世界的にSDGsへの取り組みが増える中、学校でも「持続可能な社会の創り手を育む教育」が取り入れられている。教育の分野で活躍する先生が子どもたちに伝えたいことは、小さな疑問に向き合い、自分で考え・行動することの大切さだ。

山形県内で1人…ESDのスペシャリスト

山形市の千歳小学校では、天童市の寺津小学校とオンラインで交流授業を行っていた。

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千歳小の4年生は、地域でのサトイモ栽培や馬見ヶ崎川でのゴミ拾いなど、これまでの取り組みで学んだことを発表した。

リモート授業:
ゴミ拾いをしてもゴミはどんどん出てくるので、ゴミを陸や川・海に捨てずゴミ自体を減らすことが大切です

子どもたちの熱心な姿を見守るのは、担任の阿部大輔先生。実は山形県内でたった1人の「すごい」先生なのだ。

世界的にSDGsへの取り組みが増える中、学校でも「持続可能な社会の創り手を育む教育」が取り入れられている。

この教育はESD(Education for Sustainable Development)と呼ばれ、「自分で考え行動できる人材を育てる」ことも目的の1つ。そのESDのスペシャリストに山形県内で唯一認定されているのが阿部先生だ。

阿部大輔先生は「例えば、気温上昇を抑えるためにCO2の排出を減らさないといけない。じゃあ自分たちは何をするかというのは、大人もそうだし子どもと一緒に考えていかないといけない。『自分はどう思うのか、自分だったらこうする』と考える力は、大人になってから大事」と話す。

先生のこだわりは“教えない授業”

阿部先生には、授業の進め方へのこだわりがある。

阿部大輔先生:
最初から「今回はSDGsの11番(住み続けられるまちづくり)と14番(海の豊かさを守ろう)をする」と言うと、子どもたちはひとごと。先生が言っているから「これが答えなんでしょう」となる。子どもたちが調べたことや考えたことを大事にして、それをつないでいくようなコーディネートを意識している

極意はとにかく「教えない」こと。そんな授業をのぞいてみた。行われていたのは自主学習の発表。鈴木惺太さんは「バイオマス発電」について調べてきたようだ。

鈴木惺太さん:
バイオマス発電とは、その名の通りバイオマスを原料として発電する方法です。生物を意味する“バイオ”と量を意味する“マス”からなる言葉

阿部先生は発表にしっかりと耳を傾けるが、見守るだけ。しかし「CO2が出ない」というバイオマス発電の特徴に触れられていないことに気が付くと「バイオマス発電も火力発電と一緒なのかな?」と、すかさず子どもたちにキーワードを投げかける。

さらに阿部先生が「じゃあ、CO2は出るの?」と問いかけると、子どもたちは「CO2出るよ」「二酸化炭素」「蒸気でタービン回す」と次々と反応した。

それでも阿部先生は決して「答え」は口にしない。自分たちで調べ、考えることに意味があるからだ。

阿部大輔先生:
(バイオマス発電は)山形にはありますか?

子どもたち:
ないんじゃない?

阿部大輔先生:
でも新しい勉強になるね

この一言で、また新たな学習のテーマにつながっていく。

鈴木惺太さん:
バイオマス発電は全然想像できなくて、気になったので調べてみた。漢字練習や算数の予習よりも調べて発表できて楽しいから、調べ学習をたくさんしたい

子どもたちは様々なことを「自分の問題」と考え、社会に目を向けるようになってきた。

柏倉咲笑さん:
普段、ゴミを見つけたら自分の家で処理するとか、レジ袋のゴミを減らすことを意識している

丹野翔太さん:
マイクロプラスチックを魚が食べてしまうから、ゴミを捨てるのは「駄目だよ」とか教えてあげる

渡辺旺太さん:
総合の調べ学習とか、友だちが調べてきたことを習ったとか、ニュースを見て出てたりすると、親にきょう授業でやったんだとか報告したりする

松田栞菜さん:
今まで関係してない人たちにも話を聞いて、もっと千歳地域に詳しくなりたい

「自分で考えられる人になってほしい」

身近なところから行動に移したり、授業で出た話題を家庭で話したり。子どもたちの変化はまさに、阿部先生が願う姿だ。

阿部大輔先生:
これから自分たちが生活したり、生きていくためにどうあるべきか、何をしなければいけないかを考えられる人になってほしい。私はその手助け・要素を与える。“こういうものもある”と与えながら、その中で興味を持ったことを調べたり学んでほしい。自分たちの将来を考えられるように、お互いにやっていけたらいいと思っている

子どもたちは社会に目を向けて“自分にできること”を考えている。「どんな社会を残せるのかを全員で考え、何か行動できる社会になっていけたら」と阿部先生は話していた。

(さくらんぼテレビ)

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