思い入れや成長の証が込められた制服。「もったいない」をきっかけに、いらなくなった学生服のリユースに取り組む男性の思いを追った。

リユースし次の世代につなげる

山形市十日町にある北日本白衣山形。

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創業は1972年、主に医療用や飲食店などで使う白衣・企業の事務服や作業着などを扱っている。企業理念は「着る人の笑顔のために」、社長を務めるのは佐藤博之さんだ。佐藤さんが社長として忙しい日々を送る中、県のPTA会長を務めていた5年前に転機を迎えた。

北日本白衣山形・佐藤博之社長:
あるお母さんと話をする中で、「制服って、捨てるのもったいないよね」という一言があった。“ぜひうちでやってみよう”と、始めた

PTA活動で知り合った保護者との会話で出た「もったいない」の一言に背中を押され、着なくなった学生服を買い取り、販売する事業を始めた。

1年3カ月の準備期間を経て、2019年の10月に買い取りをスタートし、4カ月後の2020年2月から販売を始めた。

北日本白衣山形・佐藤博之社長:
制服は、思い入れ・成長の証がいっぱい込められているものなので、ゴミとして出すのは忍びないという思いのある方もいらっしゃると思う。ぜひ私どもの方に持ってきていただいて、次の世代につながせていただきたい

衣類に関する2022年の国内の状況(矢野経済研究所調べ)は、新しく供給された服約80万トンに対し、事業所や家庭から手放される服は9割に相当する73万トンに上る。

そのうちの6割を超える47万トン分の服はゴミとして廃棄され、リサイクルやリユースされる量は3分の1にとどまっているのが現状だ。

まだ使えるのに捨てられてしまうのはもったいないと、学生服のリユース事業を始めて約4年。社長の思いは従業員にも根付き、これまで2,000着の学生服が生まれ変わった。

北日本白衣山形 縫製担当・青木美和さん:
新品ではないが、手を入れたことによってよみがえる。そしてまた新しい客に着てもらえるというのはすごくうれしい

制服のリユースを通し「もったいない」気持ちを共有

社長の「もったいない」の精神は、名前の刺しゅうを入れる作業にも見られた。

北日本白衣山形・佐藤博之社長:
別生地に刺しゅうした。これをやることによって、その次のことも考えれば、これをはずせば再利用ができる

名前が入った部分には上から新しい布をかぶせることにした。古い名前の刺しゅうをきれいにはずすには手間がかかるため、“省力化”も考えた対応をとっている。

「もったいない」から始まった学生服再生。一企業の小さな取り組みにすぎないかもしれないが、その一歩にこそ“大きな意義”がある。

北日本白衣山形・佐藤博之社長:
制服のリユースを通して、物を大切にする心や、もったいないという気持ちを皆さんに共有できたらいいなと思うし、SDGsの一つに貢献できたらいいなと思う

SDGs目標の12番に掲げられている「つくる責任・つかう責任」。作り手・売り手・買い手、それぞれの立場の小さな“一歩”が未来へとつながっていく。

(さくらんぼテレビ)

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