厚生労働省が公表した2022年の日本人の平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳。過去30年余りで男女ともに5歳以上延伸する中、素敵な歳の重ね方をしている静岡県内のお年寄りを紹介する。
利用者?いやいやスタッフです
8月下旬。静岡市葵区にある介護施設「ハピスポデイ和かな」を訪ねると、みんなでトランプを楽しむ豊田伸一さん(74)の姿があった。
この記事の画像(6枚)ただ、豊田さんはここの利用者ではない。今も週5日、朝から夕方まで働くれっきとしたスタッフだ。豊田さんは「年齢のことをあまり気にしない。90歳の人もいるし、自分より年下の人もいるが、年齢関係なく接している」と笑う。
元々はトラックのドライバー。この施設には経験を活かし、利用者の送迎スタッフとして7年前に就職した。そして利用者と接する中で介護の仕事にやりがいを感じ、現在は送迎だけでなく日中のレクリエーションも任されている。
特に毎年恒例のイベントで披露する特技の手品は利用者に好評で「いろいろな人と触れ合い、話を聞いて、どのように接したらいいのか考えている。トランプなどで利用者を楽しませることがやりがいになっている」と充実した表情を見せ、春田道博 所長も「利用者にとても優しく、職員・利用者・利用者の家族からもとても評判がよい。送迎の時もとても丁寧で優しく『豊田さんだと安心する』という声がある」と活躍ぶりを証言する。
介護職から一変 夜は屈指のスイマーに
午後6時過ぎ。利用者の送迎を終えた豊田さんが施設に戻ってきた。もう終業時間だが、向かった先は利用者がリハビリのため使用するトレーニングスペースだ。ここで週2回、トレーニングマシンを使いながら大腿筋や大胸筋を鍛えている。
実は豊田さんにはスイマーとしての顔もあり、2022年に神奈川県で開かれた高齢者を中心とするスポーツの全国大会「ねんりんピック」では、50メートル・バタフライと25メートル・バタフライの2冠に輝いた。
水泳は小学5年生の時に始め、過去にはスクールでコーチを務めたこともある。
その後は長らく水泳から離れていたものの、67歳の時に「もう一度、選手として挑戦したい」と思い立ち競技を再開した。練習は週5日。「水の捉え方や最後まで速いスピードで掻き切ること」を意識しながら、仕事終わりに600~700メートル泳ぐという。
元気の秘訣はとにかく泳ぎを楽しむこと。豊田さんは「練習を楽しくやる。つらい練習だと途中で飽きてしまう。最低でも80歳くらいまではやりたい」と話し、介護スタッフとしては新たに研修を受けて利用者へのサポートの幅を広げ、スイマーとしては再び全国の頂点に立ちたいと意欲を燃やす。まだまだ人生を謳歌するつもりだ。
(テレビ静岡)