神戸市北区の山中にある“盛り土”が危険だと問題になっている。現場の砕石場には、大量の土砂が運び込まれ、積み上げられている状態だ。

神戸市によると、これは市内の砕石業者が2009年から行っている盛り土で、市が許可した約30万立方メートルの1.6倍、約48万立方メートルもの土砂が盛られている。神戸市の土砂条例違反の状態だが、2023年7月には、さらに重大なことが判明。土石流の恐れがあるそうだ。

神戸市と専門家、そして問題の要因となっている砕石業者に取材した。

過去の土石流より広範囲に被害が及ぶ可能性

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神戸市環境局環境保全課・森本隆夫課長は「降雨で多量の水を含んだ場合に、土石流となって流出する可能性があることが判明しました」と話した。盛り土の一部、渓流を埋めた約2.3万立方メートルの土砂が、土石流となって斜面を下り、麓の68世帯を襲う可能性があるとのことだ。

盛り土が原因となった災害として思い起こされるのが、2021年に静岡・熱海市を襲った土石流。この災害では、災害関連死も含めた28人が犠牲となった。被害を拡大させたのは、上流で放置された“違法な盛り土”だった。

神戸市の盛り土の危険性について、土砂災害の専門家に実際の状態を見てもらうと…

京都大学名誉教授 釜井俊孝さん:
明らかに締まった盛り土ではなく、緩くふわっと積んでいる状況だと思います。盛り土の中に入っている排水施設は確認できませんでした。豪雨の時に規模の大きな崩壊が起きて、土砂が谷に流れ込むと、熱海で起きた土石流と類似した現象が起きる可能性はあります

さらにこの盛り土には、熱海より深刻な状況がみられると話す。

京都大学名誉教授 釜井俊孝さん:
熱海の土石流の場合は、深い谷の中を流れ下りました。そこでいろんな摩擦が生じるわけですけども、ここの場合は道路の上を流れ下ると思います。道路と土砂の摩擦は比較的小さいので、より流れ下りやすいという特徴があると思います

熱海の土石流に比べ、より遠くまで土砂が流れ出す恐れがあるとのことだ。

不安な住民「安全といえる根拠はない」と業者

放置される盛り土について、周辺に住む人は当然、不安を感じている。

周辺住民:
不安はありますよね。以前にないような怖い雨の降り方しますし、前は川です

Q.業者に対してどう思いますか?

周辺住民:
普通の人間のすることではない

住民の不安の種になっている、違法で危険な盛り土。放置し続ける業者を取材班が訪ねた。

Q.なぜ土砂を撤去できないんですか?

砕石業者:
あとで

Q.違法なことをしている自覚はありますか?

砕石業者:
ない。こっちにも言い分はあるんで

業者の“言い分”とは?さらに話を聞くため、後日、改めて取材を申し込んだ。これに応じた業者は、神戸市への批判を口にした。

Q.許可された「土砂の量」と「置き場所の範囲」は超えていない?

砕石業者:
置き場所の範囲は多分超えているかも。土砂の量について役所は許可量を超えているって言うんです。うちとしては計算しているので超えていないんです。それを向こうは認めないので、上っ面の測量で超えていると言われている

「神戸市は十分な調査をしていない」と主張した業者。さらに、神戸市から再三にわたる改善指導を受けたことについては、こんな主張を繰り広げた。

砕石業者:
是正計画書は出しました。市に是正計画書が受け入れられなかったので、だから今回こういう風になりました。計画書が市の思うようなものであれば撤去してくださいね。それまで一切触るなと言われたので、こっちは言われた通り触っていなかった。それをどうこう言われても困るので

是正計画書の不備を指摘されたものの、修正せず、盛り土を放置していた業者。神戸市は“土砂条例”違反の疑いで刑事告発することを検討している。

業者の口からは、住民に対する驚きの言葉が飛び出した。

砕石業者:
現場を見てへんのに不安を覚えるほうがおかしいでしょ。見てから言ってもらおうか

Q.危険は及ばないと?

砕石業者:
僕は及ばないと思います。多分ね

Q.安全といえる根拠は?

砕石業者:
ない。僕は安全だと思ってやっているので、根拠を出せといわれても、すんませんとしか言いようがない

神戸市が土砂の撤去に着手

こうした状況を打開するため、神戸市がついに動き出した。10月26日、神戸市は業者の代わりに土砂を撤去する“行政代執行”に着手。

流出する恐れのある部分の半分を取り除き、残りについてはネットを設置して流出を防ぐというもので、2024年3月末までに土砂の撤去作業を終える予定だ。

神戸市環境局 森本課長:
できる限り早期に工事を進めて、早く安全を確保していきたいと考えております

全国の危険な盛り土の中でも、調査や対策が行われているのはほんの一部。災害を未然に防ぐための対策が急がれる。

(関西テレビ「newsランナー」 2023年10月26日放送)

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