原因不明の源泉温度低下に見舞われ、休業を余儀なくされていた秋田・湯沢市の老舗温泉旅館が2023年6月から営業を再開した。旅館はクラウドファンディングで資金を募り、新たな挑戦に乗り出している。キーワードは「ペット」だ。
休業していた「秘湯」の復活
湯沢市の「鷹の湯温泉」。

創業は明治13年(1880年)で、自然豊かな地域にたたずむ、まさに「秘湯」だ。
しかし2020年秋に原因不明の源泉の温度低下や湯量の減少に見舞われ、休業を余儀なくされた。

創業以来最大の危機を打ち破ろうと、旅館の専務・関優美さんらが打ち出したのが、愛犬と泊まれる旅館へのリニューアルだ。
改装し犬の部屋設置 ローベッドも!
2023年3月にインターネット上で資金を募るクラウドファンディングを始め、450万円が集まった。
その資金を活用して完成したのが、愛犬と泊まれる客室。
客室は本来、畳が敷かれているが、カーペットが敷かれて防水仕様となっている。そして押入れを改装して、犬の部屋が設けられた。

このほか、ペットの体の負担を軽減するために低いベッドが導入されるなど、宿泊する客が安心して過ごせる環境が整備された。

愛犬と泊まれる客室は現在1室のみだが、すでに3組の客が利用している。
ドッグランに温泉が出るシャワー台も
愛犬とともにまったり過ごせる空間はほかにもある。
まずは、室内ドッグラン。明るく広々としている。
壁の塗装や、犬のけがを防ぐために滑りにくいフローリング床材にする作業は、費用を抑えるために自分たちで進めたという。

ここには温泉が出るシャワー台が設けられた。源泉の温度は40度ほどで犬にぴったりだ。

鷹の湯温泉・関優美専務:
犬にも温泉に入ってもらえるように蛇口を設けました。セルフにはなってしまいますが、お客さん自身で乾かしてもらえるようになっています
また、屋外にもドッグランは用意されている。

鷹の湯温泉・関優美専務:
滝の音を聞きながら、緑を感じながら、思い切り走ってもらえると思います
愛犬が走り回れる広さで、旅先の不慣れな場所でもストレスを解消できる。
ボイラーで湯の温度回復も課題が
集まった資金は、温泉の温度を上げるためのボイラーの購入費にも充てられた。
源泉をためるプールの温度は元は83度だったが、今は41度ほどまで下がっている。
そのため、クラウドファンディング終了後、すぐにボイラーを4台購入。ボイラーにより、現在の浴槽の湯の温度は40度ほどを維持し、源泉の温度が下がる前と同じくらいまで回復している。

こうした工夫を重ね、旅館は6月に営業を再開した。
これで一安心と思いきや、新たな課題が出ている。
鷹の湯温泉・関優美専務:
ボイラーを入れることによって灯油代がかかってしまうので、たくさんのお客さんに来てもらって回していくというか、維持していくしかないのかなと思います
灯油代が10万円ほどかかる月があるほか、ボイラーのメンテナンス費など、これまでになかった経費が発生しているという。

それでも温泉を愛する常連客が足しげく通っている。
常連客も旅館の復活に歓喜
30年来の常連客:
魅力はのんびりするところ。若い時はお風呂に入って魚釣りして、生ビール飲むのが一番うまいの。そのためにここに来るんだよ。何があるかは知らないけど、ここに来るんだよね。復活してくれてよかった

鷹の湯温泉・関優美専務:
「復活してくれてありがとう」とか「ずっと待っていたよ」と言ってくれるお客さんがたくさんいるので、こちらがうるうるしてしまう感じです。犬連れも、犬連れじゃないお客さんも一緒に共存して、癒やしを与えられる温泉にできればと思います

創業以来最大の危機を迎えたものの、全国のファンに支えられて難局を乗り越えようと奮闘する「鷹の湯温泉」。老舗温泉として、そして愛犬と過ごせる癒やしの空間として、新たな一歩を踏み出した。
(秋田テレビ)