秋田市に小さな革製品の店がある。国の内外で加工の技術を学び、ふるさとに戻ってきた男性店主は、すべての製品を“手縫い”で仕上げる革職人だ。彼の手から生まれる財布やキーホルダーには、秋田の風土と人の温もりが宿っている。
海外で磨いた技術と日本の誇り
 
秋田市にある革製品の店「ROVER」。店主はすべての製品を“手縫い”で仕上げる革職人・菅原真人さん(40)だ。
菅原さんが革に魅せられたのは19歳の頃。独学で財布やキーホルダーを作り始めたのがきっかけだった。
群馬県の工房で6年間修業を積んだ後、さらなる技術を求めて海外へ。タイやカンボジアなどを旅しながら、現地の革製品の色使いや加工技術を学んだ。
 
「海外の市場でいろんな革製品を見て、日本の技術の高さを改めて実感した」と菅原さんは語る。
手縫いへのこだわりと“革の味”
2016年、秋田市に「ROVER」をオープンさせた菅原さん。
 
手がける革製品はすべてハンドメイドだ。特に縫製はミシンを使わず、時間をかけて“手縫い”で仕上げる。
「手縫いは時間がかかるけれど、丈夫で修理もしやすい。自分が教わった技術を貫きたい」と語る菅原さん。こだわりは決して曲げない。

使用する革は、植物由来のタンニンでなめしたもの。使い込むほどに色やつやが変化し、持ち主の“癖”が刻まれていく。
菅原さんいわく、革製品は「最初はゼロの状態」で使う人が形を完成させていく。それが革の魅力だという。
秋田をモチーフに世界へ
菅原さんは、秋田の文化を革製品に込めることにも力を入れている。
 
なまはげや秋田犬をモチーフにしたキーホルダーは、全て男鹿市の真山神社で祈願を受けたもので、“お守り”としても人気だ。
 
店ではワークショップも開いていて、観光客が自分だけのキーホルダーを作ることができる。外国人にも好評で、秋田の魅力を伝えるツールとして注目されている。
菅原さんは「なまはげや秋田犬のキーホルダーをきっかけに、秋田を世界に発信していけたら」と意欲的だ。
革に込めた思いを未来へ
菅原さんの夢は、秋田の革製品を世界に広げること。そして、自らも海外へ足を運び、技術と感性を磨き続けることだ。
 
秋田の風土と文化、そして職人のこだわりが詰まった革製品。
菅原さんはきょうも、静かに革と向き合いながら、世界への一歩を刻んでいる。

 
       
       
         
         
        