「(緊張して)死ぬかと思った…」と試合直後にそう明かした石田。

実は柔道経験者という経歴を持っている。

「(柔道の経験から)体幹が鍛えられたのが良かったかもしれない」と振り返り、初めての全日本へ「自分のいい演技をしたい」と意気込んだ。

三枝知香子はSP13位から大逆転で全日本を決める
三枝知香子はSP13位から大逆転で全日本を決める

4位には三枝知香子。

前半第2グループSP13位からの大逆転で全日本出場を決めた。

FSでは自己ベストを更新する。

全日本進出の知らせが来るまで、車の中で別のことをしながら気を紛らわせていたという三枝。

全日本行きが決まるまでは「胃が引きちぎれそうだった」と三枝
全日本行きが決まるまでは「胃が引きちぎれそうだった」と三枝

コーチからの通過決定の知らせを受けるまでは胃が引きちぎれそうだったと振り返り、喜びを噛み締めた。

去年もSP6位から逆転で全日本進出を掴んでおり、周りから「強いね」と言われるようだが、「自分的には(SPで)いつもやらかすので、もっと頑張りたい」と話した。

“運”も味方につける実力者は、全日本では鬼門のSPを乗り越え、FS進出を目指す。

全日本行きの最後の1枚を勝ち取った本田真凜
全日本行きの最後の1枚を勝ち取った本田真凜

5位は本田真凜。

学生最後の全日本行きの切符、最後の1枚を勝ち取った。

「今まで21年間のスケート人生の中で考えられないくらい緊張した」と振り返った本田。

FSではお気に入りの『リトルマーメイド』を披露した本田
FSではお気に入りの『リトルマーメイド』を披露した本田

試合前からネガティブ思考だったが自分を支えてくれる人たちの顔が浮かび、「勝ちたい」という気持ちから湧いてきたという。

そのFS冒頭のジャンプが単発になるミスはあったものの、中盤以降はリカバリー。豊かな表現力でお気に入りのプログラム『リトルマーメイド』を演じきった。

9年連続の全日本では「見違える姿を見せたい」と本田
9年連続の全日本では「見違える姿を見せたい」と本田

9年連続の夢舞台に向けては、過去一緊張した中でも勝ち抜いた“強い自分”を持ちつつ、全日本では見違えるような姿を見せたいと意気込んだ。

【ペア】“ゆなすみ”が優勝

出場した全組が全日本へ出場を決めた。

優勝は結成半年の新ペア“ゆなすみ”こと長岡柚奈&森口澄士組。

ペアの優勝は新ペアの“ゆなすみ”
ペアの優勝は新ペアの“ゆなすみ”

北海道出身の長岡は2019年の東日本選手権で滑る“りくりゅう”こと三浦璃来&木原龍一組の演技を直接見てペアに興味が出たという。

昨季までシングル選手として、東北北海道ブロックではジュニアで優勝を果たしている長岡。

そして今季、トライアウト会場で一際目を引く滑りを見せた長岡がブルーノ・コーチの目に留まり、森口とペアを結成した。

今大会は“ゆなすみ”にとってデビュー戦となった。

ペア経験のある森口澄士のリフトは頼もしく安定感がある
ペア経験のある森口澄士のリフトは頼もしく安定感がある

ペアの経験がある森口が支えるリフトは頼もしすぎる安定感で出来栄え点(GOE)+1.32をマークする。

知り合ったタイミングと結成の時期が同じだったため、まだまだ経験は浅いが手探りな中でも新しい発見が多いと話した。

長岡柚奈&森口澄士組が目指すのはオリンピック出場
長岡柚奈&森口澄士組が目指すのはオリンピック出場

そんな2人の最大の目標はオリンピック出場だ。

“りくりゅう”大先輩に続けと、次戦のNHK杯、そして全日本に挑む。

男子・女子・アイスダンスの順位

シニア男子表彰台(東日本選手権)
シニア男子表彰台(東日本選手権)

【シニア男子】
1位 佐藤 駿(エームサービス/明治大学)284.87点
2位 吉岡 希(法政大学)220.27点
3位 大島 光翔(明治大学)191.61点
4位 門脇 慧丞(法政大学)190.82点
5位 長谷川 一輝(東京理科大学)189.94点
6位 北村 凌大(日本大学)176.00点
7位 志賀 海門(法政大学)158.60点
8位 小田垣 櫻(日本大学)152.72点

シニア女子表彰台(東日本選手権)
シニア女子表彰台(東日本選手権)

【シニア女子】
1位 青木 祐奈(日本大学)179.40点
2位 江川 マリア(明治大学)163.72点
3位 石田 真綾(立教大学)151.62点
4位 三枝 知香子(日本大学)143.37点
5位 本田 真凜(JAL)142.12点

ペア表彰台(東日本選手権)
ペア表彰台(東日本選手権)

【ペア】
1位 長岡 柚奈・森口 澄士(木下アカデミー)126.74点

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班