北朝鮮が10月に実施すると予告していた、衛星と称する弾道ミサイルについて、発射の兆候がみられないことが政府関係者への取材で明らかになった。

2度の失敗を挽回できるのか…
2度の失敗を挽回できるのか…
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北朝鮮が8月に2度目の失敗をした際、弾道ミサイル技術に重大な欠陥が見つかった可能性があり、朝鮮労働党創立記念日がある10月の発射は断念したとみられる。

朝鮮中央通信は2023年5月の発射失敗を写真付きで報じていた
朝鮮中央通信は2023年5月の発射失敗を写真付きで報じていた

北朝鮮は2023年4月に、軍事偵察衛星と称する弾道ミサイルを発射すると宣言してから、5月と8月に2回発射を試みたが、いずれも失敗に終わっている。特に8月の失敗は、弾道ミサイルを打ち上げた後に飛翔コースの修正に失敗したとみられている。

韓国軍が回収したミサイルの残骸とみられる物体 2023年5月
韓国軍が回収したミサイルの残骸とみられる物体 2023年5月

北朝鮮が南方向にミサイルを発射する場合は、打ち上げ後、進路を微妙に東に修正しなければいけない。そのまま南に打ち込めばフィリピンにブースターが落下してしまうからだ。そのための進路の修正が上手くいかなかった可能性がある。

8月の失敗直後、北朝鮮の国家宇宙開発局は、「事故の原因は段階別のエンジンの信頼性とシステム上の大きな問題ではない」とし、「原因を徹底的に究明して対策を講じた上で、10月に3回目の偵察衛星打ち上げを断行する」と表明していた。

10月10日には朝鮮労働党創立記念日を迎えたが…
10月10日には朝鮮労働党創立記念日を迎えたが…

そのため、朝鮮労働党の創立記念日である10月10日前後に発射する可能性があると指摘されていたが、政府関係者によると現在、具体的な発射の兆候は見られないことが新たにわかった。
北朝鮮が今月の発射を断念した可能性がある。

11月以降、北朝鮮がいつ3回目の発射に踏み切るかについて、日本政府はアメリカ、韓国と連携しながら引き続き警戒を強めている。
(フジテレビ解説委員・上法玄)

上法玄
上法玄

フジテレビ解説委員。
ワシントン特派員、警視庁キャップを歴任。警視庁、警察庁など警察を通算14年担当。その他、宮内庁、厚生労働省、政治部デスク、防衛省を担当し、皇室、新型インフルエンザ感染拡大や医療問題、東日本大震災、安全保障問題を取材。 2011年から2015年までワシントン特派員。米大統領選、議会、国務省、国防総省を取材。