新型コロナ感染症法上の位置づけが2023年5月から季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行したことを受けて、観光客など人の動きが元に戻りつつある中、交通業界の人手不足が深刻化している。
タクシー業界では「長時間労働できつそう」など、かつてのイメージを払しょくし、ドライバーの確保に向けた取り組みが進んでいる。

ベテランドライバーが気になる利用客の“言葉”

長崎市のラッキーグループで働く北浦市子さん(64)は、タクシードライバー歴20年を数えるベテランだ。

タクシードライバー歴20年の北浦市子さん
タクシードライバー歴20年の北浦市子さん
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タクシードライバー 北浦市子さん:
会話ができるのが楽しみ。安全運転が一番だが、気を配りながらお客さんとの会話も大切に

「大変なことはない」と話す北浦さんだが最近、利用客が口にする“ある言葉”が気になるという。

タクシードライバー 北浦市子さん:
「結構待った」「10分待った」「15分待った」とよく言われる。タクシーが少ない。もっと乗務員さんが増えてくれれば

労働環境や待遇の改善で人材不足解消へ

長崎県タクシー協会によると、タクシードライバーとして登録している人はここ数年で減少している。

新型コロナ感染拡大前の2019年には約3800人いた登録者は、2021年には1割以上の約500人減った3300人余りになっている。外出自粛に伴う客足の落ち込みや、高齢を理由に辞めた人も多く、長崎県内のタクシーの稼働率は、2021年には60%を下回った。

しかし、2023年5月に新型コロナの感染症法上の位置づけが5類に引き下げられたことなどから観光客が増加し、人の動きも元に戻りつつある。
タクシーの需要も回復しつつある中で、肝心となるドライバー不足が課題になっている。

長崎県タクシー協会 松岡隆専務理事:
観光客に迷惑をかけないためにも、タクシー運転手を増やしていきたい。運転手は3K(きつい・汚い・危険)だったが、今は違う。少しずつだがイメージアップをしていこうとしている。

その1つが、労働環境や待遇の改善だ。

2023年9月、約3年半ぶりにタクシー運賃が値上げされ、長崎県本土の初乗り運賃は、80円上がった670円になった。ドライバーの賃金アップも目的の1つだ。

子育て中の女性に配慮も 働きやすい環境を

「働き方」もドライバーによって様々だ。

タクシードライバー 北浦市子さん:
友達と待ち合わせしたりして自由な時間もある。友達とランチするときは1時間。自分で近くの店に行くこともある。メリハリをつけて休憩と仕事を切り替えている

北浦さんは、午前7時半から午後9時までの「日勤」で、4日働いて1日休み、3日働いて2日休みという勤務シフトをとっていて、有休も含め、月に10日ほど休みがある。
勤務を柔軟にして応募者の幅を広げている。

ラッキー自動車営業本部 渕上一大統括本部長:
子育て中のお母さんだったら幼稚園に迎えに行く時間も考えて、早上がりも考えている。女性にも力になってもらえるのではと考えている

女性も働きやすい環境を整えようと、ラッキー自動車は、2023年9月に長崎県内で初めて女性ドライバー専用の休憩室を作った。

電子レンジやIHコンロなどを備えたキッチンスペースに加え、仮眠ができるベッドルームやシャワールームなど、まるで自宅のような環境でくつろぐことができる。
また、メイク直しに使えるパウダールームもあり、日勤のドライバーも休憩に利用できる。

さらに、車に備えられる運転者証にも変化があった。

これまでは名前や顔写真を示すことが義務付けられていたが、プライバシー保護のため、2023年8月から車の登録番号と会社名だけが見えるタイプに変更されている。

バスや鉄道も人手不足から路線の廃止や減便が進んでいる。
交通業界でも人材の争奪戦となる中、今後、市民の足をどうやって守っていくのか。タクシー業界の働き方改革も待ったなしだ。

(テレビ長崎)

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