10月27日~29日にフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦、カナダ大会が行われ、坂本花織が優勝、松生理乃が3位、渡辺倫果が6位に。

日本男子では山本草太が優勝、三浦佳生が2位、友野一希4位で終えた。

世界選手権2連覇中の坂本花織は、このカナダ大会で世界女王の貫禄を見せつけた。

SP首位で迎えたFS、余裕さえ感じる至高のスケーティングスキル、そして全てのエレメンツで加点が付くパーフェクト演技を披露。

今季の世界最高FS151.00、合計226.13で優勝。圧巻だった。

例年シーズンの序盤はスロースタートと言われ、なかなか調子が上がらないと言われている坂本だが、GS初戦でここまでの仕上がりは目を見張る。

前人未到の挑戦と未来の目標

北京五輪銅メダル、世界選手権・全日本選手権2連覇と輝かしい実績を残し続ける坂本。

いまや日本女子シングル界のエースとなった彼女が見据える今季の目標は「全日本と世界選手権3連覇」だ。

2022年の全日本選手権で2連覇を成し遂げた坂本花織
2022年の全日本選手権で2連覇を成し遂げた坂本花織
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前人未到の挑戦に意気込むその先には「もう一度オリンピックでメダルを獲りたい」と、今季、スケート人生19年目を迎える彼女の、未来を見定めた思いがあった。

坂本は10月7日にさいたまスーパーアリーナで行われたジャパンオープンに出場。

ノーミス演技でFS149.59のハイスコアを叩き出し、日本の2連覇に貢献した。

都内のカフェを訪れた坂本
都内のカフェを訪れた坂本

都内のカフェを訪れた坂本。カフェにはプライベートでも友達とよく行くという。「ブラックコーヒーは飲めない」という坂本は、カフェラテを注文した。

普段はほうじ茶を飲み続けているようで、「常に持ち歩いています。冬は温かいほうじ茶にしてリンクに持っていっています。もともと緑茶が苦手で、ほうじ茶を買ってみたらドハマりしました」と笑う。

「マジで運は強いと思う」

23歳を迎え、スケート歴19年となった坂本。

フィギュアスケートとはどのように出会ったのだろうか。

「いろいろなスポーツをテレビでお母さんが見せていたんですけど、『これは嫌、あれは嫌』みたいに言っている中で、スケートだけは『これが良い!』と言っていたみたいで、遊びに連れて行ってくれたのがきっかけです。スケートもそれがしたいと言って決めたし、そのころの直感ってすごかったんだなって思いました」

ほうじ茶もそしてフィギュアスケートも、一度ハマったらとことんやり続ける性格のようだ。

スケートとの出会いを振り返った坂本は、「マジで運は強いと思います」と力強く語り、こう続ける。

2017年の全日本で2位になった坂本は平昌五輪代表の座を手にした
2017年の全日本で2位になった坂本は平昌五輪代表の座を手にした

「平昌(五輪)の時の運はすごかったなって思って。誰も予測していなかったと思ったし、自分もシニアに上がりたてで、ほぼノーマークだった。自分の経験値を上げていって、スケートアメリカで表彰台に乗ってから、なんでかわからないけど“頑張ったらいけるかも”みたいに思って。

悔いはないように全力でやろうと思ったのが結果に結びついて、まさかあそこで(五輪代表として)坂本花織って呼ばれるんやっていう驚きがもう忘れられなくて。北京(五輪)のメダルも、そのあとのモンペリエの世界選手権も金メダルもそうだし、もうなんか全てにおいて運が良すぎて、自分早死にするんじゃないかっていうくらい(笑)」

坂本も驚くほどのまさかの出場となった2018年の平昌五輪は6位という結果だった。

しかしそれからの勢いは増していき、2022年の北京五輪では銅メダル、続く世界選手権では金メダル獲得などの結果を残した。

今は「フルタイムアスリート」

本人は「運が良い」と言っているが、坂本は今まで自らオフを取ったことがなかったというほどスケートにまい進してきた。

その努力の末につかんだ、これまでの輝かしい成績を全て「運」だったと坂本は言い切る。

「人生ハプニングとアクシデントとトラブルしか起こらないからと周りに言われていて。全部時間が経てば笑い話に変わることなので、めっちゃ楽しいです」

2022年、北京五輪後にモンペリエで開催された世界選手権で金メダルを獲得
2022年、北京五輪後にモンペリエで開催された世界選手権で金メダルを獲得

周りを明るくさせる笑顔と謙虚でひたむきにスケートと向き合う姿勢。

そんな彼女の人柄が運を引き寄せているようだ。

そして今シーズンは、大学を卒業したこともあり、スケート一本で挑んでいる。

自らの肩書きを坂本は悩んだ末に“フルタイムアスリート”とした。

「全部スケートのために生活できるので、良い環境になるんじゃないかと思います」と答えた坂本の表情に不安は一切見えなかった。

坂本はこれからの競技人生で最大の目標を2026年のミラノ・コルティナ五輪と位置づけている。

「ゴールは、ミラノ・コルティナ五輪かなって思っています。7、8年後とかもう考えられなくて。今はミラノに向けてもう全力疾走でやっていて、もう一回メダルを獲ればすごいなって思っているので。そこを目標に頑張っています」

彼女が唯一譲れない「スケートが好き」という情熱だけを原動力に2026年のミラノ・コルティナ五輪まで駆け抜ける。

大熱狂!初めてのW杯バレー観戦

坂本は普段からフィギュアスケーター以外のアスリートとも交流があるという。

オリンピックに2度出場経験のある体操・寺本明日香や、同じ世界女王の経験もある柔道・堀川恵らとも仲がいいと話す。

「フィギュア以外で好きなスポーツは、やるんだったらバレーボールが好きです」

W杯バレーの観戦のため会場に来た坂本
W杯バレーの観戦のため会場に来た坂本

こう話した坂本は、9月下旬から開催されていたワールドカップバレーも観戦。

訪れたのは、男子日本代表がパリ五輪出場を決めた翌日の試合、アメリカ戦だ。

2019年の全日本は代々木第一体育館で行われた
2019年の全日本は代々木第一体育館で行われた

この試合が行われた代々木第一体育館は、2019年の全日本選手権が行われた会場でもあり、坂本は懐かしさを感じていた。

会場に入ると、「あつい!」と想像以上の熱気に圧倒される姿もあった。

全力で応援する坂本
全力で応援する坂本

日本も対戦相手のアメリカもともにパリ五輪への切符をつかんだ強豪同士の戦いとあって、坂本は声を張り上げ全力で楽しんでいた。

「第三者目線で他競技の日本代表の活躍を見ることができて感動した。自分もフィギュアスケートの日本代表として頑張らないといけないと思った」と刺激を受け、またスケートの世界へと戻っていった。

W杯バレーの試合に刺激を受けた坂本
W杯バレーの試合に刺激を受けた坂本

競技人生として、今の坂本が掲げるゴールは「ミラノ・コルティナ五輪でのメダル獲得」だ。

そんな彼女の今季のテーマは「自然体」。

“自分らしさ”を胸に、今シーズンの坂本が目指すのは、全日本・世界選手権3連覇だ。

全日本までの道の詳しい概要はフジスケでhttps://www.fujitv.co.jp/sports/skate/figure/index.html
FODで全選手・全演技LIVE配信

フィギュアスケート取材班
フィギュアスケート取材班